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5 12月25日
ヨリちゃんの恋
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みんなと別れた帰り道。あたしは太陽堂に寄り道した。ツバくん用にクリスマスの衣装を作ってあげたくて、生地を選びに来た。
「こんにちは」
お店の中はシンっとしているけど、きっとヨリちゃんは奥でお茶でもしているんだと思う。あたしは声をかけてから、店内を眺め始めた。
「いらっしゃい、ニコちゃん」
少ししてからヨリちゃんが現れた。あたしは振り返って小さく会釈する。
「あら? ニコちゃん少し雰囲気変わった
かしら?」
「え……」
ゆっくり近づいてきたヨリちゃんがあたしの前で立ち止まると、にっこり微笑んだ。
「やっぱり、なんだか表情が前よりも明るくなった気がするわ。若いっていいわねぇ、どんどんかわいく綺麗になれるもの。私もねぇ、ニコちゃんくらいの時はまぁ、モテてモテて」
よいしょっと言いながら、ヨリちゃんはレジカウンターの椅子に座って話を続ける。
「その中でおじいさんと出逢ったのは本当に奇跡みたいだったわぁ」
懐かしむみたいにため息をついたヨリちゃん。
「私たちの時代はお見合いや親同士の決めた相手との結婚が多かったんだけどね、私は恋愛を突き通したの。障害はたくさんあったけど、後悔はしていないわ。だからニコちゃん、好きな人が出来た時は、その気持ちを大切にしてね」
ほんのりと頬を赤らめたヨリちゃんが、すごくかわいいと思った。おばあちゃんなのに、なんだか恋する女の子みたいに照れている。旦那さんのことを本当に大好きなんだなって、伝わってくる。
「おぉーい、ヨリちゃん。俺のメガネどこに行ったか知らねぇかー?」
「あらあら」
ふふふと笑って、ヨリちゃんは困ったような顔をしつつも嬉しそうにゆっくり奥の部屋に戻って行った。
『好きな人が出来た時は、その気持ちを大切にしてね』
椿くんのことを、思い浮かべてしまった。
推しなのか、好きな人なのか。
そんなの、どっちでもいい。あたしのこの気持ちを、今は大切にするべきだと、ヨリちゃんの言葉でわかった気がする。
「ありがとうございます。また来ます!」
あたしは、布を取ることなくなにも買わずに店から出た。
そして、ゆっくり歩き出しながら椿くんのアイコンを表示してメッセージを開く。
『25日の予定、空いています』
ツバくんと一緒に椿くん感謝デーのお祝いをする予定が入っているけど、もし、椿くんとの予定が入ったら、本人に直接感謝を伝えられるから。まだ、好きとは言えないけれど、好きって気持ちには気がつけたし、椿くんとの出逢いに感謝したいから。
送信して、すぐにスマホはポケットにしまった。ドキドキ高鳴る胸を誤魔化すみたいに早足になる。もう薄暗くて風も冷たくなった家までの距離が、寒くも暗くも感じなかった。
「こんにちは」
お店の中はシンっとしているけど、きっとヨリちゃんは奥でお茶でもしているんだと思う。あたしは声をかけてから、店内を眺め始めた。
「いらっしゃい、ニコちゃん」
少ししてからヨリちゃんが現れた。あたしは振り返って小さく会釈する。
「あら? ニコちゃん少し雰囲気変わった
かしら?」
「え……」
ゆっくり近づいてきたヨリちゃんがあたしの前で立ち止まると、にっこり微笑んだ。
「やっぱり、なんだか表情が前よりも明るくなった気がするわ。若いっていいわねぇ、どんどんかわいく綺麗になれるもの。私もねぇ、ニコちゃんくらいの時はまぁ、モテてモテて」
よいしょっと言いながら、ヨリちゃんはレジカウンターの椅子に座って話を続ける。
「その中でおじいさんと出逢ったのは本当に奇跡みたいだったわぁ」
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「私たちの時代はお見合いや親同士の決めた相手との結婚が多かったんだけどね、私は恋愛を突き通したの。障害はたくさんあったけど、後悔はしていないわ。だからニコちゃん、好きな人が出来た時は、その気持ちを大切にしてね」
ほんのりと頬を赤らめたヨリちゃんが、すごくかわいいと思った。おばあちゃんなのに、なんだか恋する女の子みたいに照れている。旦那さんのことを本当に大好きなんだなって、伝わってくる。
「おぉーい、ヨリちゃん。俺のメガネどこに行ったか知らねぇかー?」
「あらあら」
ふふふと笑って、ヨリちゃんは困ったような顔をしつつも嬉しそうにゆっくり奥の部屋に戻って行った。
『好きな人が出来た時は、その気持ちを大切にしてね』
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そんなの、どっちでもいい。あたしのこの気持ちを、今は大切にするべきだと、ヨリちゃんの言葉でわかった気がする。
「ありがとうございます。また来ます!」
あたしは、布を取ることなくなにも買わずに店から出た。
そして、ゆっくり歩き出しながら椿くんのアイコンを表示してメッセージを開く。
『25日の予定、空いています』
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