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“いらっしゃいませ”のかわりに“おかえりなさいませ”と言い、受付で注文し代金を払ってもらったケーキや飲み物を“お待たせいたしました、お嬢様(旦那様)”と言いながら渡す。
何回も言っているうちに恥ずかしい気持ちも麻痺してきて、自然に接客を行えるようになった。注文や会計を受付でしてくれるおかげで、目立ったトラブルもない。
淡々と作業をこなしていると、昼時の混雑が落ち着いた頃に、いきなり室内がざわつき始めた。
“ねーあの人かっこよくない?”
“身長高っ!モデルみたい”
コソコソと客が話しているのが気になって、入り口に目を向ける。
「おかえりなさいませ、旦那様。」
もちろんあいさつも忘れずに。
「その服すごく似合ってるね、幹斗君。」
聞き覚えのある声がして頭を上げると、そこには由良さんが立っていた。
私服な上、仕事ではないからか前髪を下ろしていて格好いいがすぎる。
「え、だれ、幹斗知り合い?」
たまたま近くにいた谷津がそれはもう興味津々な様子で聞いてくる。
「えっと… 」
なんて答えるのが正解だろう。谷津だけになら本当のことを言えるけど、谷津以外の人も聞き耳を立てている状況でそれは言えない。
なにより由良さんが俺をどう思っているかなんて、俺にもわからないし。
「いとこのお兄さんだよ。」
「なるほど!やっぱイケメンの家族はイケメンかー!なるほどなー。」
谷津は俺の背中をバンバンと叩きながら訳のわからない台詞を吐き、そのまま接客に戻った。
「こちらで受付をお願いいたします。」
俺も呆然とする由良さんに一言告げ、接客に戻る。
「お待たせいたしました、旦那様。」
「あっれー?君もしかしてあの時の可愛くないSub君?へえー、ここの大学だったんだァー。こんなところで会うなんて運命か何かかなぁ?」
…こうも上手く偶然が重なることってあるのだろうか。由良さんがこの時間に来ている確率が1/5だとして、この人が偶然ここに来てそれが由良さんのいるこの時間である確率は…
と、そんなことを考えている場合ではない。
ケーキとコーヒーを運んだ先にいたのは、由良さんと初めて会う直前に俺とプレイをしたDomで。
大勢の前でSub性だと明かされた挙句明らかに相手は臨戦態勢。
…どうすればいいんだ、これ。
何回も言っているうちに恥ずかしい気持ちも麻痺してきて、自然に接客を行えるようになった。注文や会計を受付でしてくれるおかげで、目立ったトラブルもない。
淡々と作業をこなしていると、昼時の混雑が落ち着いた頃に、いきなり室内がざわつき始めた。
“ねーあの人かっこよくない?”
“身長高っ!モデルみたい”
コソコソと客が話しているのが気になって、入り口に目を向ける。
「おかえりなさいませ、旦那様。」
もちろんあいさつも忘れずに。
「その服すごく似合ってるね、幹斗君。」
聞き覚えのある声がして頭を上げると、そこには由良さんが立っていた。
私服な上、仕事ではないからか前髪を下ろしていて格好いいがすぎる。
「え、だれ、幹斗知り合い?」
たまたま近くにいた谷津がそれはもう興味津々な様子で聞いてくる。
「えっと… 」
なんて答えるのが正解だろう。谷津だけになら本当のことを言えるけど、谷津以外の人も聞き耳を立てている状況でそれは言えない。
なにより由良さんが俺をどう思っているかなんて、俺にもわからないし。
「いとこのお兄さんだよ。」
「なるほど!やっぱイケメンの家族はイケメンかー!なるほどなー。」
谷津は俺の背中をバンバンと叩きながら訳のわからない台詞を吐き、そのまま接客に戻った。
「こちらで受付をお願いいたします。」
俺も呆然とする由良さんに一言告げ、接客に戻る。
「お待たせいたしました、旦那様。」
「あっれー?君もしかしてあの時の可愛くないSub君?へえー、ここの大学だったんだァー。こんなところで会うなんて運命か何かかなぁ?」
…こうも上手く偶然が重なることってあるのだろうか。由良さんがこの時間に来ている確率が1/5だとして、この人が偶然ここに来てそれが由良さんのいるこの時間である確率は…
と、そんなことを考えている場合ではない。
ケーキとコーヒーを運んだ先にいたのは、由良さんと初めて会う直前に俺とプレイをしたDomで。
大勢の前でSub性だと明かされた挙句明らかに相手は臨戦態勢。
…どうすればいいんだ、これ。
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