記憶喪失の僕は、初めて会ったはずの大学の先輩が気になってたまりません!

沈丁花

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お昼の誘いといとこからのダメ出し②

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“そういえば北瀬先輩とは何か進展あった?”

北瀬を食事に誘った日の午後、葵とのんびりLINEをしていたら唐突にそんなことを聞かれた。

“普段のお礼で明後日僕の家でご飯食べることになった。”

進展と呼べるかわからないがとりあえずそのことを告げる。

すると既読はついたが何故か一向に返信が返って来ず、返信を待っている間に玄関のチャイムが鳴った。

「はい。…って、葵?」

ドアスコープを除けば葵が切羽詰まった様子で立っている。

メイクはばっちりしているが、部屋着のまま長い髪も結ばずに遊ばせていることから、かなり急いできたことが伺えた。

「何かあった?」

尋ねながらドアを開けると、突然ぐいっと肩を掴まれすごい剣幕で彼の顔が近づいてくる。

「なにその関係の飛躍!!家に呼ぶとか、いつの間に付き合ってたの!?」

「えっ、付き合ってない…。お礼に食事に誘ったけど、人が多いレストランよりうちの方がゆっくりできるかなって思っただけで…いひゃい(痛い)!!葵ひゃん(葵さん)、ほっへいひゃい(ほっぺ痛い)!!」

話の途中で両方のほっぺたをつねりあげ思い切り引っ張られた。

確実に怒っている。何故怒っているのかは礼人にはわからないが、葵の目がとても怖い。

「男を家に呼ぶ意味がわかってるわけ?」

今度は格好に似合わない低く野太い声で尋ねられる。

「うん。葵も三澤も来てくれたらとっても楽しいよ…?」

この返答が正解ではないと確信していながらも、それ以外の答えが思いつかなかった礼人は首を傾げそう答えた。

「…あー、あやかわいいのにそんなんでめちゃくちゃ心配。俺と燕芽つばめと好きな人以外絶対家には呼ばないでね。…でも、そっか。おうちデートか。じゃあいつも中に着てるそのくまのTシャツはどうにかしないとね。服貸してあげるから俺の部屋来て。」

「デートじゃな「ちょっと一旦黙ろうか。」

「えっ、どこ行くの?」

「俺の部屋!」

そのまま葵に手を引かれ、アパートの隣の葵の部屋の中に連れて行かれて。

お気に入りのブランドのくまのTシャツを“絶妙に目が据わってて怖い”、と貶されながら礼人はしばらく葵の着せ替え人形にされた。

ちなみに葵は男物の洋服もかなりの数を持っている。

「…かわいいのに…。」

ソファーの上に畳んで置かれたTシャツのくまをじっと見ながら、ボソリと呟けば、葵があからさまに引いたような表情を浮かべた。

そういえば、そろそろおやつの時間だ。
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