毎月25日は椿くん感謝デー

佐々森りろ

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5 12月25日

中庭にて

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 一気に緊張し始める心臓を抑えながら、あたしはそっと壁の角から顔を覗かせて、中庭の中央を見た。
 キラキラと、ちょうどいい角度で日当たりのいい広場に立っている椿くんを太陽が照らしている。まるで、スポットライトを当てられている舞台俳優のようだ。
 めちゃくちゃ絵になる。尊い! 目の保養。今すぐ帰って日記にしたためたい。できたら、写真を撮りたい。でも隠し撮りなんてしてはいけない。カメラ機能に切り替えたい衝動を必死に抑えて、あたしはメッセージに返信を打つ。

『右を見てください』

 椿くんがあたしの返信に気がついて、スマホを見ている。そして、すぐに右を向く。ひょっこりと半分だけ顔を出していたあたしと、目が合った。
 ふんわりと笑ってくれた気がする。
 椿くんの姿が眩しすぎて見ていられない。あたしは姿を隠して、椿くんの反応を待った。スマホに返信が来ると思って手に握りしめたまま固まっていると、目の前に影ができる。

「如月さん?」

 壁から覗き込むようにこちらを見るのは、さっきまで陽の光を浴びて煌めいていた、椿くんだ。
 太陽を背に影になるお顔もまた、憂いを帯びていて美しい。

「なにここ。もしかして、隠れてた?」

 狭いスペースを見回しながら、椿くんがあたしに近づく。
 隠れていたわけではないけれど、出来れば他の人に見つからないようにしたかっただけなんだけど。そんなことは言えなくて、ただ俯いて黙り込むしかない。

「あんまり見られたくないか。ごめん、呼び出したりして」

 また謝る椿くんに、あたしは違う! と否定したくて顔を上げた。
 すると、思った以上に椿くんの顔がすぐ近くにあって、一瞬、息が止まった。

 壁に手をついて、椿くんがもっと近づく。

「でも、ここなら見られないから良い場所かもね」

 自ら袋のネズミになってしまっていることに気がついた。いや、椿くんに追い詰められるなんてそんなひどいことされるわけないし、そんな例えをしてしまうことは申し訳ないのだけど。
 必死に目を合わせないようにあたしは俯く。
 近い距離に椿くんの体温を感じそうで、さっきまで冷たかった風も生ぬるくなる。
 もう、これ以上近くにいられないと思ったあたしは、耐えきれずに頭を下げた。

「ご、ごめんなさいっ!!」
「え?」
「あ、あの、この前のこと。ごめんなさい! あたし、自分で確かめもしないで激甘ココアなんて押し付けちゃって。迷惑だったよね、本当、ごめんなさい」

 言えた。
 たぶん、ちゃんと謝れたよね。
 必死すぎて、今言ったことなのに、自分がなんと言ったか頭の中から言葉が抜けていく。ただ、ごめんなさいは言えたから、それだけは達成できたはず。
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