毎月25日は椿くん感謝デー

佐々森りろ

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5 12月25日

勇気を出して!

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「……あたし、これ以上椿くんと一緒にいたら、推しじゃなくて好きになっちゃいそうで怖いのかもしれない」

 そうだ。きっと、一番恐れているのはそれかもしれない。だって、推しと好きは全然違うから。
 もちろん、推しだって好きと変わりないかもしれないけれど、同じ好きでも気持ちの重さが変わってくる。
 恋愛感情を持った好きっていう気持ちで椿くんのことを見ることだけはしないようにしようって、あたしはずっと思っている。
 だって、好きになってもこの想いは届かないし、叶わないから。椿くんがあたしだけを好きになってくれるなんてことはあり得ないし、あるはずがない。
 推しのままなら、椿くんに恋人が出来ても、それを踏まえた上で推しだから割り切れる。一方的に好きでいるのは自由だから。だけど、恋愛にしてしまったら叶わなければ諦めなければならない。
 来栖さんや金原さんみたいに、フラれても好きでいる推し。彼氏がいても椿くんは別。そんな風に、割り切れるならいいけれど、やっぱり推しと好きは違う。
 だから、あたしは椿くんのことを本気で好きになったりはしないと、心に決めているところがあるのかもしれない。

『別に好きになったっていいじゃん』

 あっけらかんと答えが耳に返ってくる。

『ってか、やっぱりニコりんって椿くん推しだったんだね。まぁ、知ってたけど』
「え!? 知ってた!?」
『うん。結構前からさ、ニコりんリヒのこと見てるなぁって目つけてたんよね』
「え?」

 理人先輩のことを見ていたことは、あたしは一度もないのだけれど。

『ずっとリヒに片想いかぁ~、あたしの彼氏なんだよねぇって、かわいそうに思ってたんだけど、よく見ればリヒじゃなくて椿くんか! って妙に納得しちゃって。しかも、他人に興味なさそうだと思ってた子が、あたしらと同じように椿くんのことかっこいいって思ってるんだー、なんて親近感沸いちゃってね』

 楽しそうにケラケラ笑う一条さんに、あたしはなにも言えなくなる。ずっと前から、見られていたのかと思うと、急に恥ずかしくなってきてしまった。

『そのうち、リヒがニコりんのことカットモデルにするーとか言い出してさ。まぁ、ご自由にどうぞって感じだったんだけど、ニコりんリヒの手にかかったらめっちゃかわいくなっちゃったから、すこし妬いてたりもしたんだぁ』

 え、一条さんが、ヤキモチ? あたしに? まさか。

『そこへ椿くん登場でしょー? 面白くなってくるわけよ。リヒの作戦だけじゃ心許ないから、あたしを交えてダブルデートしたら?って提案したわけ』
「え……ダブルデートって、一条さんの提案なの!?」

 思い出すみたいに語り始める一条さんに、あたしは思わず突っ込んでしまった。

『あ、いや。ほぼリヒが考えていたんだけど、楽しそう~って途中からあたしが乗っかっちゃっただけなんだけどね』

 あたしは二人に振り回されていたのかと、頭が痛くなってくる。

『まぁ、でも大元は椿くんだからさ』
「……大元?」
「クリスマス、誘われたんでしょ?』

 突然、話は戻ってくるから驚く。

『不安なら、またあたしと理人がそばにいてあげてもいいし、その日までにやりたいことがあるなら手伝うよ』

 優しい言葉が耳を伝ってくるから、なんだか泣きそうになってしまう。
 楽しんでいるだけなのかと思えば、やっぱりちゃんとあたしのことを考えてくれるから、つい、また頼ってしまいたくなる。
 初めから、理人先輩が動いてくれなければなにも始まらなかったんだ。
 だったら、あたしだって動かないと。

「あたし、クリスマスまでになるべくかわいくなりたい……です」

 グッと顔を上げて、勇気を出して言った。机の上のツバくんが、応援してくれているみたいにあたしの方を向いて笑ってくれている。

『言ったね~! 張り切っちゃうよぉ』
「よろしくお願いします!」



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