54 / 68
ss2「サンタさんの正体は」
4
しおりを挟む
家から会社までは汽車で通う。片道30分の道のりは、時に途方もなく長い。
早く会いたい。アシュリーといる時間を少しでも多く作るために、目を閉じながらイメージを固めていく。
かれこれ予定が合わず、同じ家で過ごしているはずなのに二週間もご無沙汰だ。今日は絶対ゆっくり過ごそう。誰にも邪魔されない。
朝アシュリーより早く家を出なくてはならなくて、テオは少し憂鬱になっていた。
それに気づいたアシュリーが、今夜はゆっくりできるよ、と優しい笑顔で抱きしめてくれた温もりを何度も反芻する。それだけでくすぐったくて、嬉しくて、今日も1日頑張れた。
30分汽車に乗ったあといつもなら20分弱かかる家までの徒歩の道のりは、楽しみで走ったから10分とかからない。
「はぁっ…はぁ…
ただいまっ!」
「おかえり。走ってきたの?」
声の方を見ると、驚いたように目を丸くした大切な人が、そのあとふわっと微笑んで、大好きな温もりに包まれた。
「…っ、いまっ、汗かいてるからっ…!」
この温もりから離れるのは寂しいが、アシュリーの服を汗で汚してしまってはいけない。慌てて離れようとすると、より強い力で抱きしめられる。
戸惑って上を見上げると、綺麗なアクアマリンの瞳が愛おしそうにこちらを見ている。
「いいよ。早くこうするためにかいた汗でしょう?まだ身体を洗ったわけでもないし。」
その綺麗な唇から出た優しい言葉に、仕事の疲れが一気に溶かされていく。幸せだ。
「…うん。」
上を向いてキスをねだると、両頬をしなやかで大きな手が包んでいく。
キスの時は目を閉じるものだと思うけれど、アシュリーのことをずっと見ていたくて、かえってこの瞬間を逃すまいと集中する。それはアシュリーも同じだったようで、二人の唇はお互いの目がぱっちりと開いたまま重なった。
唇が触れた瞬間にここまでお互いのことを凝視したのは初めてで、そのまま二人で真っ赤になる。
「目、なんで開けるのっ!?は、恥ずかしいっ!」
全くのブーメランでも、とりあえず言わないと気が済まなくて、真っ赤になり口を押さえながら早口でまくし立てる。
「だってテオの可愛い顔を逃したくなくて。テオこそなんで?」
「…同じ理由です… 。ごめんなさい…。」
つい毒を吐いてしまった罪悪感に苛まれながらも、アシュリーも真っ赤にして口を押さえながら自分と全く同じことを言うので、なんだか嬉しくて、おかしくて。
アシュリーがふふっとわらうから、テオもそれにつられて笑ってしまう。同じだね、おかしいね、と。
「ご飯にしようか。できてるから。」
「うん、ありがとう。」
この人といる時間が、一番好きだ。そう迷いなく答えられる。
アシュリーとの時間は、始まるまでは楽しみで早くきて欲しいと願い、始まってからもその先が楽しみでどんどん次を求めてしまうのに、過ぎてしまうと一瞬だ。
もっとゆっくり楽しめばよかったと、終わったあとはいつも後悔する。
自分はこんなに幸せでいていいのかと、そんなふうにさえ感じるほど、夢のように素敵な夜の始まりだ。
早く会いたい。アシュリーといる時間を少しでも多く作るために、目を閉じながらイメージを固めていく。
かれこれ予定が合わず、同じ家で過ごしているはずなのに二週間もご無沙汰だ。今日は絶対ゆっくり過ごそう。誰にも邪魔されない。
朝アシュリーより早く家を出なくてはならなくて、テオは少し憂鬱になっていた。
それに気づいたアシュリーが、今夜はゆっくりできるよ、と優しい笑顔で抱きしめてくれた温もりを何度も反芻する。それだけでくすぐったくて、嬉しくて、今日も1日頑張れた。
30分汽車に乗ったあといつもなら20分弱かかる家までの徒歩の道のりは、楽しみで走ったから10分とかからない。
「はぁっ…はぁ…
ただいまっ!」
「おかえり。走ってきたの?」
声の方を見ると、驚いたように目を丸くした大切な人が、そのあとふわっと微笑んで、大好きな温もりに包まれた。
「…っ、いまっ、汗かいてるからっ…!」
この温もりから離れるのは寂しいが、アシュリーの服を汗で汚してしまってはいけない。慌てて離れようとすると、より強い力で抱きしめられる。
戸惑って上を見上げると、綺麗なアクアマリンの瞳が愛おしそうにこちらを見ている。
「いいよ。早くこうするためにかいた汗でしょう?まだ身体を洗ったわけでもないし。」
その綺麗な唇から出た優しい言葉に、仕事の疲れが一気に溶かされていく。幸せだ。
「…うん。」
上を向いてキスをねだると、両頬をしなやかで大きな手が包んでいく。
キスの時は目を閉じるものだと思うけれど、アシュリーのことをずっと見ていたくて、かえってこの瞬間を逃すまいと集中する。それはアシュリーも同じだったようで、二人の唇はお互いの目がぱっちりと開いたまま重なった。
唇が触れた瞬間にここまでお互いのことを凝視したのは初めてで、そのまま二人で真っ赤になる。
「目、なんで開けるのっ!?は、恥ずかしいっ!」
全くのブーメランでも、とりあえず言わないと気が済まなくて、真っ赤になり口を押さえながら早口でまくし立てる。
「だってテオの可愛い顔を逃したくなくて。テオこそなんで?」
「…同じ理由です… 。ごめんなさい…。」
つい毒を吐いてしまった罪悪感に苛まれながらも、アシュリーも真っ赤にして口を押さえながら自分と全く同じことを言うので、なんだか嬉しくて、おかしくて。
アシュリーがふふっとわらうから、テオもそれにつられて笑ってしまう。同じだね、おかしいね、と。
「ご飯にしようか。できてるから。」
「うん、ありがとう。」
この人といる時間が、一番好きだ。そう迷いなく答えられる。
アシュリーとの時間は、始まるまでは楽しみで早くきて欲しいと願い、始まってからもその先が楽しみでどんどん次を求めてしまうのに、過ぎてしまうと一瞬だ。
もっとゆっくり楽しめばよかったと、終わったあとはいつも後悔する。
自分はこんなに幸せでいていいのかと、そんなふうにさえ感じるほど、夢のように素敵な夜の始まりだ。
0
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
白衣の下 第一章 悪魔的破天荒な医者と超真面目な女子大生の愛情物語り。先生無茶振りはやめてください‼️
高野マキ
ライト文芸
弟の主治医と女子大生の甘くて切ない愛情物語り。こんなに溺愛する相手にめぐり会う事は二度と無い。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる