毎月25日は椿くん感謝デー

佐々森りろ

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5 12月25日

とにかく謝ろう

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 午後の授業が始まる直前、スマホをカバンの中にしまおうとしてメッセージが届いていることに気がついた。
 登録しているコンビニかなんかの宣伝だろうと開いてみるだけにして、画面を操作したあたしは、そのまま動きを止めた。

『放課後、話があるから中庭に来てほしい』

 すぐに、また理人先輩からかと思考が働いてしまうけれど、そんな改まったメッセージなんてよこしたことがないのを思い出す。それに、アイコンが先輩ではない。誰からのメッセージなのかをよーく見て、あたしは驚いて立ち上がった。
 ガタンッと椅子が音を立ててしまったけれど、ちょうどタイミングよく先生が入ってきて号令がかかったところだったから、なんとか難を逃れた。けれど、心臓はまだバクバクと音を立てている。

 慌ててスマホはそのままカバンの中にしまい込んで、授業に集中することにした。だけど、教室の前方、真っ直ぐに黒板を見る背中に、ますます胸が高鳴っていく。

 メッセージの送り主は、椿くんだった。
 放課後に? 話がある? 中庭?
 なに、この告白フラグ。怖い。絶対違うから怖い。この前のダブルデートでなにかやらかしてしまっただろうか。
 一旦別れたはずなのに、椿くんのことを探し回ってまで見つけて、激甘のココアを渡した行動が不気味だったのだろうか。だって、売り場に行ったらココアはブラックフライデーに侵略されていて、あのパッケージのペットボトルしか置いていなかったから。
 だから、仕方なく。あたしもちょっとあの謳い文句はやりすぎじゃないかなとは思ったりしたけど、中身が美味しければそれでいいかと……はっ! まさか。不味かった……?

 あー、自分でも買って飲めばよかった!
 椿くんのだけ購入して、渡したことに満足してそのまま帰っちゃったから、あれはあのブラックフライデー期間しか売られていなかったからもう見ることはない。今から味を確かめるのは不可能だ。
 なんてことをしてしまったんだ、あたしは……
 とにかく、謝ろう。
 とりあえず、まずは最初に謝ろう。

 そもそも、放課後に中庭に呼び出される相手が椿くんって、そんなの少女漫画でもありえない。あたしが主人公の場合ね。ほんとありえない。うん。
 冷静になるために、何度も心の中を落ち着かせるけど、頭の中で色々と考えてしまう。

 まだ、中庭には椿くんの姿はない。だけど、数人の生徒はいる。こんなところで椿くんと会っているなんてことを見られたら、絶対に後々椿くんに迷惑になる。
 推しをまた困らせてしまうなんて、そんなことはしたくない。出来るだけ人のいない場所を探して歩き回っていると、良い場所を発見した。
 なんの窪みだろうか。校舎の壁に凹凸ができている。たぶん、校舎内の構造上こうなるしかなかった外壁って感じ。ここなら、死角になりそう。誰かに見られることもないような気がする。
 あたしのせいで変な噂なんてたってしまったら、申し訳なくて椿くんのことを推す資格がなくなってしまう。
 ため息を吐き出して壁に寄りかかると、ちょうど風を凌げて寒さが和らぐ。とは言っても12月。風は冷たいし陽射しがあるだけまだ救われる。
 ポケットの中でスマホが震えた。
『中庭到着。待ってます』
 椿くんからだ。
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