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ep18
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「…ずっと一緒に居られるなら、Claimを受け入れると言うことか?
なら問題ない。絶対に一葉以外をパートナーにはしない。」
紅司が不思議そうに問うた。
Claim、とは文字通り、DomがそのSubをパートナーだと主張することだ。結婚ほどきつい縛りではないが、互いの合意のもと役所に届けを出すことで正式なパートナーと認定される。
でも、一葉は知っている。同性のパートナーは、結婚を理由に解消されるケースが多い。現に前の主人には結婚を理由に捨てられた。
「…ずっと、だなんてそんなに軽く仰らないでください。
絶対なんて絶対、ありえません。」
「それでまた、身体に合わない抑制剤を無理やり服用して苦しむのか?俺は一葉を俺から離すつもりはない。」
声を荒げた一葉に、言い聞かせるように紅司は尋ねた。返す言葉が見つからず、再び一葉は黙ってしまう。
「1ヶ月。」
何度目かわからない沈黙の後、紅司がふとそう呟いた。
「1ヶ月でいい。抑制剤を飲まず、期間限定で俺のパートナーになってほしい。
その期間中に一葉が俺を信用できると思えたら、Claimを受けてほしい。もし無理なら、その時は… 」
そこで言葉を切り、紅司は何かを決意したようにぐっと歯を食いしばった。
「…その時は、俺の専属を辞め、元の持ち場に戻れるようにしよう。抑制剤に一葉が苦しむ姿は見たくない。約束する。」
…1ヶ月。
このままいたところで抑制剤を服用し続けたらまた今回のような事態になる。
それなら1ヶ月、割り切った関係でいた方がいいのかもしれない。
…それに一葉はただ、気持ちいいだけ。この人から与えられるものは、気持ちいい。
1ヶ月して一葉が断れば捨てられることもない。
いい話ではないか。
「…わかりました。では、1ヶ月だけ。」
「よろしく。」
「よろしくお願い致します。」
それから紅司は一葉の肌に丁寧に湯を滑らせ、なるべく頬の傷にかからないよう丁寧に髪を洗い、そして一緒にバスタブに浸かった。
出た後もタオルなどは全て先に一葉に使い、自分より先に一葉の髪を乾かして、頬の手当てをしてくれた。
自分でやると何度言っても、そのたくましい腕が一葉を離すことは決してなくて。
まるで自分が主人になったみたい。
尽くされる、という感覚を久しぶりに味わった。
そして紅司は手練手管でたっぷりと一葉を甘やかした後、
「今日は助かった。一葉のおかげで、ことなきを得た。
少し、休んでほしい。」
無理に紅司のベッドに連れ込まれ、そっとその上に横たえられた。
そのまま紅司も横になり、一葉の身体を淡く抱く。
背に回された紅司の腕から、優しい手のひらでトントン、と背中に心地よいリズムが刻まれていく。
ちらりと紅司の方を見上げると、切れ長の目が愛おしげに細められ、その唇は柔らかな弧を描いた。
「子守唄も必要か?」
いきなり子ども扱いをされて、一葉は恥ずかしさに目をそらした。
「…必要ありません。」
ぶっきらぼうで、実に可愛げのない返事。
でも、必要ない、という言葉は本音だった。
優しい手、落ち着く匂い、彼の温もり。これ以上与えられたら、幸せすぎて睡眠どころではない。
…底なしに甘くて、溺れてしまいそう。
それに…
再び紅司の顔を覗く。紅司は一葉の意図を察するように色っぽく笑んだ。
「…身体は大丈夫なのか?」
「…はい。」
雨で仄暗い天気とはいえ、時間は真昼間。
それでも互いの身体の熱は、逃げることを知らなかった。
なら問題ない。絶対に一葉以外をパートナーにはしない。」
紅司が不思議そうに問うた。
Claim、とは文字通り、DomがそのSubをパートナーだと主張することだ。結婚ほどきつい縛りではないが、互いの合意のもと役所に届けを出すことで正式なパートナーと認定される。
でも、一葉は知っている。同性のパートナーは、結婚を理由に解消されるケースが多い。現に前の主人には結婚を理由に捨てられた。
「…ずっと、だなんてそんなに軽く仰らないでください。
絶対なんて絶対、ありえません。」
「それでまた、身体に合わない抑制剤を無理やり服用して苦しむのか?俺は一葉を俺から離すつもりはない。」
声を荒げた一葉に、言い聞かせるように紅司は尋ねた。返す言葉が見つからず、再び一葉は黙ってしまう。
「1ヶ月。」
何度目かわからない沈黙の後、紅司がふとそう呟いた。
「1ヶ月でいい。抑制剤を飲まず、期間限定で俺のパートナーになってほしい。
その期間中に一葉が俺を信用できると思えたら、Claimを受けてほしい。もし無理なら、その時は… 」
そこで言葉を切り、紅司は何かを決意したようにぐっと歯を食いしばった。
「…その時は、俺の専属を辞め、元の持ち場に戻れるようにしよう。抑制剤に一葉が苦しむ姿は見たくない。約束する。」
…1ヶ月。
このままいたところで抑制剤を服用し続けたらまた今回のような事態になる。
それなら1ヶ月、割り切った関係でいた方がいいのかもしれない。
…それに一葉はただ、気持ちいいだけ。この人から与えられるものは、気持ちいい。
1ヶ月して一葉が断れば捨てられることもない。
いい話ではないか。
「…わかりました。では、1ヶ月だけ。」
「よろしく。」
「よろしくお願い致します。」
それから紅司は一葉の肌に丁寧に湯を滑らせ、なるべく頬の傷にかからないよう丁寧に髪を洗い、そして一緒にバスタブに浸かった。
出た後もタオルなどは全て先に一葉に使い、自分より先に一葉の髪を乾かして、頬の手当てをしてくれた。
自分でやると何度言っても、そのたくましい腕が一葉を離すことは決してなくて。
まるで自分が主人になったみたい。
尽くされる、という感覚を久しぶりに味わった。
そして紅司は手練手管でたっぷりと一葉を甘やかした後、
「今日は助かった。一葉のおかげで、ことなきを得た。
少し、休んでほしい。」
無理に紅司のベッドに連れ込まれ、そっとその上に横たえられた。
そのまま紅司も横になり、一葉の身体を淡く抱く。
背に回された紅司の腕から、優しい手のひらでトントン、と背中に心地よいリズムが刻まれていく。
ちらりと紅司の方を見上げると、切れ長の目が愛おしげに細められ、その唇は柔らかな弧を描いた。
「子守唄も必要か?」
いきなり子ども扱いをされて、一葉は恥ずかしさに目をそらした。
「…必要ありません。」
ぶっきらぼうで、実に可愛げのない返事。
でも、必要ない、という言葉は本音だった。
優しい手、落ち着く匂い、彼の温もり。これ以上与えられたら、幸せすぎて睡眠どころではない。
…底なしに甘くて、溺れてしまいそう。
それに…
再び紅司の顔を覗く。紅司は一葉の意図を察するように色っぽく笑んだ。
「…身体は大丈夫なのか?」
「…はい。」
雨で仄暗い天気とはいえ、時間は真昼間。
それでも互いの身体の熱は、逃げることを知らなかった。
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