63 / 261
10-3
しおりを挟む
「姉の親友に、ある日告白されてね。…ああ、姉って言っても、僕は里子だから血は繋がっていないんだけれど。
ゲイだって断ったら、押し倒されて…、そのまま行為を強いられたんだ。」
ごく小さい震え声で、つっかえながら、それでも由良さんはちゃんと俺に話そうとしてくれている。
だから、その告白がどんな内容でも、一言も漏らさずに聞こうと思った。
俺は無言でうなずき、続きを求める。
「…でも、それはよくて。そのあと僕との間に子供ができたって言われて、それから僕はその人のこと避け続けてしまってね。
…その人、出産で亡くなったんだって。親伝いに知ったんだ。」
由良さんの震える手が、苦しいって言っている。涙を押し殺したような声は、とても痛々しい。
衝撃の告白に俺はすぐには言葉が出なかったけれど、代わりに由良さんの手をぎゅっと握った。
…なんて酷い話だ、と思う。体格差を考えれば、確実に抵抗できたはずだ。けれどその状況で動けなかったと言うことは、何か違う原因があったのだろう。
話にちらっとだけ混じっていた、彼が里子だという事実が関係しているのではないだろうか。なんとなくそう思った。
同時に、ゲイなのに子供がいる、という矛盾にも、そういうことだったのかと納得する。
「でも、僕は、…その子供の父親だって言うことを誰にもいえなくて。その子は、この世界で唯一僕と血の繋がった相手なのに。それに、僕がちゃんと拒んでいたら、彼女は死ななくて…。
無責任で最低な行為だと幻滅したでしょう。でも、ここまで聞いてくれて、ありがとうね。」
多分泣いているであろう由良さんの表情を、まともに見ることができなくて、俺は前を向いた。
薄いカーテン越しに、ぼやけた水槽が覗く。
やっぱり聞いておいてよかった、と思う。話を聞いたら、余計に由良さんのことが好きになった。
由良さんは絶対に悪くない。悪いのは完全に相手の方。
けれど彼は、そのことについてずっと自分を責め続けてきた。その子供のことと、…おそらく、自分を強姦した彼女について。
悪くないと、口で否定するのは簡単なこと。でも、そうしたら由良さんの今までの生き方まで否定してしまう気がする。
…ならそれごと、受け止めればいい。
「…由良さんがどれだけ辛い思いをしたのか、俺なんかにはわからないと思います。
でも、自分がされたことを恨まずに、自分に嫌なことをした相手のことすら思い遣る、そう言う優しいところ、好きです。
話してくれてありがとうございます。俺、もっと由良さんのこと、好きになりました。」
一息に言って、深呼吸をしたら、なんだか自分の言ってることが恥ずかしく思えてきた。
…ちょっと格好つけすぎた?
というか俺、何様だ…?
ゲイだって断ったら、押し倒されて…、そのまま行為を強いられたんだ。」
ごく小さい震え声で、つっかえながら、それでも由良さんはちゃんと俺に話そうとしてくれている。
だから、その告白がどんな内容でも、一言も漏らさずに聞こうと思った。
俺は無言でうなずき、続きを求める。
「…でも、それはよくて。そのあと僕との間に子供ができたって言われて、それから僕はその人のこと避け続けてしまってね。
…その人、出産で亡くなったんだって。親伝いに知ったんだ。」
由良さんの震える手が、苦しいって言っている。涙を押し殺したような声は、とても痛々しい。
衝撃の告白に俺はすぐには言葉が出なかったけれど、代わりに由良さんの手をぎゅっと握った。
…なんて酷い話だ、と思う。体格差を考えれば、確実に抵抗できたはずだ。けれどその状況で動けなかったと言うことは、何か違う原因があったのだろう。
話にちらっとだけ混じっていた、彼が里子だという事実が関係しているのではないだろうか。なんとなくそう思った。
同時に、ゲイなのに子供がいる、という矛盾にも、そういうことだったのかと納得する。
「でも、僕は、…その子供の父親だって言うことを誰にもいえなくて。その子は、この世界で唯一僕と血の繋がった相手なのに。それに、僕がちゃんと拒んでいたら、彼女は死ななくて…。
無責任で最低な行為だと幻滅したでしょう。でも、ここまで聞いてくれて、ありがとうね。」
多分泣いているであろう由良さんの表情を、まともに見ることができなくて、俺は前を向いた。
薄いカーテン越しに、ぼやけた水槽が覗く。
やっぱり聞いておいてよかった、と思う。話を聞いたら、余計に由良さんのことが好きになった。
由良さんは絶対に悪くない。悪いのは完全に相手の方。
けれど彼は、そのことについてずっと自分を責め続けてきた。その子供のことと、…おそらく、自分を強姦した彼女について。
悪くないと、口で否定するのは簡単なこと。でも、そうしたら由良さんの今までの生き方まで否定してしまう気がする。
…ならそれごと、受け止めればいい。
「…由良さんがどれだけ辛い思いをしたのか、俺なんかにはわからないと思います。
でも、自分がされたことを恨まずに、自分に嫌なことをした相手のことすら思い遣る、そう言う優しいところ、好きです。
話してくれてありがとうございます。俺、もっと由良さんのこと、好きになりました。」
一息に言って、深呼吸をしたら、なんだか自分の言ってることが恥ずかしく思えてきた。
…ちょっと格好つけすぎた?
というか俺、何様だ…?
11
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
待てって言われたから…
ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる