363 / 424
第十五章 試練
7-2 動き出した歯車
しおりを挟む
「いえ、試練の途中で危険と判断したレイデューク様の思念体が強制的に連れ戻したのですわ。何故、そのような事になってしまったのかというと、リュセル様が異世界還りなのが原因だとおっしゃっていました。帰郷の念に捕らわれたら、異世界への干渉が出来ないこの世界の神であるレイデューク様ではどうにも出来ないと……。初めてのケースらしくて、現在リュセル様の試練は保留状態になっていますの」
保留状態。最悪の事態は免れたが、どのようにして現状を突破すればいいのか全く分からない。
「困りましたね。俺だけこんな状態では……」
ふうとため息をつくリュセルを見つめ、ティアラは慰めるように言った。
「試練に失敗した訳ではないので、まだリュセル様の中に試練は留まっている状態なのだそうですわ。現状を打破出来る方法が見つかれば、試練の迷宮内でなくても試練は起こりえるそうです。ただ、急に始まるかもしれないので、試練の最中だという事に気づけるかどうかが難しいかもしれません」
「そうですか」
再チャレンジ出来るなら良かった。
完全に失敗してしまったのなら無理なのだろうが、リュセルの場合、試練を与えた本人が試練を途中停止させた為、そのような特別措置をとってくれたのだろう。
「それにしても、帰郷の念ですか。向こうの世界(異世界)の事は、もうよく覚えていないのですけれどね。それでも、心のどこかにそんなものがあったという事なのでしょうか……」
ここではないどこかを見るような、ぼんやりとした目でそう言うリュセルに、ティアラは何も言う事が出来ない。この世界で生まれ育ち、そして、この世界で生きて死んでいくティアラには、理解したくても出来ない事だからだ。
「あれ? そういえば、レオンはどこにいるんです?」
リュセルはそこでようやく自分の半身の事を思い出して、周囲を見回した。
どこかに行っているのだろうか?
リュセルの疑問にティアラは朱金色をした眉をしかめ、何かを憂うような目をする。
「何かあったのですか?」
「ええ。レオンハルト様とお姉様は、フェンリル・アシェイラ様と共に、ドラゴンの森に向かわれました」
ティアラの話すその内容は、起き抜けのリュセルに衝撃を与えるに十分な内容だった。
*****
その夜、神官巫女達の聖地、セイントクロス神殿本部に激震が走った。
ドラゴンの末裔達を警戒し、ドラゴンの森の見張りに当たっていた神官が二名、行方が分からなくなったのだ。
行方不明になったのは、本部までサンジェイラの神子達を導き、連れて来た神官。サンジェイラ支部の神官長とその補佐である。
十数名程の護衛官達とチームを組み、大神官の指示の下、森の様子を見守っていたのだが、いきなり現れた金竜(ゴールドドラゴン)に連れ去らわれたらしい。
彼らを連れ去ったドラゴンの末裔達の要求は唯(ただ)一つ。
”ライサン一人でドラゴンの森に出向く事”
一族の仇(ディエラ)の生まれ変わり。一族再興の鍵を握るミラの子孫を手に入れる為に邪魔な存在。
ドラゴンの末裔達、ジルとベルの要求に従えば、ライサンの命がない事は考えずとも分かった。リュカ老師を含めた大神官三人とアシェイラやユリエ、それに彼を心配する他の神官や巫女達、皆が全力でライサンを引き止め、どこにも行かぬよう閉じ込めもしたのだ。
しかし、見張りの目を掻い潜り、ライサンは姿を消してしまった。
一人で決着をつけに行ったのである。
「なんでこんな事になっているんだ!?」
急いで皆が集まっているという中央にある会議室に赴いたリュセルは、額を片手で押さえながら呻き声を上げた。
会議室に集まっていたのは、三人の大神官とデイエラ支部の巫女姫、巫女姫補佐、アシェイラ支部神官長補佐であるルーク、そして、ローウェンとアルティス、ユリエである。
神殿を出たというライサンを追って行ったレオンハルトとジュリナの姿は、当然ここにはない。
「あなた達が扉の向こうに入る前から、彼らから要求は来ていたのよ」
眉根を寄せ、固い表情をしたユリエは、そう言ってため息をつく。
「ディエラ……、セリクス神官長は、大神官様方の命令もあり、ずっとそれらを無視していたのだけれど、今回の事で出て行かざるを得なくなったのでしょうね」
他者に実害が出た以上、いくら大神官の命令があるとはいえ、神殿内で大人しく守られている訳にはいかなくなったのだ。
「今、剣主様と鏡主様、それに、アシェイラ様がライサンを探しに向かっておる。きっと……きっと、大丈夫じゃ」
祈るように呟くリュカ老師の手を、隣に立つ初老の女性がそっと握った。
「リュカ様……」
「すまぬ、エルディナ。わしは少々混乱しておる」
「無理もありませんわ」
ディエラ支部の大巫女であるエルディナは、気遣わしげな眼差しをリュカ老師に向けつつ、もう一人の大神官に言った。
「アルスター、ゲート神官長からの報告を神子様方にお話して下さい」
現在、各国の情報収集と混乱する神殿内の正常化に向け奔走している本部の神官長からの報告を、アルスターはリュセル達に告げる。
「まず、神子様方がいなかった三日間の出来事ですが、アシェイラ国、ディエラ国、サンジェイラ国共に異常はありません。邪鬼からの干渉もないそうです。ご存じの通り、異常があったのは、この本部内。ドラゴン達が本格的に我らに牙を剥き始めました。目的は、セリクス神官長の命…………。それと」
アルスターの切れ長の瞳が、リュカ老師の後ろに立つ真っ青な顔色のルークに向けられる。それだけでリュセル達はすべてを悟った。
「ねえ、やっぱりドラゴンって、強いのかな? 鍵のいないレオンハルト兄さんとジュリナ姉さんだけで大丈夫?」
ローウェンが不安そうな眼差しを、傍らに立つアルティスに向ける。
「わからぬ。しかし、レオンハルト殿もジュリナ殿も、我らはここに残るようにと言っておったし、女神の武器を発動させるつもりはないのだろう」
「で、ででで、でも、相手はドラゴンなんだよ!?」
兄の言葉に反論するようにそう言うと、ローウェンは不安そうな視線をリュセルに向けた。その目線に頷くと、リュセルは静かに言った。
「レオンとジュリナ殿は大丈夫だ。彼らは、俺達(女神の子供)に悪意を抱いていない。自分達の邪魔をされれば反撃してくるとは思うが、こちらが何もしない限り何もしては来ないだろう。…………問題は、”ディエラ”だ」
あえてライサンを”ディエラ”と呼んだリュセルは、苦虫を噛みしめたような顔で告げる。
「彼は、森に死にに行ったようなものだぞ」
こんな無茶をするような人だったとは知らなかった。そんなイメージのある人ではなかったからだ。しかし、ライサンの気持ちも分かる気がした。我慢しきれなかったのだろう。彼(ライサン)は、自分の事で他人が傷つくのを黙って静観出来る人ではない。
「とにかく、アシェイラ様達のお帰りを神子様方はお待ち下さい」
アルスターのその言葉を最後に、一旦その場は解散になった。
それは、いつの事だっただろうか……。
いつものようにあの男の後を追い、いつものようにあの男を見つけた。仕事をさぼってはのんびりと空を見上げていた彼に、いつものように怒鳴り散らしていた時だ。
「ねえ、ルーク」
抜けるような青空を見上げて、彼は微笑んでいた。
「空が青いですねぇ」
そんな事をのん気に言うものだから、自分は更に頭に血を上らせて「空が青いのは当たり前だッ!」と相手の脛に蹴りを入れたのだ。
彼は部下の暴行にも、ただ笑っているだけだった。そして、言ったのだ。
「この世界は、とても美しい」
目を細め、まるで眩しいものを見つめるかのように世界を見ていた。
知っていたからだ。
この美しい世界を手に入れる為に、何を犠牲にし、何を切り捨てたかを……。
赤黒く燃える空を知っていた。
焦土と化した大地を知っていた。
人々の流される血と悲哀に満ちた嘆きを知っていた。
だからずっと、愛おしいものを見るように世界を見、それと同時に、己の犯した罪と向き合い続けてきたのだ。
逃げるつもりはないと言っていた。これからも背負っていくと……。あんなに不真面目な仕事態度だったというのに、何をいきなり真面目ぶっているんだ。
ルークはそう考えながらも、今まで曖昧にしてきた自分の気持ちを自覚する。
自分の道は決まった。
いや、考える時間など、本当はいらなかった。
決まっていた。ずっとずっと前から決まっていたのだ。
極寒のサンジェイラ国で、あの暖かな手を握った時に…………。
「…………」
ルークは自分に用意された部屋で無言のまま支度を済ませると、なるべく音を立てないようにしながら外に出た。扉を出たすぐそこでは、一人の神官が座り込んで居眠りをしている。
「まさか、使う事になるとはな」
アシェイラ支部を発つ前にリチャードから餞別として渡された眠り薬。一体何しに本部に行くと思っているんだと叱り飛ばしたのだが、もらっておいて正解だったようだ。自分につけられた見張りの神官を眠らせる事に役立とうとは、あの時のルークは考えもしなかった。
廊下を見回すが、自分につけられた見張りは、この神官一人だったらしく、他に人影は見当たらない。勤めていた期間を考えると、アシェイラ支部で神官長補佐として働いていた期間よりも、本部勤めをしていた期間の方が長かった。その為、どのようにして行けば神殿の入口にまで人目を避けて辿り着けるのか、そして、どうしたら見張りの多い橋を渡らずに森へと渡れるのか、そのやり方も知っている。
