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3 11月25日
至近距離の椿くん
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学校に着くと、教室後方のドアからいつものように入り、自分の席についた。極力顔を上げずにカバンから教科書を取り出して机に準備を始める。
「……如月さん」
視界が良くなったからか、耳にあたしの苗字を呼ぶ声が聞こえてきた気がする。しかも、なんとなく椿くんみたいな声。
まさか、そんなわけがない。
あまりにも尊い写真を見過ぎて、脳内の椿くんが勝手に声を発してしまっているのかもしれない。うん、きっとそうだ。そうに決まってる。
止まってしまった手をまた動かして、あたしは机の上を綺麗にした。
そんな机の上に、誰かの手が乗った。
「如月さんってさ」
そして、覗き込むように目の前に現れたのは、いつも遠目から見えるか見えないかの距離でしか見たことのないご尊顔。
それが、なぜこんなに近くに?
戸惑いと理解の出来ない状況に、頭が回らない。
「……あ、前髪」
至近距離で目が合うから、石のように固まってしまう。
「なんか、初めて如月さんの顔ちゃんと見た気がする」
一歩引いて、椿くんがなんだか申し訳なさそうに眉を下げてそんなことを言う。
お見苦しいものをお見せして、大変申し訳ございません。
今すぐにでも土下座をしたくなったあたしは、ただひたすら俯くしかない。
「あのさ。如月さんって、理人先輩と仲良いの?」
は?
思わず顔を上げてしまって、周りのクラスメイトがこちらを何事かと見ていることに気が付いた。
あたし、注目の的になってる? え? なにこれ、どういうこと!?
焦って、またすぐに下を向いた。
みんなが注目しているのは、あたしじゃなくて椿くんだ。それは分かっているけれど、じゃあ一体、なんで椿くんはあたしになんか声をかけているのだろう?
理人先輩の一難が去って、ホッとしていたところだったのに、今度は椿くんご本人様があたしに声をかけてくるとか、どういうこと? え、明日世界終わる? 槍の雨でも降ってくる? あたし、今度こそ自転車に轢かれて人生終わっちゃう?
ぐるぐる頭の中には、悪いことばかりが浮かんでくる。
それに、なんか今椿くんが変な質問をしてきた気がする。
『如月さんって、理人先輩と仲良いの?』
質問の答えを口にすることなく、あたしは思いっきり首を横に振った。
あたしと理人先輩は仲がいいわけじゃない。ただ、モデルをしてくれと頼まれただけ。それで、こんな前髪になっちゃっただけ。自分の前髪に手を当てて、あたしはますます足元しか見えなくなるくらいにうつむいた。
「えっと、いきなり話しかけてごめん。なんか、理人先輩が如月さんのこと話してて、ちょっと、気になったから聞いてみただけなんだ」
椿くんはそう言って、自分の席に戻って行った。
え? 気になった? なにが?
頭の中がパニックになる。なんだかやっぱりクラスメイトの視線が刺さってくるような気がする。特に女子。
理人先輩が、あたしのことを話してた?
椿くんに、あたしの話をした?
理人先輩が?
え? 待って。
あたし、約束したはずだよね?
椿くんには話さないでって。
あの人何?
口軽すぎじゃない?
イライラが募ったまま、あたしはざわつく教室の中で理人先輩にメッセージを送る。
『椿くんにあたしのこと話しました?』
すぐに既読がつくけど、返信はない。
担任の先生が教室に入って来たから、その後の返事がわからないまま、お昼休みになった。
「……如月さん」
視界が良くなったからか、耳にあたしの苗字を呼ぶ声が聞こえてきた気がする。しかも、なんとなく椿くんみたいな声。
まさか、そんなわけがない。
あまりにも尊い写真を見過ぎて、脳内の椿くんが勝手に声を発してしまっているのかもしれない。うん、きっとそうだ。そうに決まってる。
止まってしまった手をまた動かして、あたしは机の上を綺麗にした。
そんな机の上に、誰かの手が乗った。
「如月さんってさ」
そして、覗き込むように目の前に現れたのは、いつも遠目から見えるか見えないかの距離でしか見たことのないご尊顔。
それが、なぜこんなに近くに?
戸惑いと理解の出来ない状況に、頭が回らない。
「……あ、前髪」
至近距離で目が合うから、石のように固まってしまう。
「なんか、初めて如月さんの顔ちゃんと見た気がする」
一歩引いて、椿くんがなんだか申し訳なさそうに眉を下げてそんなことを言う。
お見苦しいものをお見せして、大変申し訳ございません。
今すぐにでも土下座をしたくなったあたしは、ただひたすら俯くしかない。
「あのさ。如月さんって、理人先輩と仲良いの?」
は?
思わず顔を上げてしまって、周りのクラスメイトがこちらを何事かと見ていることに気が付いた。
あたし、注目の的になってる? え? なにこれ、どういうこと!?
焦って、またすぐに下を向いた。
みんなが注目しているのは、あたしじゃなくて椿くんだ。それは分かっているけれど、じゃあ一体、なんで椿くんはあたしになんか声をかけているのだろう?
理人先輩の一難が去って、ホッとしていたところだったのに、今度は椿くんご本人様があたしに声をかけてくるとか、どういうこと? え、明日世界終わる? 槍の雨でも降ってくる? あたし、今度こそ自転車に轢かれて人生終わっちゃう?
ぐるぐる頭の中には、悪いことばかりが浮かんでくる。
それに、なんか今椿くんが変な質問をしてきた気がする。
『如月さんって、理人先輩と仲良いの?』
質問の答えを口にすることなく、あたしは思いっきり首を横に振った。
あたしと理人先輩は仲がいいわけじゃない。ただ、モデルをしてくれと頼まれただけ。それで、こんな前髪になっちゃっただけ。自分の前髪に手を当てて、あたしはますます足元しか見えなくなるくらいにうつむいた。
「えっと、いきなり話しかけてごめん。なんか、理人先輩が如月さんのこと話してて、ちょっと、気になったから聞いてみただけなんだ」
椿くんはそう言って、自分の席に戻って行った。
え? 気になった? なにが?
頭の中がパニックになる。なんだかやっぱりクラスメイトの視線が刺さってくるような気がする。特に女子。
理人先輩が、あたしのことを話してた?
椿くんに、あたしの話をした?
理人先輩が?
え? 待って。
あたし、約束したはずだよね?
椿くんには話さないでって。
あの人何?
口軽すぎじゃない?
イライラが募ったまま、あたしはざわつく教室の中で理人先輩にメッセージを送る。
『椿くんにあたしのこと話しました?』
すぐに既読がつくけど、返信はない。
担任の先生が教室に入って来たから、その後の返事がわからないまま、お昼休みになった。
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