朝日に捧ぐセレナーデ 〜天使なSubの育て方〜

沈丁花

文字の大きさ
26 / 92
第二部

初めてのプレイ②(東弥side)

しおりを挟む
夢の中で、静留とプレイをしていた。だから、起きた後しばらくも、夢の延長線のような心地でいて。

自分の指が静留の口内を侵していると気づいた時、東弥はひどく動揺した。

「あれ、俺…

静留!俺何かした?怖いことされてない!?」

もしかしたらこれ以上のこともしたかもしれない。顔を真っ赤にした静留に慌てて問いかける。

「…おくち、さわってもらった…。」

それだけで良かったとほっとすると同時に、こみ上げてきたのはやってしまったと言う罪悪感。

静留との生活の中で、食事や風呂、睡眠などの命令をすることでなんとか第二性を満たしてきたのだが、やはりそれだけでは足りずに、最近東弥は第二性的に欲求不満の状態だった。

しかし静留以外と何かをする気にはなれず、ずるずるとこの状況を放置したままでいて。

「ごめん…。」

その結果がこれだ。もっと早く手を打っておくべきだったのに。

「あやまるの、どうして?」

静留がきょとんと首を傾げる。

「最近してなくて、静留に怖い思いさせちゃったから。」

「…する?」

「うん。静留に会ってから、誰ともプレイしてないんだ。だから、ごめん…。」

言うと、静留はぷくっと頬を膨らませた。

口の中を触られたのがいやだったのだろう。

頬を膨らませる姿は愛らしいが、今はそれに微笑んでいる場合ではない。

「ごめん。もうしないから、ね?」

慌てて謝っても、今度は泣きそうな顔をされる。

もうしない、と言っても許してもらえないのなら、あとはどうすればいいのだろうか。例えば別れろと言われたら、それをする気は東弥にはない。

「僕じゃ、だめなの…?いやじゃないしこわくもない…。東弥さんと、プレイ?僕じゃできない…?」

「えっ…?」

涙目で静留が紡いだ言葉は予想外で、東弥はひどく動揺した。

「ほかのひととは、しないで。」

ぎゅっと東弥の胸に頭を埋め、ただをこねるように静留が続ける。

__…どうすればいい…?

おそらく静留はプレイについてなにも知らない。そんな彼に、プレイをさせていいのだろうかと、東弥はじっと考えた。

しかし同時に、他の人としないで、と言う言葉に静留の寂しさや悲しさと言った感情を感じて。

もし静留が自分以外の人とプレイをすると言ったら、東弥は同じように嫌がるだろう。

「じっと静留の目を見て俺が命令したら、従ってほしいんだ。それがプレイ。さっきみたいなこと、またしてもいい…?」

「うん。」

言うと、静留は東弥の胸から顔を上げ、嬉しそうに頷いた。

黒い瞳は、ぱっちりと開いてキラキラと輝いている。

まったく、彼の存在はどこまでも愛おしい。

「じゃあまず、セーフワードを決めようか。」

「せーふわーど…?」

「そう。静留が俺の命令に従いたくない時に、言う言葉。嫌なこともあるかもしれないから。」

「んー…。」

話し合った末、決まったセーフワードは“サンセット”。

そして2人は今夜一緒にプレイをすると言う約束を交わしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。 更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募するお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...