強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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由良さんにいざ連絡しようと思っても、なにを書いていいのかわからない。

おはようとお休みを繰り返すだけで、最後に会ってからもう10日が経っていた。

“お仕事の調子はどうですか?俺は今試験勉強中です。早く会い…”

スマホの画面と睨めっこしながら、文字を打っては消し、打っては消しを繰り返し、結局なにも送信せず仕舞い。

おはようのLINEは俺が打つけれど、お休みはいつも由良さんがしてくれるから、スマホの通知音量を最大にして、そのままベッドに横になった。

…こんなに会いたくなるのなら、写真の一つや二つ撮っておけばよかったな。そうすればそれを見て、少しは気が紛れたかもしれない。

「わわっ…!!」

いきなり予期せぬ音が鳴って、思わず声を上げた。電話の着信音だ。

こんな時間に一体誰が…。思いながら手を伸ばす。

谷津がまた彼女と喧嘩でもしたのだろうか。

スマホを手に取ると、画面には“秋月由良”の文字。

びっくりしてスマホを落としそうになったが、床にダイブする寸前でなんとか受け止める。

混乱しながら、とりあえず受話器を上げるマークを押し、耳にスマホを当てた。

『幹斗君、突然ごめんね。今大丈夫?』

久しぶりに聞く由良さんの声に、身体全身が歓喜で震える。

顔を合わせているわけでもないのに、胸がきゅっと締め付けられた。どうしよう、嬉しい。

「大丈夫、です。…あの、どうしたんですか?」

自分の声が上ずっているのがわかり、恥ずかしくなった。俺の慌てようだとか、喜びだとかを全てわかっているように、受話器の向こうで由良さんがくすりと笑む。

『声が聞きたくなって。迷惑だったかな?』

「!?」

そんなの嬉しいに決まっている。ベッドにごろごろと転がって、今にも叫び出してしまいたいくらいに。

「あ、の、俺もっ、…声、聴きたかったですっ!」

最後の方は声が裏返ってしまった。

『それは嬉しいな。…ところで幹斗君、溜まってない?ダイナミクス第二性の欲求とか。』

痛いところを突かれ、言葉に詰まる。

由良さんと会うまでは1ヶ月に1回でも支障なく我慢できたのに、今では由良さんにプレイされたくて堪らず、由良さんのことで頭がいっぱいになることがあって。

「…えっと、その…、、…してます…。 」

無意識に声が小さくなる。

『じゃあ、今からプレイしようか。』

「えっ?…と…?」

今からプレイって、どういうことだ…?状況がうまく予測できない。

『僕が幹斗君に電話で命令をして、幹斗君はそれに従う。どうかな?』

芽生えた興味に、たっぷりと妖艶な響きを含んだ由良さんの声が拍車をかける。

「…お願いします。」

『いい子。じゃあ幹斗、Strip.脱いで

いい子、のあとはいつもよりワントーン低い声。

glareもないのに、俺はそれに従う。

ただ、由良さんに支配されているという事実に、ひどく高揚しながら。
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