163 / 261
第2部
泣かないで②
しおりを挟む
(幹斗side)
「ごめんね、幹斗君、…何もできなくて、…でも君をもう離せなくて、ごめんね…。」
由良さんの涙を見て、今まで朦朧としていた意識が急にはっきりした。
…あれ、そういえば俺…
…そうだ、御坂に暴行された次の朝から、話すことができなくなったんだっけ…。
なぜ話すことができなかったのか。
それは、あの夜俺が眠った後に気づいた、ある恐ろしい事実のせいだった。
本当は暴行された夜に、由良さんの言葉のおかげで一度は俺の中で気持ちに決着がついていた。
壊れたように謝って意識を失ったあと、ふと目を覚ました瞬間が、一番幸せだったのだと思う。ぐっすり眠りながら俺を抱きしめる由良さんの横顔が愛しくて、その頬に口付けてお帰りなさいと微笑んだ、その瞬間が。
けれどそのあとすぐに思ったのだ。
“タイミングが良すぎる”、と。
そして連鎖的に御坂が最後に放った最後の言葉を思い出して。
“ここまですればいいだろう。”
あの言葉の意味がなんだったのだろうと考えたとき、急な寒気が押し寄せてきた。
そういえば御坂は由良さんと同じ会社に勤めていたはずで。
はっとして、起こさないように由良さんの横を抜け出し、引き出しにしまったまま存在を忘れていた名刺を取り出した。
そこにはやはり由良さんと同じ会社の社名が書かれていた。
念のためネットで彼の本名を引いてみると、彼が由良さんの直属の部下であることがわかった。
由良さんが部長で、御坂が課長。その事実が何か引っかかって、もう少し調べると彼のSNSのアカウントにたどり着いた。
“御坂理人@社長子息”。本名でやっているなんて馬鹿だ、というツッコミはひとまず置いておき、社長子息、という言葉に怯えを感じながらも彼のアカウントをクリックして。
そして一番上の投稿を見たときに、さらに嫌な予感がした。
“ああ、すっきりした。むかつく奴の大切なものを壊すのって最高に気持ちいいわ。男とか無理かもって思ってたけど、加減気にせず痛めつけられるし、顔きれいなら全然あり。”
震える手で投稿を遡っていくと、その嫌な予感はどんどん大きくなっていった。
“宝物の後輩に接触成功。仲良くなった後輩に落とされるとか最高に滾るよな。”
“あいつの宝物に接触成功。綺麗な顔してたから、あいつに捨てられたら俺が可愛がってやってもいいかな。”
“あいつまじでむかつくんだよ。みんななんであいつばっか頼るんだ。父さんも父さんだ。なんであんな奴の下に俺をおくんだ。俺のが上だ。”
漠然とした恐怖がどんどん確信に変わるとともに、泣きたい気持ちになった。
御坂は多分、由良さんが嫌いで、けれど由良さんはみんなから信頼が厚くて、だから由良さんが一番傷つく方法を探していたのだろう。
そこで念入りな計画とともに俺を傷つけることを決めた…。どこで接触したのかは知らないが、仙波君ともその過程で手を組んで。
俺は由良さんが大好きで、もしも無人島に何かひとつ持っていけるならば迷わず由良さんを選ぶし、由良さんがいれば他に何もいらないと思うことすらある。
由良さんだって多分、俺のことが大好きだ。もう離したりしないと約束してくれた。
帰ったあと俺を抱きしめ何度も繰り返された“愛してる”と“離さない”の言葉だって、俺は信じていた。…信じていた、けれど。
それと同時に、由良さんに一度collarを切られた記憶が蘇ってきた。
「ごめんね、幹斗君、…何もできなくて、…でも君をもう離せなくて、ごめんね…。」
由良さんの涙を見て、今まで朦朧としていた意識が急にはっきりした。
…あれ、そういえば俺…
…そうだ、御坂に暴行された次の朝から、話すことができなくなったんだっけ…。
なぜ話すことができなかったのか。
それは、あの夜俺が眠った後に気づいた、ある恐ろしい事実のせいだった。
本当は暴行された夜に、由良さんの言葉のおかげで一度は俺の中で気持ちに決着がついていた。
壊れたように謝って意識を失ったあと、ふと目を覚ました瞬間が、一番幸せだったのだと思う。ぐっすり眠りながら俺を抱きしめる由良さんの横顔が愛しくて、その頬に口付けてお帰りなさいと微笑んだ、その瞬間が。
けれどそのあとすぐに思ったのだ。
“タイミングが良すぎる”、と。
そして連鎖的に御坂が最後に放った最後の言葉を思い出して。
“ここまですればいいだろう。”
あの言葉の意味がなんだったのだろうと考えたとき、急な寒気が押し寄せてきた。
そういえば御坂は由良さんと同じ会社に勤めていたはずで。
はっとして、起こさないように由良さんの横を抜け出し、引き出しにしまったまま存在を忘れていた名刺を取り出した。
そこにはやはり由良さんと同じ会社の社名が書かれていた。
念のためネットで彼の本名を引いてみると、彼が由良さんの直属の部下であることがわかった。
由良さんが部長で、御坂が課長。その事実が何か引っかかって、もう少し調べると彼のSNSのアカウントにたどり着いた。
“御坂理人@社長子息”。本名でやっているなんて馬鹿だ、というツッコミはひとまず置いておき、社長子息、という言葉に怯えを感じながらも彼のアカウントをクリックして。
そして一番上の投稿を見たときに、さらに嫌な予感がした。
“ああ、すっきりした。むかつく奴の大切なものを壊すのって最高に気持ちいいわ。男とか無理かもって思ってたけど、加減気にせず痛めつけられるし、顔きれいなら全然あり。”
震える手で投稿を遡っていくと、その嫌な予感はどんどん大きくなっていった。
“宝物の後輩に接触成功。仲良くなった後輩に落とされるとか最高に滾るよな。”
“あいつの宝物に接触成功。綺麗な顔してたから、あいつに捨てられたら俺が可愛がってやってもいいかな。”
“あいつまじでむかつくんだよ。みんななんであいつばっか頼るんだ。父さんも父さんだ。なんであんな奴の下に俺をおくんだ。俺のが上だ。”
漠然とした恐怖がどんどん確信に変わるとともに、泣きたい気持ちになった。
御坂は多分、由良さんが嫌いで、けれど由良さんはみんなから信頼が厚くて、だから由良さんが一番傷つく方法を探していたのだろう。
そこで念入りな計画とともに俺を傷つけることを決めた…。どこで接触したのかは知らないが、仙波君ともその過程で手を組んで。
俺は由良さんが大好きで、もしも無人島に何かひとつ持っていけるならば迷わず由良さんを選ぶし、由良さんがいれば他に何もいらないと思うことすらある。
由良さんだって多分、俺のことが大好きだ。もう離したりしないと約束してくれた。
帰ったあと俺を抱きしめ何度も繰り返された“愛してる”と“離さない”の言葉だって、俺は信じていた。…信じていた、けれど。
それと同時に、由良さんに一度collarを切られた記憶が蘇ってきた。
11
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
待てって言われたから…
ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる