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Karte2:水着回って必要だよね
第11話 コウノトリ
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「――なるほど。ソフィー殿。その、大変言い難いのだが」
「なんですか?」
「おそらく、バート殿が求めている“元気になる薬”はそういう意味じゃないと思うぞ」
「え?」
「アリサさんの言う通りだな。ったく、バートさんもなに言ってるんだ。つかそんな歳じゃないだろ」
「人によって違うらしいからな。年齢は関係ないのではないか?」
「ま、俺には関係ない話だな。だいたい、モカちゃんまだ小さいのにまだ作る気かよ」
「エド、それ以上はいろいろマズい気がする」
「作る? なにを?」
「昼間から話す内容じゃないな」
「そうですね。昼間からする話じゃないですね」
ちょっと、なんか私だけ置いてきぼりなんですけど。勝手に話が盛り上がってる二人をジーっと見つめる私はどういうことのなのかと尋ねる。
「ねぇ、エド。さっきからなんの話してるの」
「なんで俺に聞くんだよ。そういうのはアリサさんに――」
「アタシなのか⁉ まぁ、良い。ソフィー殿。子供はどうやってできると思う?」
「え? コウノトリが運んできてくれるんですよね?」
「「…………は?」」
「……マジで言ってるのか」
「ソフィー殿……」
「あ、あの。二人とも、なんでそんな顔してるんですか」
「――ソフィー」
「な、なに」
「おまえはそのままでいてくれ」
「え、なに? なんかバカにされた気がするんだけど」
「ソフィー殿にはまだ早い」
「アリサさんまでっ⁉ もう! 二人して意地悪はひどいですよ!」
「そう言われても、なぁ?」
「ソフィーがこれじゃ……」
「だからなによっ」
二人とも絶対なにか隠している。隠してるけど、どこか恥ずかしそうにしているのはなぜだろう。
「ソフィー殿。ちょっと耳を貸せ」
「え、こうですか?」
「実はな――」
「――――っ⁉」
「――って、ことだ」
「そ、そうだったんだ……」
アリサさんから耳打ちで聞かされた事実に顔が熱くなる。二つの意味で恥ずかしくなった。で、でも師匠はコウノトリが連れてくるって。
「師匠殿はその、あれだな。小さかったソフィー殿に本当のことを言えなかったんだな」
「うぅー。恥ずかしい」
「ソフィー。おまえって意外とポンコツなんだな」
「ポ、ポンコツって言わないでよ。エドだって顔赤いじゃない」
「それはアレだ。うん。アレだ」
「アレってなによ。どうせ調薬しか能のないおバカですよ」
「まぁまぁ、ソフィー殿は純真無垢なだけだ。気にするな。それで、バート殿が所望した薬は作れるのか」
「は、はい。薬と言うより滋養強壮ドリンクならレシピがあります」
さすがにバートさんが求めるアレな薬は作れないけど、同じような効果が期待できるポーションなら比較的簡単に作れる。けれど調達に一苦労する材料が必要なんだよね。
「ほとんどの材料は在庫があります。ただ主成分となる材料は普段使わないうえに管理も難しいので在庫を抱えてないんです」
「管理が難しい? ソフィー殿、それはどういう意味なのだ?」
「実は“オイスターモドキ”が必要なんです」
「ああ。なるほど。確かに難しいな」
「さすがアリサさん。そういうことなんですよ。ま、エドには分からないみたいだけど」
「おまえ、ポンコツって言ったのを根に持ってんな」
エドが横からなにか言ってるけどそれは無視して、オイスターモドキについて説明を始めます。
「オイスターモドキはその名の通り“牡蠣”に似た食用の貝です。湖など淡水域なら何処でも生息していて、牡蠣と違い一年を通して食用として流通しています」
「食用でしかも一年中あるんだろ。なのになんで管理が難しんだよ」
「生のまま運べないんだ」
「アリサさんの言う通りです。オイスターモドキは“足”が速くて水揚げ直後から腐敗が始まるの」
「マジ⁉」
「ああ。だから食用にするものは水揚げ後、半日以内に加熱処理されたやつのオイル漬が主流なんだ。まず生じゃ食べない」
「しかも薬の材料になるのオイスターモドキの茹で汁。だから薬師でも自分で調達する人は少なくて、大半が専門業者から仕入れるの」
この辺りなら一番近いセント・ジョーズ・ワートの市場に行けば入手できるはずだけど、業者から仕入れる材料は割高だから当然薬の価格の上がってしまいます。
「薬の値段を上げるのは簡単だけど、村の人のことを考えると難しいよね。だから、今回は採りに行きたいと思います」
「採りにって、どこへ?」
「裏の林を抜けたところに湖があるの、エドなら知ってるでしょ?」
「え? ああ。行ったとこはないけど場所ならなんとなくわかる」
「あそこならいると思うんだよね。だから私たちで採りに行って仕入れコストを削りたいと思います」
「ソフィー殿。一つ良いか?」
「なんですか」
「採りに行くのは別に反対しない。だが、いまの話だとソフィー殿も行くということになると思うのだが」
「そのつもりですよ。今回は材料の採集がメインですが休暇も兼ねていますので」
「休暇? 休みならちゃんと取れているぞ?」
「当然です。二人はウチの従業員ですから。労務管理は私の仕事です。けどたまにはお出掛けして気分転換も良いかなって」
「待て。さっき採集がメインとか言ってたよな」
もう。なんでそこに引っ掛かるかなぁ。ここは素直に喜ぶべきところだよ。私のやさしさを素直に受け取ってくれない誰かさんとは違ってこの提案に肯定的なのはアリサさん。
「アタシはソフィー殿の提案には賛成だ。オイスターモドキの採集が付いてくるとは言え、湖でリフレッシュするのは良いことだ」
「その通りだよ。たまには息抜きも必要だよ。それに夏なら水着回も必要だよね」
「水着回? ナニ言ってるんだ」
あ、あれぇー? 湖=水着姿の女の子。普通なら男の子が喜ぶところじゃないの⁉
「ソフィー、俺がおまえの水着姿に喜ぶとでも思ったか」
「喜ばないのっ⁉」
「だってなぁ?」
「え? ああ。ソフィー殿は、その……」
「アリサさん、それ以上は可哀そうですよ」
「ど、どうせぺったんこですよ! すこーし成長が遅いだけなんですっ」
そう。少しゆっくりなだけ。そう言い聞かせて数年。まだ実感はないけど、いつか二人が驚くくらい成長してやるんだから。うん。きっと……成長するよね?
「なんですか?」
「おそらく、バート殿が求めている“元気になる薬”はそういう意味じゃないと思うぞ」
「え?」
「アリサさんの言う通りだな。ったく、バートさんもなに言ってるんだ。つかそんな歳じゃないだろ」
「人によって違うらしいからな。年齢は関係ないのではないか?」
「ま、俺には関係ない話だな。だいたい、モカちゃんまだ小さいのにまだ作る気かよ」
「エド、それ以上はいろいろマズい気がする」
「作る? なにを?」
「昼間から話す内容じゃないな」
「そうですね。昼間からする話じゃないですね」
ちょっと、なんか私だけ置いてきぼりなんですけど。勝手に話が盛り上がってる二人をジーっと見つめる私はどういうことのなのかと尋ねる。
「ねぇ、エド。さっきからなんの話してるの」
「なんで俺に聞くんだよ。そういうのはアリサさんに――」
「アタシなのか⁉ まぁ、良い。ソフィー殿。子供はどうやってできると思う?」
「え? コウノトリが運んできてくれるんですよね?」
「「…………は?」」
「……マジで言ってるのか」
「ソフィー殿……」
「あ、あの。二人とも、なんでそんな顔してるんですか」
「――ソフィー」
「な、なに」
「おまえはそのままでいてくれ」
「え、なに? なんかバカにされた気がするんだけど」
「ソフィー殿にはまだ早い」
「アリサさんまでっ⁉ もう! 二人して意地悪はひどいですよ!」
「そう言われても、なぁ?」
「ソフィーがこれじゃ……」
「だからなによっ」
二人とも絶対なにか隠している。隠してるけど、どこか恥ずかしそうにしているのはなぜだろう。
「ソフィー殿。ちょっと耳を貸せ」
「え、こうですか?」
「実はな――」
「――――っ⁉」
「――って、ことだ」
「そ、そうだったんだ……」
アリサさんから耳打ちで聞かされた事実に顔が熱くなる。二つの意味で恥ずかしくなった。で、でも師匠はコウノトリが連れてくるって。
「師匠殿はその、あれだな。小さかったソフィー殿に本当のことを言えなかったんだな」
「うぅー。恥ずかしい」
「ソフィー。おまえって意外とポンコツなんだな」
「ポ、ポンコツって言わないでよ。エドだって顔赤いじゃない」
「それはアレだ。うん。アレだ」
「アレってなによ。どうせ調薬しか能のないおバカですよ」
「まぁまぁ、ソフィー殿は純真無垢なだけだ。気にするな。それで、バート殿が所望した薬は作れるのか」
「は、はい。薬と言うより滋養強壮ドリンクならレシピがあります」
さすがにバートさんが求めるアレな薬は作れないけど、同じような効果が期待できるポーションなら比較的簡単に作れる。けれど調達に一苦労する材料が必要なんだよね。
「ほとんどの材料は在庫があります。ただ主成分となる材料は普段使わないうえに管理も難しいので在庫を抱えてないんです」
「管理が難しい? ソフィー殿、それはどういう意味なのだ?」
「実は“オイスターモドキ”が必要なんです」
「ああ。なるほど。確かに難しいな」
「さすがアリサさん。そういうことなんですよ。ま、エドには分からないみたいだけど」
「おまえ、ポンコツって言ったのを根に持ってんな」
エドが横からなにか言ってるけどそれは無視して、オイスターモドキについて説明を始めます。
「オイスターモドキはその名の通り“牡蠣”に似た食用の貝です。湖など淡水域なら何処でも生息していて、牡蠣と違い一年を通して食用として流通しています」
「食用でしかも一年中あるんだろ。なのになんで管理が難しんだよ」
「生のまま運べないんだ」
「アリサさんの言う通りです。オイスターモドキは“足”が速くて水揚げ直後から腐敗が始まるの」
「マジ⁉」
「ああ。だから食用にするものは水揚げ後、半日以内に加熱処理されたやつのオイル漬が主流なんだ。まず生じゃ食べない」
「しかも薬の材料になるのオイスターモドキの茹で汁。だから薬師でも自分で調達する人は少なくて、大半が専門業者から仕入れるの」
この辺りなら一番近いセント・ジョーズ・ワートの市場に行けば入手できるはずだけど、業者から仕入れる材料は割高だから当然薬の価格の上がってしまいます。
「薬の値段を上げるのは簡単だけど、村の人のことを考えると難しいよね。だから、今回は採りに行きたいと思います」
「採りにって、どこへ?」
「裏の林を抜けたところに湖があるの、エドなら知ってるでしょ?」
「え? ああ。行ったとこはないけど場所ならなんとなくわかる」
「あそこならいると思うんだよね。だから私たちで採りに行って仕入れコストを削りたいと思います」
「ソフィー殿。一つ良いか?」
「なんですか」
「採りに行くのは別に反対しない。だが、いまの話だとソフィー殿も行くということになると思うのだが」
「そのつもりですよ。今回は材料の採集がメインですが休暇も兼ねていますので」
「休暇? 休みならちゃんと取れているぞ?」
「当然です。二人はウチの従業員ですから。労務管理は私の仕事です。けどたまにはお出掛けして気分転換も良いかなって」
「待て。さっき採集がメインとか言ってたよな」
もう。なんでそこに引っ掛かるかなぁ。ここは素直に喜ぶべきところだよ。私のやさしさを素直に受け取ってくれない誰かさんとは違ってこの提案に肯定的なのはアリサさん。
「アタシはソフィー殿の提案には賛成だ。オイスターモドキの採集が付いてくるとは言え、湖でリフレッシュするのは良いことだ」
「その通りだよ。たまには息抜きも必要だよ。それに夏なら水着回も必要だよね」
「水着回? ナニ言ってるんだ」
あ、あれぇー? 湖=水着姿の女の子。普通なら男の子が喜ぶところじゃないの⁉
「ソフィー、俺がおまえの水着姿に喜ぶとでも思ったか」
「喜ばないのっ⁉」
「だってなぁ?」
「え? ああ。ソフィー殿は、その……」
「アリサさん、それ以上は可哀そうですよ」
「ど、どうせぺったんこですよ! すこーし成長が遅いだけなんですっ」
そう。少しゆっくりなだけ。そう言い聞かせて数年。まだ実感はないけど、いつか二人が驚くくらい成長してやるんだから。うん。きっと……成長するよね?
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