強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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「落ち着いたかな…?」

何か言わないと、と思ってあたふたしていたら、彼が先に沈黙を断ってくれた。

「はい…。」

恥ずかしくて気まずくて、答える声が自然と小さくなってしまう。

「僕は秋月由良あきづきゆら。君は?」

由良さんっていうのか。かっこいい名前だな。

「…風間幹斗かざまみきとです…。」

「そっか、幹斗くん。違ったらごめんね。君はSub?」

依然として穏やかな声で尋ねられる。

「…はい…。」

「さっき、どうしていきなりkneelお座りしたのか、差し支えなければ聞いてもいいかな?僕、glareは出してなかったと思うけど…。」

「… 」

「言いたくなかった言わなくていいからね。」

…優しい。

由良さんの口調や声が優しい雨みたいに感じられて、自分の支配権を彼に握って欲しいという衝動が俺の中で再び募った。

“あなたの目を見た途端に本能で支配されたいと思いました。俺をあなたのパートナーにしてください”

そう言いたいけれど、先程の愚行を考えると、こんなことを言ったら今度こそ捨てられてしまうのではないかと、怖い。

「ああ、泣かないで。嫌なことを聞いてしまったかな?」

慌てたような彼の声。気付けば涙が溢れていた。

…違う。言いたい。言いたいけど怖くて言えない…。

言おうとして口を動かしても、声は出ない。

しばらくそうしていると、ちょっとごめんね、と言う声とともに由良さんが立ち上がり、顎を掴まれ、上をむかされた。

刹那、身体中を刺激が駆け巡った。

杭で打ち付けられたように、彼の目から視線を逸らせない。これがglareグレアだと、Subの本能が教えてくれた。glareが効くと、こんな風になってしまうのか。

…このままその視線を注がれ続けたら、おかしくなってしまいそうだ。

恐怖なのか快楽なのかは判断がつかないが、なんというかもう脳が気持ちいい。

これ以上脈打ったら死んでしまうのではないかと思うのに、鼓動はなおも加速し続ける。

彼の指が触れたところが、熱い…。

彼の唇が開いていく、その様子がやけにゆっくりと見えて。

Say言え. 」

command命令!?

「…あなたに、…支配、された、くて… 」

気付いた時にはもう遅く、俺は自分の意思と関係なしに全てを話してしまっていた。
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