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偶然の出会いと2人の作戦④

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「あの、玄関先までありがとうございました。」

「いえ。お話できて楽しかったです。またもし何かあればいつでも声をかけてください。それでは。」

「ありがとうございます。気をつけて帰ってください。」

北瀬にお礼と別れを告げ、彼の後ろ姿を見送る。

アパートまで車で送ってくれただけでなく部屋の中に入るまで見守ってくれるだなんて、北瀬の親切に礼人は心から感謝した。

__勘違いはすごく恥ずかしかったけど、先輩と会えて嬉しかったな。

靴を脱ぎながら今日の思い出を振り返り、顔が熱くなる。

北瀬はいつも意味がわからないくらい礼人に優しい。

「ただいま。…?」

誰もいない部屋だがなんとなく言いたくなる言葉を口ずさむ。

しかし誰もいるはずのない部屋の中からなぜか足音が聞こえてきて、礼人は身体を強張らせた。

どんどん足音が近づいてくる。

こういう時どうすればいいかなんて、こういう事態に陥ったことがないからわからない。

がちゃ、とドアノブが下がる音がする。

「ちょっと!!なんでそんな早く帰ってくるの!!ちゃんと告白はした!?」

バタン、とドアの開く音とともに姿を現したのは葵だった。

それにしても何故彼はこんなにもむすっとしているのだろうか。

礼人は首を傾げる。

「び、びっくりしたあ…。用事、終わったの?」

「そうじゃない!北瀬先輩が同じフロアにいたからわざわざ気を利かせて帰ってきたの!!」

「えっ、どうして?」

「どうしたもこうしたも…。」

葵はもごもごと口籠もり、それっきり口を閉じてしまった。

「そういえばどうして僕の家に…?」

彼が黙ったままなので、もう一度、今度は違う質問をしてみる。

「それはやっぱりちょっと心配で…じゃなくて、お腹すいたから!」

今度はちゃんと答えが返ってきた。

「そっか!今からお買い物行くのも大変だもんね。何かあったかな?一緒にご飯食べる?」

「食べる!」

結局なぜ葵が怒っているのかはわからなかったが、今日は北瀬と会えたし夜ご飯も1人じゃないし、幸せな1日だなと、礼人は頬を綻ばせた。
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