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パンパンのハンバーグにナイフを入れた瞬間、ジュワッと透明な肉汁が流れ出して、目の前に座っていた谷津が目をキラキラさせた。
「めっっっっちゃくちゃ美味しそうじゃん!!幹斗一口ちょうだい!!」
「いいよ。はい、フォーク。」
「ありがと!!失礼します…って、んっまー!!!!!」
ほっぺたをおさえながら満面の笑みでモグモグと口を動かす姿はとても幸せそうだ。
なぜ谷津が(自分でハンバーグ屋さんって言っておきながら)オムライスを頼んだのかは甚だ疑問だが、突っ込むのはやめておく。
ちなみに俺が頼んだのはデミグラスソースハンバーグで、東弥が頼んだのは中にチーズが入っているハンバーグだ。
「幹斗、俺とも交換しない?」
「いいよ。」
隣に座っている東弥に尋ねられ、今度は東弥の方に皿を近づける。
東弥は一口含んで、美味しいね、と笑ってくれた。
正直つらい。頭痛と吐き気とこみ上げる自傷衝動を、これ以上抑えるのはもう無理だとすら思う。けれどそれを言うわけにもいかなくて。
…あ、ハンバーグ用のナイフ。あれで肌を思いきり切りつけたら、きっと…
ナイフに手を伸ばし、その歯を呆然と見つめていると、突然、ナイフを持っていた右手首を掴まれた。
「…?」
ぼうっとしていて自分が周りからどう見えているのかもわからない俺は、もちろんなぜ手を掴まれたのかもわからず、首を傾げる。
「幹斗、ちょっとこっち。谷津、明日払うからお金払っといて。」
東弥の声がして、ナイフを奪われ、腕を引いてその場に立たされた。
「りょーかい!!残り全部食べていい?」
「もちろん。」
「オムライス頼んで良かったー!!」
続いて元気の良い谷津の声がする。
俺は東弥にぐいぐいと腕を引っ張られ、何故だか外へ連れ出された。
「東弥、どうした?」
聞いても返事はない。しかも何故か東弥は繋いでいない方の手で俺のリュックを持っている。
手を引っ張られながら歩くこと5分。
とあるアパートのドアの前まで来ると彼はやっと足を止め、鍵を開け、俺を中へと引っ張った。
そうして周りに誰もいなくなってもまだ東弥は口を開かず、代わりに俺の左手を持ち上げて、爪痕だらけの手の甲を晒す。
「どうした、はこっちの台詞。こんなになるまで放っておいて…。
頼ってって言ったよね?俺。」
彼の声は普段よりずっと低く、明らかに怒っているのがわかった。
「めっっっっちゃくちゃ美味しそうじゃん!!幹斗一口ちょうだい!!」
「いいよ。はい、フォーク。」
「ありがと!!失礼します…って、んっまー!!!!!」
ほっぺたをおさえながら満面の笑みでモグモグと口を動かす姿はとても幸せそうだ。
なぜ谷津が(自分でハンバーグ屋さんって言っておきながら)オムライスを頼んだのかは甚だ疑問だが、突っ込むのはやめておく。
ちなみに俺が頼んだのはデミグラスソースハンバーグで、東弥が頼んだのは中にチーズが入っているハンバーグだ。
「幹斗、俺とも交換しない?」
「いいよ。」
隣に座っている東弥に尋ねられ、今度は東弥の方に皿を近づける。
東弥は一口含んで、美味しいね、と笑ってくれた。
正直つらい。頭痛と吐き気とこみ上げる自傷衝動を、これ以上抑えるのはもう無理だとすら思う。けれどそれを言うわけにもいかなくて。
…あ、ハンバーグ用のナイフ。あれで肌を思いきり切りつけたら、きっと…
ナイフに手を伸ばし、その歯を呆然と見つめていると、突然、ナイフを持っていた右手首を掴まれた。
「…?」
ぼうっとしていて自分が周りからどう見えているのかもわからない俺は、もちろんなぜ手を掴まれたのかもわからず、首を傾げる。
「幹斗、ちょっとこっち。谷津、明日払うからお金払っといて。」
東弥の声がして、ナイフを奪われ、腕を引いてその場に立たされた。
「りょーかい!!残り全部食べていい?」
「もちろん。」
「オムライス頼んで良かったー!!」
続いて元気の良い谷津の声がする。
俺は東弥にぐいぐいと腕を引っ張られ、何故だか外へ連れ出された。
「東弥、どうした?」
聞いても返事はない。しかも何故か東弥は繋いでいない方の手で俺のリュックを持っている。
手を引っ張られながら歩くこと5分。
とあるアパートのドアの前まで来ると彼はやっと足を止め、鍵を開け、俺を中へと引っ張った。
そうして周りに誰もいなくなってもまだ東弥は口を開かず、代わりに俺の左手を持ち上げて、爪痕だらけの手の甲を晒す。
「どうした、はこっちの台詞。こんなになるまで放っておいて…。
頼ってって言ったよね?俺。」
彼の声は普段よりずっと低く、明らかに怒っているのがわかった。
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