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番外編ss
誓いのピアス①
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※エブリスタで完結記念に連載したものの転載になります
※一人称アル視点になります。
デネボラは巨大な施設だ。
どうなっているのかは俺たちにも把握しきれないが、施設内に市場の様なフロアがあり、日用品や食料品、衣類などある程度のものはそこで揃う。
その一方で、揃わないものもある。
「んー、選べない。それに0ふたつ多くない?これ…。」
100万を下回るものはなく、ものによっては1000万を超える。
アランに提示された0だらけの画面を前に、俺は頭を抱えた。
「そんなことはない。
…これなんかはどうだ?きっと似合う。」
パソコンの画面に向かい座る俺背後から、すっと伸びた白く美しい指がある一点を示した。
彼の指差す先にあるのは、プラチナ製、と書かれた時計。
盤が紺桔梗のグラデーションになっており、その上に散らばる金の文字が夜空に浮かぶ星を思わせる。
でも…
「んー、綺麗だけど、時計は持ってるし…
って、1200万!?どこから出すの?」
「どこ、というのは銀行から、という答えでいいのか、それとも何かユーモアを求めているのか…?」
背後を向いて指摘すると、綺麗な顔がきょとんと首をかしげた。
そのわずかにあどけなさを帯びた美しい表情に、思わず釘づけになってしまいそう。
大きく開いた青い瞳は、本当になにを言っているのかわからない、というような不思議そうな色を浮かべていた。
…このひと、本当にわかってない。
そんな大金、どこから出てくるんだという意味なのに。
「ごめん、なんでもない。
でも、ともかく全部高すぎ。娼館で働いてた時に貰った指輪もこんなに高くなかった。」
「…指輪?」
何か気に触ることでもあったのか、アランの声がワントーン低くなった。
「たまに気に入ってくれたαの人がくれたんだ。
名前が入ってて売り物にならなかったんだけど、入ってなかったら何百万とかで売れた…」
とりあえずそのまま続けていると、アランの表情はますます歪んでいく。
「…ごめん、娼館での話なんて、聞きたくないよね…。」
やってしまったと気づいた時には、もう遅い。自分の無神経さに腹が立つ。
嫌われてしまっただろうか…?
不安でいっぱいになりながらアランを見上げると、途端に腕を引き寄せられ、正面から強く抱きしめられた。
「アル… 」
低い美声が耳元で囁く。
大好きな香りとたくましく優しい腕。
全ての要素が鼓動を早くして、苦しいくらいにドキドキする。
この人はずるい。
中性的な顔立ちは人並みはずれて美しく、顔を見ているだけで好きすぎて心臓がもたないのに、その声も、甘い香も、抱きしめる温もりも、全てが好きだ。
運命の番でなければ、俺なんかと一緒にいてくれることはないんだろうな…。
いつも、捨てられたらどうしようという不安がつきまとって離れない。
俺はもう彼なしでは生きられないから。
あれ、そういえば俺はさっきから何を気にしていたんだっけ…?
アランと見つめ合ううちに、身体が火照ってわからなくなってしまった。
思い出そうと首をひねるが、なかなか思い出せない。
「…ベッドに行こうか。」
ふと、アランがそう言った。
「えっ、もう寝るの?まだご飯食べてないけど…。」
「夕飯は後だ。」
「寝た後に夕飯?起きれる自信なっ…んんっ…///」
いきなり溺れるように息ができなくなり、口内が溢れんばかりの甘やかな香に包まれた。
驚いて瞑った目をゆっくりと開くと、目の前にあったのは綺麗な青い瞳だった。
ヒート期間以外でこれほど突発的にアランが口付けてきたことってあっただろうか。
そんなことを考えている間にもアランの舌に歯列をなぞられ、濡れた唇を執拗に合わせながら、
その舌は喉と上歯ぐきの境、グミのような柔らかい部分を左右に何度も往復した。
「ふっ…ぅっ… 」
やがてぴったりと合わさった唇から、飲み込むことが困難なほどにあふれた唾液がとろりと零れた。
呼吸の仕方を忘れてしまったのかもしれない。甘やかな声を吐き出すことはできても、いつまでたっても空気を吸うことが出来なかった。
苦しいのにアランの香りで全てがいっぱいになる感覚で気持ちいい。
酸欠で頭がふわふわして…。
「ぷはっ…、はぁっ…、はぁっ…!」
唇が離れ、やっと入ってきた空気をとにかく精一杯吸い込む。
繋がっていた部分からは白銀の糸が伸びていて、それがプツリと切れたかと思うと一気に視界が回転した。
…視界にアランの美しい顔と天井が映る。
…あれ…?
