強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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目隠しをされて、胸の突起にはクリップを挟まれて、後孔には無機質な物体をねじ込まれた。後孔の中を物体は容赦なく動き回り、望まない快楽を与え続けてくる。

由良さんの声はしない。それどころか、触れてさえ来ないので気配も感じない。

この状態のままどれだけの時間が経っただろう…。

ふと、何かが半端に硬くなった俺のあそこに触れた。おそらく由良さんの手だ。

声は何も聞こえない。その代わりに、じっとしているとあそこの先端に何か硬くて冷たい、金属のような感触が当てられた。その細い何かは、雄棒の先端から中に入ってこようとしているようで。

…やめて。それは怖い。

「ヘリオトロープ!!」

反射的にセーフワードを叫んでいた。

セーフワードは、Subの意向でプレイを止める唯一の方法。目隠しをしていなかったら叫んでいなかったかもしれないが、怖くてたまらない上に由良さんの声も表情も感じ取ることができなかったから、本当に恐ろしくて。

金属らしい何かが、鈴口から侵入してこようとするのを止める。

続いて、雑に目隠しと拘束を取り払われた。

…よかった、やっと由良さんが見える…。

そう思ったのも束の間、俺はセーフワードを叫んだことを後悔した。

「…ねえ幹斗、僕はこの程度で音を上げるSubなんて、要らないんだ。」

ナイフのように鋭く言われた。いつものプレイ中よりずっと冷たくて、吐き捨てるような響きを持った声で。

そして俺はようやく、あのずっと感じていた違和感の正体に気がついた。

…由良さん、写真の話をした時から一度も、俺と目を合わせてない…。

恐怖で固まった俺に対し、由良さんは何も言わずに身支度を整える。

「ごめんね。でも僕のプレイに耐えられないSubなら、他をあたってほしい。」

そのまま由良さんはハサミを取り出し、その刃先を、俺のつけている、由良さんのものである証に近づけた。由良さんの瞳と同じ色の首輪は、ちょきんという音を立てて2つに分かれる。

「ばいばい、幹斗。」

吐き捨てるような声。けれど、そこで俺はもう一つの違和感に気がつく。何故だか彼が苦しんでいるように映ったのだ。

由良さんの言葉も口調も、酷く冷酷で。

…でも、ならどうして。

どうしてそんなに苦しそうな顔を由良さんがしているの?

…捨てられて辛いのは俺の方なのに。捨てたのは由良さんの方なのに。

ばいばい、と俺に言う瞬間、彼は酷く表情を歪め、言った後は血が出るのではないかと思うほどに強く唇を噛み締めていた。

訳の分からないまま、出ていく由良さんの背中を俺は呆然と見つめる。

そして完全に彼の気配が消えたあと、今自分の置かれている状況をやっと理解した。

…要らないって言われた。collarも切られたから、パートナーも解消された。

世界から色がなくなったような、深い絶望が押し寄せてくる。

どんなに叫んでも戻ってこない幸せ。こんなに一瞬でなくなるだなんて、思っても見なかった。

叫んで、暴れて、泣いて、そうしているうちに疲れて、意識が遠のいて。



夢なら覚めてくれ、と願ったのに、反対に幸せな夢を見た。

目を開けて直面した現実は、ただの地獄。ボロボロの自分と真っ二つのcollar。ここに残されたのは、それだけ。
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