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ss2「サンタさんの正体は」
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「テオ、顔赤いよ?熱?」
顔が赤いのはもちろんさっきのキスのせいであり、目の前に久しぶりにじっくり見ることのできる美しい恋人の容貌のせいなのだが、本人は全く気づいていないようだ。
自分の美しさに気づかないのは罪だなと思いながら、ぼぅっとアシュリーがスープを口に運ぶのを見つめる。
緩やかに形の良い唇を開くと、その間に液体を流し込んでいく。その仕草も、少し濡れた唇も、どれを見ても艶めかしく官能的にうつる。
どこまでも惹きつけられるこの美しさをいつまでも見ていたい…
「ふぁ!?」
いきなり変な声を発してしまったのは、彼の手がテオの額に前触れもなくいきなり触れたから。驚いて向かいをのぞくと、少し首を傾げて彼が微笑む。
「熱はないね。よかった。」
首をかしげるとともに彼の耳元のピアスがゆれた。光を乱反射したテオの瞳と同じ色のピアスが、白い首筋に生えてどこまでも美しい。
どんどん目が惹きつけられてそれ以外考えられなくなって…
「ねえ、テオ、聞いてる?」
ハッと我に返ると、何かあったのかと心配しているような困った表情のアシュリーが、テオの目の前で手を振っていた。
「あ、うん。で、なんだっけ…? 」
「聞いてないでしょ。」
「ごめんなさい… 」
心の中でやってしまったと100回は叫ぶ。でもアシュリーが綺麗すぎるのもいけない気はする。
「仕事、どう?」
「んー、社長に結構融通利かせてもらってるからなんとか。」
「そう、よかった。通勤大変じゃない?」
「だいぶ慣れたよ。」
流石にこれ以上見とれるわけにはいかないので、食事に集中する。美味しいはずなのに、どうしてもこの先を考えると脳内がそればかりになってしまい、味わう、という感じではなくなってしまった。
アシュリーとの貴重な会話の内容も、ほとんど覚えていない。
「そういえば、アメリアさんがこれをテオにって持ってきてくれたんだけど、食べられる?」
食べ終えたあと、思い出したようにアシュリーがソファの上に置いてある箱をこちらへ持ってきた。中にはガトーショコラが入っている。
「食べる!!
…あ、僕もアシュリーにこれを買ってきたんだった。」
そう言って買ってきたチョコレートを見せる。おまけで入れてもらったオランジェットがピカピカとしてとても綺麗。
「美味しそう。紅茶淹れてくるね。」
「いや、僕がいれるよ。」
「じゃあお願いする。俺はお皿片付けるね。」
…やられた、と思った。就職してからというものアシュリーは余計に自分に甘くなった気がする。
全部やろうと思うのに、テオの思考を熟知している彼は、このようにうまくテオを楽な方へと誘導してくる。
甘ったるい時間に甘ったるいデザート。でも一番甘いのは、きっと…
そこまで想像して、僕は猿かと、気づかれないように小さくため息をつく。
「さっきから、もう…。そんなに煽って…。不可抗力だよ。」
なぜか後ろから聞こえた熱っぽい声に振り向くと、テオの座る椅子のすぐ後ろにアシュリーが立っていた。
普段と変わらない、綺麗なアクアマリンの瞳なのに、なぜかそれは赤色を帯びているように見えて…
テーブルの上には食べかけのガトーショコラと不規則に散らばったチョコレート。
突然の深いキスは、ほろ苦い、大人の味がした。
そのまま卑猥な音を立てて熱が絡み合う。まだ食べている途中なのに、というわずかな理性などとうに働かなくなって、久しぶりの深い口づけに溶かされる。
「はっ…ぁっ… 」
自分の声であることを疑うほど甘ったるい吐息が漏れる。いつもそうだ。彼に溶かされると、砂糖菓子のように甘い声が自然と出てしまう。
対してアシュリーの声は甘くない。綺麗な姿とは裏腹に、色気のある大人の男の声を出すのだった。
テオは僕もこんな風になりたい、と思いながら、それでも彼がある一言を言えば、そう思わせられるならよかったと、くるっと思考が反転する。
「テオっ…
かわいい。」
口元の綺麗な曲線をいたずらっぽくわずかに右上がりにして、低い声が囁いた。その瞳は余裕のない色を浮かべている。
他の人に言われると嫌になってしまうその言葉は、アシュリーに言われた時だけ魔法のように嬉しい。
…まだスーツのままだ…