彼の唇がわずかに歪んでいることに今更気づいた。
何かをこらえているようにも、少し悲しげにも映る。
「…ど、したの…?」
問いかけると、何も返事がなかった代わりに俺のボタンへと手がかけられた。
ひとつ、ふたつ。寝間着がはだけられていく。
「…するの?」
白色LEDの下では暴かれた肌が丸見えだ。
美しい彼に自分の身体を見せるのが申し訳なくて、彼の頬を両手で挟みそう問いかける。
「嫌?」
「明るいから…。」
最近、行為中彼に身体を見られることがどうしても後ろめたい。
恥ずかしい、という感情も大きいが、それ以上に最近、アランに気持ちよくしてもらうたびに、娼館でかけられた他の男の精液やあのときのユリアンの指の残像が自分の身体這って離れないような心地がする。
そんなことを考えて、さっき自分がアランに言ったことをやっと思い出した。
…娼館で指輪をもらった?
自分の穢れを強調するような発言じゃないか。
もしかして、嫌われてしまったのだろうか。これが最後のセックスとか、言われたりして…。
消極的な思考が止まらない。
ちゃんと、謝らなくちゃ。そしてお願いしなきゃ。捨てないでって。
「…ない。」
「ん?」
アランは自分のことを欠陥品だというけれど、そんなことない。
死んだことになってたって、子種がなくたって、この美しさと優しさ、賢さがあればきっと俺よりずっと素敵な人が受け入れてくれる。
俺は、たまたま運命の番だったから。
だから番ってもらえたのかもしれないし。
「…汚い。他の男にたくさん抱かれた。ごめんなさい。
…捨てないで…。」
不安すぎて、言葉はひどく弱々しく、しりすぼみに消えてしまう。
彼に手を伸ばして縋ろうとしたけれど、その資格さえない気がして中途半端に伸びた震える手を下ろしてしまう。
「すまない、アル。」
かたかたと小刻みに震える身体を、アランに強く抱きしめられた。
たくましい腕に抱かれ、安心する。
でも、この腕に抱かれる価値は自分にある?そう考えると不安で。
「…今日はしないから。」
耳元で低い声がそう囁いた。苦しそうな声。
「えっ…?」
「今日は、しない。」
…それは、俺はもう必要ない、ということだろうか…?
「夕飯は俺が作る。好きなことをして待っていて。」
ふわりと頭を撫でられて、淡雪のような軽いキスをされて、
作ったような明るい声でそう言われれば、頷く以外の返答はできなかった。
もう、彼にその苦しげな顔をさせまいと決めていたのに…。
泣きそうになるのをこらえながら、黙ってパソコンの画面に向かった。
彼のいる生活から一度離れ、取り戻すことができたのに、またあの空虚を味わう羽目になるのだろうか。
そうしたら俺はどうすればいい?
目を凝らせば、遠目に彼の美しい横顔が映る。
とんとん、と台所で食材を刻む音が、小さな室内にやけに大きく響いた。
※一人称アル視点になります。
デネボラは巨大な施設だ。
どうなっているのかは俺たちにも把握しきれないが、施設内に市場の様なフロアがあり、日用品や食料品、衣類などある程度のものはそこで揃う。
その一方で、揃わないものもある。
「んー、選べない。それに0ふたつ多くない?これ…。」
100万を下回るものはなく、ものによっては1000万を超える。
アランに提示された0だらけの画面を前に、俺は頭を抱えた。
「そんなことはない。
…これなんかはどうだ?きっと似合う。」
パソコンの画面に向かい座る俺背後から、すっと伸びた白く美しい指がある一点を示した。
彼の指差す先にあるのは、プラチナ製、と書かれた時計。
盤が紺桔梗のグラデーションになっており、その上に散らばる金の文字が夜空に浮かぶ星を思わせる。
でも…
「んー、綺麗だけど、時計は持ってるし…
って、1200万!?どこから出すの?」
「どこ、というのは銀行から、という答えでいいのか、それとも何かユーモアを求めているのか…?」
背後を向いて指摘すると、綺麗な顔がきょとんと首をかしげた。
そのわずかにあどけなさを帯びた美しい表情に、思わず釘づけになってしまいそう。
大きく開いた青い瞳は、本当になにを言っているのかわからない、というような不思議そうな色を浮かべていた。
…このひと、本当にわかってない。
そんな大金、どこから出てくるんだという意味なのに。
「ごめん、なんでもない。
でも、ともかく全部高すぎ。娼館で働いてた時に貰った指輪もこんなに高くなかった。」
「…指輪?」
何か気に触ることでもあったのか、アランの声がワントーン低くなった。
「たまに気に入ってくれたαの人がくれたんだ。
名前が入ってて売り物にならなかったんだけど、入ってなかったら何百万とかで売れた…」
とりあえずそのまま続けていると、アランの表情はますます歪んでいく。
「…ごめん、娼館での話なんて、聞きたくないよね…。」
やってしまったと気づいた時には、もう遅い。自分の無神経さに腹が立つ。
嫌われてしまっただろうか…?
