贖罪のセツナ~このままだと地獄行きなので、異世界で善行積みます~

鐘雪アスマ

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第4章起業しましょう。そうしましょう

200・小説家

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「取り逃がしただと!?」

そうしてとぼとぼとアーブさんの屋敷に戻って、
事情を説明すると、
アーブさんにものすごい剣幕で怒られた。

「何のためにお前達を雇ったと思っている!!
怪盗を取り逃がし、
金の女神像もみすみす奪われるとは、
バカかお前は!!」
「すみません…」

あの時リンの過去が壮絶過ぎて、
金の女神像のことはすっかり忘れていた。

「でも怪盗はあなたに復讐すると言っていました…。
だから気をつけた方がいいと思います…」

リンのことは話そうかどうか迷ったが、結局話すことにした。

「復讐だと?」
「自分のお父さんの親友でありながら、
無実の罪を着せたあなたに復讐すると言いました」
「何だと…」

心当たりがあるのかアーブさんは目を逸らした。

「もしこの話が本当なら自首してください…」
「ふざけるな。いいかこれはただの逆恨みだ」
「逆恨み?」
「親友とはいえ、悪事は悪事だ。
罪を犯した者はさばかねばならない。
大方奴は父親が無実だと思っているようだが、真実は違う。
あやつは完全に黒だった。
だから罪を明らかにさせたまでだ。
それの何が悪い?」
「え、でも…」
「もうお前達にはとことん失望した。
依頼は失敗したとギルドに報告する。
即刻屋敷から立ち去れ、いいな?」
「分かりました…」

それ以上何も言うことが出来ずに私達は屋敷を出た。

「すっかり外が明るいですね」

今は朝の7時だ。
怪盗の話やアーブさんから説教を受けていると、
こんな時間になった。
完全に徹夜したことになる。

「セツナ…お前のエリアマップがあれば、
リンを捕まえられると思うんだが」

そうガイが言った。

「それをセツナに言うのは気の毒でしょう。
まだ迷っているのよね?」

そうエドナが言った。
その通りだった。私はまだ迷っている。
リンを捕まえていいのかどうか。

「セツナだけのせいではありませんよ。
油断して寝ていたわたくしが悪いんです。
わたくしだったら領主に変身していても、
心の声で見破れたでしょう」
「フォルトゥーナだけのせいじゃないのだ。
寝ていた私も悪いのだ」
「そんなことないですよ。全部私が悪いんです」
「いいえ、セツナ、
今回のことはあえて言うなら私達全員の心の油断が招いた結果よ」
「そうですね。最近の依頼は全部成功していたので、
油断しました」

すごいチームだと言われ、
少し、いやかなり調子に乗っていたかもしれない。
何度も大失敗しているのに調子に乗っていたということは、
私はどうも調子に乗りやすい性格なのかもしれない。

「今回のことはしっかり反省して次に繋げましょう」
「そうですね。アレ?」

その時異変に気がついた。

「何か騒がしくないですか」

そうして私は異変に気がついたのだった。





「エイベル、今になってお前の子供に苦しめられるとは…」

1人部屋でテミスの領主のアーブは呟いていた。

「くっそ、怪盗がまさか奴の子供だとは…」

そもそもリンの父のエイベルとアーブが知り合ったのは、
今から数十年前のことだった。
貴族や王族が通う学園で2人は出会った。
正義感が強く、
自分が正しいと思った時は規則を無視して進むエイベル。
規則重視で、模範生だったアーブ。
対極的な2人だったが、自然と馬が合った。
そんな2人とよく一緒にいたのがシラ。
リンの母だった。
アーブとエイベルとシラの3人は、
よく集まっては遊ぶようになっていった。
しかしそんな友情に亀裂が入ったのはシラのせいだった。
美人で気立てがよく学園の人気者だった彼女に、
アーブは次第に惹かれるようになっていった。
それはエイベルも同じだった。
しかしアーブより先に、
エイベルは告白しシラと付き合うようになった。

裏切られたとアーブはその時感じた。
シラと付き合うエイベルも、
彼を選んだシラも何もかもが憎たらしかった。
その恨みは学校を卒業した後も深く根に持った。
そして噂で2人が結婚したことを知ったアーブは行動を起こした。
無実の罪をエイベルに着せたのだ。
その結果エイベルは牢獄に送られた。
その時はざまぁみろと思った。
しかしそんな爽快感は長くは続かなかった。
復讐してアーブに訪れたのは空しさと自己嫌悪だけだった。
その感情から逃げるかのようにアーブは贅沢に逃避するようになった。
金の女神像など本当に欲しかったわけではない。
高額な買い物をすることで逃げたかったのだ。
――――友を裏切った自分という存在から。

いつしかアーブは買い物依存症になり、
屋敷には物が溢れるようになった。
それが乱雑に配置された美術品の正体である。
その姿からはかつて友に、
領民のために働きたいと言った男の姿はなかった。

「何故今になって現れるのだ!!
わしに復讐だと!?
わしの方が復讐する立場ではないか!!」

そうアーブが怒るのも無理はなかった。
かつて自分が復讐した対象の子供に復讐すると言われたのだから。

「復讐とは穏やかじゃないですね」

その時突然見知らぬ男が部屋に現れた。
黒衣の男で目に黒い布を巻いていた。

「お前は誰だ!?
どこから現れた!?」
「こんにちわ。ワタシは『小説家』という者です」
「『小説家』?」

変わった名前にアーブは眉をひそめる。

「それよりあなたは怪盗を亡き者にしたいのでは?」
「何故それを?」
「ワタシは何でも知っているのですよ。
怪盗を亡き者にしたいあなたの気持ちは実によく分かります」
「しかし怪盗は奇妙な力を持つという、
そう簡単に捕まえられるはずが…」
「あの能力には実は欠点があります」
「欠点?」
「例えば怠惰の霊符は、
本人の身の回りの魔法やスキルを無効化する力ですが、
それを使うと使用者本人も、
魔法やスキルが使えなくなるという欠点があります。
それを理解していたからクライドは、
暗殺や毒殺という方法で戦っていたのでしょう」
「?」

クライドが誰なのかアーブは知らないが、
大罪の霊符にも欠点があるということで少し安心した。

「あの強欲の霊符は本人が知っている人物の姿に変身出来るものですが、
本人の集中力が切れると変身は自動的に解除されます。
そして能力が使えるのは一日2回までです。
2回を超えると変身してから24時間経たないと再び能力は使えません。
もう怪盗は2回変身しましたから、
しばらく能力は使うことは出来ないでしょう」
「そ、そうなのか…」
「それとあなたにはこれを渡しておきましょう」

そう言うと『小説家』はお札のような物を渡した。

「これは?」
「これは魔物を召喚する呪符です。
呪符を地面に叩きつければ魔物が現れます。
現れた魔物は使用者の言うことを何でも聞きます。
あなたには必ず必要なものとなるでしょうから差し上げます」
「あ、ああ、分かった」

とりあえず目の前の男が敵か味方かは分からないが、
受け取っておくことにした。

「それではまた」

そう言って『小説家』は最初に現れた時と同じく、姿を消した。

「一体何だったんだ」

そうアーブが言った時と同時に執事が入ってくる。

「大変です! スラムの住民が暴徒と化して屋敷の前に集まってきました!!」
「何だと!!!?」

そうして過去の復讐が今追いついてきたのだった。

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