贖罪のセツナ~このままだと地獄行きなので、異世界で善行積みます~

鐘雪アスマ

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第4章起業しましょう。そうしましょう

199・怪盗の正体

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「さてそろそろですか」

そして夜の9時前、私達はみんなで客間に集まっていた。
客間のテーブルには金の女神像がある。

「これを盗むんですよね」
「そうね」

そうして待っていたのだが、
怪盗レッドベルが現れる気配はない。
3時間待ってみたが怪盗が現れることはなかった。

「来ないですね」
「そうね」

さすがに眠たくなってきたな。
思わずあくびが出る。

「すみません、寝てもいいですか?」

さすがに睡魔を我慢出来なくなったのかフォルトゥーナがそう言う。

「うん、いいよ。寝てて」
「じゃあ、おやすみなさい」

そう言ってフォルトゥーナは眠りについた。

それからさらに5時間が経つ。
こうなると起きているのは私とエドナだけだった。
イオとガイは仲良く眠っていた。

「これ朝まで待つのかな…」
「まぁ我慢しましょう」

そう想った時だった。

「おい、怪盗は来たか」

その時、この町の領主のアーブさんが現れた。

「来てません」
「おい、このケースは何だ?」

金の女神像には私が作った特別なケースの中にあった。
このケース中から女神像を取り出せば、
警報が鳴るようになっている。
それをアーブさんに説明する。

「なるほど、それならケースから、
出しても警報が鳴らないように出来るか?」
「え、出来ますけど何でですか?」
「もうこの時間だ。怪盗も諦めたに違いない。
この金の女神像は元あった場所に戻す」
「分かりました」

私はケースの警報装置を外した。

「はい、これが女神像です」

そう言って金の女神像をアーブさんに渡した。

「そうか、ありがとう」

そう言ったアーブさんは何かのカードのようなものを取り出す。
そのカードには見覚えがあった。
怠惰の霊符。それと色違いのカードだったからだ。

「それは!」
「《霊符展開、強欲の霊符よ。我に従え》」

そうアーブさんが言うと、彼の姿が変形し、
翼をもった魔物のハーピーの姿に変わる。

「じゃあな!」

そう言うとハーピーは金の女神像を持ったまま、
窓ガラスを破って屋敷の外に飛び出す。

「しまった!! あれは怪盗です!!
《飛翔!!》」

私は急いで飛翔魔法を使い、後を追いかける。

「待ちなさいーー!!」

私は猛スピードで追いかけていく。

「くっ、しつこいね!!」
「怪盗レッドベル! 待ちなさい!!」
「待てと言われて待つバカがいるか!」

そんな風に空の上で口論しつつ、
私は怪盗の足を掴んだ。

「や、止めろ! 離せ!!」
「止まりなさい!!」

そう言うと羽を掴んだ。

「止め、そんなことしたら飛べなくなる…!」

すると怪盗は急速に高度を下げていった。
それに私も引きずられる。

ぼふん!!

そして落ちた先はたまたま藁を積んでいた小屋だった。

「ぷっは、アンタなぁ!!
ふざけるなよ!!
空の上で羽を掴むなんてどれだけ危険だと思ってるんだよ!!
下手したら死ぬぞ!!」

そう怪盗はいや、リンはそう言った。

「リン…あなたが怪盗なんですか?」
「ハッ、しまった。変身が解けて…」

そうリンは自分の体を見てそう言った。

「何であなたがこんなことを…」
「はっ、アンタには分からないよ」
「どんな事情があろうと、物を盗むのはいけないことです。
そんなことをしたらご両親が悲しみま…」
「親なんていねぇよ!!!」

血を吐くような言葉だった。

「親が居ない?」
「アタシに親なんていないよ…。
2人とももう死んだ…。
あいつの…領主のせいで」
「領主? アーブさんのことですか?」
「そうだよ。あいつは最低のクズ野郎だよ。
元々はアタシの父さんの親友だったけど、
その親友を裏切って、今の地位を築いたんだ」
「どういうことです?」
「アタシはね。元は貴族なんだ。
アタシの父さんは貴族だったけど、領民のことを真に想っていた。
でもそんなお人好しだったから利用されたんだろうね。
ある日父さんは身に覚えの無い罪で捕まった。
その罪を密告したのがアーブ、今の領主なんだよ。
そのせいで…あいつのせいで、
アタシ達親子は貴族としての地位も名誉も財産も何もかも奪われ、
スラムに身を落とした」
「………」
「でも父さんは罪を犯すような人じゃなかった。
絶対にあいつが何かしたんだ。
でも世間はそんなことを許してなんてくれなかった。
犯罪者の家族として、アタシと母さんは冷たい目で見られたよ。
ゴミ、クズ、死ね、そんな言葉を何万回も投げられたよ。
父さんは結局自分の無実を証明することも出来ずに獄中で亡くなった。
母さんは病気でアタシが7歳の時に亡くなった。
なぁアタシ何か間違っている?
親友を貶めたあいつがのうのうと暮らしていて、
アタシだけが不幸になるなんて、
間違っているのはこの世界だと思わないかい?」
「………」

何か言葉をかけようとして結局何の言葉も出なかった。
日本という平和な場所で暮らした私からは考えられない程、
壮絶な人生だったからだ。

「でもいくらスラムの人のためとはいえ、
物を盗むのは…」

結局出た言葉は言い訳めいたものだった。

「アンタ何か勘違いしてない?。
アタシがクズばかりのスラムの人間のために危険を冒すわけないだろ」
「え、だったら何のために?」
「それは秘密さ。でもアタシは絶対に復讐する。
あの男に思い知らせてやるんだ」
「で、でも復讐なんてきっとあなたのお母さんが望んでません!」
「何言ってるの?
アタシに復讐しろって言ったのは母さんだよ」
「え!?」

あまりに意外な言葉だった。
母親は子供の幸せを祈るものだと思っていた。
それが復讐を願うなんて明らかにおかしい。

「必ず、必ずあの男に復讐しなさい。
そう言ったのは紛れもなく母さんだったよ。
だからアタシは復讐する。
必ずあの男に復讐するんだ。
だから邪魔をするなよ!」

そう言うとリンは何かの煙幕のような物を放った。

「ごほっ、ごほっ」

その煙幕が消えた時、リンの姿はもう消えていた。

「リン…。どうしたら…」

私のそんな呟きが闇の中に消えた。

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