不安でいっぱいになりながらアランを見上げると、途端に腕を引き寄せられ、正面から強く抱きしめられた。
「アル… 」
低い美声が耳元で囁く。
大好きな香りとたくましく優しい腕。
全ての要素が鼓動を早くして、苦しいくらいにドキドキする。
この人はずるい。
中性的な顔立ちは人並みはずれて美しく、顔を見ているだけで好きすぎて心臓がもたないのに、その声も、甘い香も、抱きしめる温もりも、全てが好きだ。
運命の番でなければ、俺なんかと一緒にいてくれることはないんだろうな…。
いつも、捨てられたらどうしようという不安がつきまとって離れない。
俺はもう彼なしでは生きられないから。
あれ、そういえば俺はさっきから何を気にしていたんだっけ…?
アランと見つめ合ううちに、身体が火照ってわからなくなってしまった。
思い出そうと首をひねるが、なかなか思い出せない。
「…ベッドに行こうか。」
ふと、アランがそう言った。
「えっ、もう寝るの?まだご飯食べてないけど…。」
「夕飯は後だ。」
「寝た後に夕飯?起きれる自信なっ…んんっ…///」
いきなり溺れるように息ができなくなり、口内が溢れんばかりの甘やかな香に包まれた。
驚いて瞑った目をゆっくりと開くと、目の前にあったのは綺麗な青い瞳だった。
ヒート期間以外でこれほど突発的にアランが口付けてきたことってあっただろうか。
そんなことを考えている間にもアランの舌に歯列をなぞられ、濡れた唇を執拗に合わせながら、
その舌は喉と上歯ぐきの境、グミのような柔らかい部分を左右に何度も往復した。
「ふっ…ぅっ… 」
やがてぴったりと合わさった唇から、飲み込むことが困難なほどにあふれた唾液がとろりと零れた。
呼吸の仕方を忘れてしまったのかもしれない。甘やかな声を吐き出すことはできても、いつまでたっても空気を吸うことが出来なかった。
苦しいのにアランの香りで全てがいっぱいになる感覚で気持ちいい。
酸欠で頭がふわふわして…。
「ぷはっ…、はぁっ…、はぁっ…!」
唇が離れ、やっと入ってきた空気をとにかく精一杯吸い込む。
繋がっていた部分からは白銀の糸が伸びていて、それがプツリと切れたかと思うと一気に視界が回転した。
…視界にアランの美しい顔と天井が映る。
…あれ…?
彼の唇がわずかに歪んでいることに今更気づいた。
何かをこらえているようにも、少し悲しげにも映る。
「…ど、したの…?」
問いかけると、何も返事がなかった代わりに俺のボタンへと手がかけられた。
ひとつ、ふたつ。寝間着がはだけられていく。
「…するの?」
白色LEDの下では暴かれた肌が丸見えだ。
美しい彼に自分の身体を見せるのが申し訳なくて、彼の頬を両手で挟みそう問いかける。
「嫌?」
「明るいから…。」
最近、行為中彼に身体を見られることがどうしても後ろめたい。
恥ずかしい、という感情も大きいが、それ以上に最近、アランに気持ちよくしてもらうたびに、娼館でかけられた他の男の精液やあのときのユリアンの指の残像が自分の身体這って離れないような心地がする。
そんなことを考えて、さっき自分がアランに言ったことをやっと思い出した。
…娼館で指輪をもらった?
自分の穢れを強調するような発言じゃないか。
もしかして、嫌われてしまったのだろうか。これが最後のセックスとか、言われたりして…。
消極的な思考が止まらない。
ちゃんと、謝らなくちゃ。そしてお願いしなきゃ。捨てないでって。
「…ない。」
「ん?」
アランは自分のことを欠陥品だというけれど、そんなことない。
死んだことになってたって、子種がなくたって、この美しさと優しさ、賢さがあればきっと俺よりずっと素敵な人が受け入れてくれる。
俺は、たまたま運命の番だったから。
だから番ってもらえたのかもしれないし。
「…汚い。他の男にたくさん抱かれた。ごめんなさい。
…捨てないで…。」
不安すぎて、言葉はひどく弱々しく、しりすぼみに消えてしまう。
彼に手を伸ばして縋ろうとしたけれど、その資格さえない気がして中途半端に伸びた震える手を下ろしてしまう。
「すまない、アル。」
かたかたと小刻みに震える身体を、アランに強く抱きしめられた。
たくましい腕に抱かれ、安心する。
でも、この腕に抱かれる価値は自分にある?そう考えると不安で。
「…今日はしないから。」
耳元で低い声がそう囁いた。苦しそうな声。
「えっ…?」
「今日は、しない。」
…それは、俺はもう必要ない、ということだろうか…?
「夕飯は俺が作る。好きなことをして待っていて。」
ふわりと頭を撫でられて、淡雪のような軽いキスをされて、
作ったような明るい声でそう言われれば、頷く以外の返答はできなかった。
もう、彼にその苦しげな顔をさせまいと決めていたのに…。
泣きそうになるのをこらえながら、黙ってパソコンの画面に向かった。
彼のいる生活から一度離れ、取り戻すことができたのに、またあの空虚を味わう羽目になるのだろうか。
そうしたら俺はどうすればいい?
目を凝らせば、遠目に彼の美しい横顔が映る。
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