ふと気づいても、その時にはすでに遅く、着替える気などさらさら起きない。そのくらい、もう身体は熱って、その先を望んでいた。
顔が赤いのはもちろんさっきのキスのせいであり、目の前に久しぶりにじっくり見ることのできる美しい恋人の容貌のせいなのだが、本人は全く気づいていないようだ。
自分の美しさに気づかないのは罪だなと思いながら、ぼぅっとアシュリーがスープを口に運ぶのを見つめる。
緩やかに形の良い唇を開くと、その間に液体を流し込んでいく。その仕草も、少し濡れた唇も、どれを見ても艶めかしく官能的にうつる。
どこまでも惹きつけられるこの美しさをいつまでも見ていたい…
「ふぁ!?」
いきなり変な声を発してしまったのは、彼の手がテオの額に前触れもなくいきなり触れたから。驚いて向かいをのぞくと、少し首を傾げて彼が微笑む。
「熱はないね。よかった。」
首をかしげるとともに彼の耳元のピアスがゆれた。光を乱反射したテオの瞳と同じ色のピアスが、白い首筋に生えてどこまでも美しい。
どんどん目が惹きつけられてそれ以外考えられなくなって…
「ねえ、テオ、聞いてる?」
ハッと我に返ると、何かあったのかと心配しているような困った表情のアシュリーが、テオの目の前で手を振っていた。
「あ、うん。で、なんだっけ…? 」
「聞いてないでしょ。」
「ごめんなさい… 」
心の中でやってしまったと100回は叫ぶ。でもアシュリーが綺麗すぎるのもいけない気はする。
「仕事、どう?」
「んー、社長に結構融通利かせてもらってるからなんとか。」
「そう、よかった。通勤大変じゃない?」
「だいぶ慣れたよ。」
流石にこれ以上見とれるわけにはいかないので、食事に集中する。美味しいはずなのに、どうしてもこの先を考えると脳内がそればかりになってしまい、味わう、という感じではなくなってしまった。
アシュリーとの貴重な会話の内容も、ほとんど覚えていない。
「そういえば、アメリアさんがこれをテオにって持ってきてくれたんだけど、食べられる?」
食べ終えたあと、思い出したようにアシュリーがソファの上に置いてある箱をこちらへ持ってきた。中にはガトーショコラが入っている。
「食べる!!
…あ、僕もアシュリーにこれを買ってきたんだった。」
そう言って買ってきたチョコレートを見せる。おまけで入れてもらったオランジェットがピカピカとしてとても綺麗。
「美味しそう。紅茶淹れてくるね。」
「いや、僕がいれるよ。」
「じゃあお願いする。俺はお皿片付けるね。」
…やられた、と思った。就職してからというものアシュリーは余計に自分に甘くなった気がする。
全部やろうと思うのに、テオの思考を熟知している彼は、このようにうまくテオを楽な方へと誘導してくる。
甘ったるい時間に甘ったるいデザート。でも一番甘いのは、きっと…
そこまで想像して、僕は猿かと、気づかれないように小さくため息をつく。
「さっきから、もう…。そんなに煽って…。不可抗力だよ。」
なぜか後ろから聞こえた熱っぽい声に振り向くと、テオの座る椅子のすぐ後ろにアシュリーが立っていた。
普段と変わらない、綺麗なアクアマリンの瞳なのに、なぜかそれは赤色を帯びているように見えて…
テーブルの上には食べかけのガトーショコラと不規則に散らばったチョコレート。
突然の深いキスは、ほろ苦い、大人の味がした。
そのまま卑猥な音を立てて熱が絡み合う。まだ食べている途中なのに、というわずかな理性などとうに働かなくなって、久しぶりの深い口づけに溶かされる。
「はっ…ぁっ… 」
自分の声であることを疑うほど甘ったるい吐息が漏れる。いつもそうだ。彼に溶かされると、砂糖菓子のように甘い声が自然と出てしまう。
対してアシュリーの声は甘くない。綺麗な姿とは裏腹に、色気のある大人の男の声を出すのだった。
テオは僕もこんな風になりたい、と思いながら、それでも彼がある一言を言えば、そう思わせられるならよかったと、くるっと思考が反転する。
「テオっ…
かわいい。」
口元の綺麗な曲線をいたずらっぽくわずかに右上がりにして、低い声が囁いた。その瞳は余裕のない色を浮かべている。
他の人に言われると嫌になってしまうその言葉は、アシュリーに言われた時だけ魔法のように嬉しい。
…まだスーツのままだ…
ふと気づいても、その時にはすでに遅く、着替える気などさらさら起きない。そのくらい、もう身体は熱って、その先を望んでいた。
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