強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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「315って、…ああ、この階段を上がった先か。ちょっとごめんね。」

「!?」

次の瞬間身体が宙に浮いた。

うそ、由良さんに抱っこされてる…。

「あ、あの、階段くらい、上がれます!」

俺たちの企画に人が集まることを運営が想定したのかこの辺は人通りがほとんどないけれど、それでも誰かに見られたらまずいし見られなくても恥ずかしい。

なにより身長170以上の男だ。重いに決まってる。

「…今は黙って従ってて。」

押し殺すような低い声、口元に反して笑っていない目。

…あれ、もしかして由良さん、怒ってる…?

あの男に対してだろうか、それともあの男を自分で振り払うことができなかった俺に対してだろうか。

考えているうちに控室の前までたどり着き、身体を下ろされた。幸いここまで誰ともすれ違っていない。

無言で由良さんが鍵を開け、俺に中に入るように促す。そして由良さんも入ると、そのまま中から鍵をかけてしまった。
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