記憶喪失の僕は、初めて会ったはずの大学の先輩が気になってたまりません!

沈丁花

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お昼のお誘いといとこからのダメ出し①

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正月明けの午前中、来るはずのないLINEの通知を確認し、礼人は空に向けてため息を吐き出した。

真っ直ぐに自分を見つめるシトリンの瞳、優しく添えられた大きな手のひら、息がかかるほど近くに浮かぶ端正な唇。

ショッピングモールから家まで北瀬に送ってもらったあの日から、ふとした瞬間に車内で起こった出来事を思い出し、ドキドキするようになった。

「会いたいなあ…。」

どこからか声が聞こえてきて礼人は当たりをきょろきょろと見回す。

その声が自分のものだと気づくまでに数秒かかり、さらに遅れて自分が北瀬に会いたいと思っているということに気がつき驚いた。

__僕は先輩に会いたかったのか。どうしたら会えるかなあ…?

“会う口実”、と検索をしてみると、お礼に食事に行く、というものが見つかる。

いつも助けてもらっているのだから、お礼に会うのはきっと不自然ではない。

__でも、なんてLINEすればいいのかな…?

友達以外を誘ったことがない礼人は彼を誘うにはなんと打っていいのかわからない。

10分以上打っては消しを繰り返し、“先日のお礼がしたいので一緒にご飯を食べませんか?”、と至ってシンプルな文章を送信した。

送信ボタンを押した手の震えが止まらないうちに既読がつき、どうしようかと困惑してしまう。

彼がどう返してくるかと考えただけで焦りとドキドキが入り混じって、頭の中がとても忙しい。

“お誘い嬉しいのですが、外だとお話しできないので俺と食事をするのはつまらないと思います。”

数秒後、メッセージとしゅんと落ち込んでいるクマのぬいぐるみのスタンプが一緒に送られてきた。

__こんなスタンプも使うんだ。

少し意外で、思わず笑みが溢れる。

それと同時に、外での食事はもしかしたら彼にとっても息苦しいのかもしれないと反省した。

__…それなら…。

“じゃあ、僕の家はどうでしょうか?先輩の好きなものをテイクアウトしてきます。”

代替案としてなかなかいいのではないかと思いながらそう返す。

今度は既読がついた後返信まで数分の時間があった。

“お誘いとても嬉しいですが、俺が家の中に入っても大丈夫ですか?”

__大丈夫って…?

普段から自宅に葵や三澤がよくくるので、北瀬の質問の意図がわからず礼人は首を傾げる。

特に古いアパートでもないし床が抜ける心配はない。

“大丈夫です。いつがいいでしょうか?先輩に合わせます。”

そう返せば、またすぐ既読がついて。

“明後日のお昼はご都合いかがですか?”

と返ってきたから、夜じゃないのかと少し驚きながらも礼人は大丈夫ですと返信したのだった。
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