両方共、昔、ライサンに教わったのだ。
おそらく、彼もそれを使って神殿を抜け出たのだろう。それ故に、神殿を出て行く彼の姿は誰も見ていないのである。
危険なのは承知の上。それもこれからする事は、重大な命令違反だ。自分は神官の籍を剥奪されるかもしれない。自分を育て育んでくれた恩人の顔に泥を塗る事になるかもしれない行為。
それでも、行かねばならない。
最低限の荷物をショルダーバックに積め、部屋を抜け出したルークは、ライサンと同じように神殿を抜け出すつもりだった。
そうして意を決して歩き始めたルークの背に、それは唐突にかかった。
保留状態。最悪の事態は免れたが、どのようにして現状を突破すればいいのか全く分からない。
「困りましたね。俺だけこんな状態では……」
ふうとため息をつくリュセルを見つめ、ティアラは慰めるように言った。
「試練に失敗した訳ではないので、まだリュセル様の中に試練は留まっている状態なのだそうですわ。現状を打破出来る方法が見つかれば、試練の迷宮内でなくても試練は起こりえるそうです。ただ、急に始まるかもしれないので、試練の最中だという事に気づけるかどうかが難しいかもしれません」
「そうですか」
再チャレンジ出来るなら良かった。
完全に失敗してしまったのなら無理なのだろうが、リュセルの場合、試練を与えた本人が試練を途中停止させた為、そのような特別措置をとってくれたのだろう。
「それにしても、帰郷の念ですか。向こうの世界(異世界)の事は、もうよく覚えていないのですけれどね。それでも、心のどこかにそんなものがあったという事なのでしょうか……」
ここではないどこかを見るような、ぼんやりとした目でそう言うリュセルに、ティアラは何も言う事が出来ない。この世界で生まれ育ち、そして、この世界で生きて死んでいくティアラには、理解したくても出来ない事だからだ。
「あれ? そういえば、レオンはどこにいるんです?」
リュセルはそこでようやく自分の半身の事を思い出して、周囲を見回した。
どこかに行っているのだろうか?
リュセルの疑問にティアラは朱金色をした眉をしかめ、何かを憂うような目をする。
「何かあったのですか?」
「ええ。レオンハルト様とお姉様は、フェンリル・アシェイラ様と共に、ドラゴンの森に向かわれました」
ティアラの話すその内容は、起き抜けのリュセルに衝撃を与えるに十分な内容だった。
*****
その夜、神官巫女達の聖地、セイントクロス神殿本部に激震が走った。
ドラゴンの末裔達を警戒し、ドラゴンの森の見張りに当たっていた神官が二名、行方が分からなくなったのだ。
行方不明になったのは、本部までサンジェイラの神子達を導き、連れて来た神官。サンジェイラ支部の神官長とその補佐である。
十数名程の護衛官達とチームを組み、大神官の指示の下、森の様子を見守っていたのだが、いきなり現れた金竜(ゴールドドラゴン)に連れ去らわれたらしい。
彼らを連れ去ったドラゴンの末裔達の要求は唯(ただ)一つ。
”ライサン一人でドラゴンの森に出向く事”
一族の仇(ディエラ)の生まれ変わり。一族再興の鍵を握るミラの子孫を手に入れる為に邪魔な存在。
ドラゴンの末裔達、ジルとベルの要求に従えば、ライサンの命がない事は考えずとも分かった。リュカ老師を含めた大神官三人とアシェイラやユリエ、それに彼を心配する他の神官や巫女達、皆が全力でライサンを引き止め、どこにも行かぬよう閉じ込めもしたのだ。
しかし、見張りの目を掻い潜り、ライサンは姿を消してしまった。
一人で決着をつけに行ったのである。
「なんでこんな事になっているんだ!?」
急いで皆が集まっているという中央にある会議室に赴いたリュセルは、額を片手で押さえながら呻き声を上げた。
会議室に集まっていたのは、三人の大神官とデイエラ支部の巫女姫、巫女姫補佐、アシェイラ支部神官長補佐であるルーク、そして、ローウェンとアルティス、ユリエである。
神殿を出たというライサンを追って行ったレオンハルトとジュリナの姿は、当然ここにはない。
「あなた達が扉の向こうに入る前から、彼らから要求は来ていたのよ」
眉根を寄せ、固い表情をしたユリエは、そう言ってため息をつく。
「ディエラ……、セリクス神官長は、大神官様方の命令もあり、ずっとそれらを無視していたのだけれど、今回の事で出て行かざるを得なくなったのでしょうね」
他者に実害が出た以上、いくら大神官の命令があるとはいえ、神殿内で大人しく守られている訳にはいかなくなったのだ。
「今、剣主様と鏡主様、それに、アシェイラ様がライサンを探しに向かっておる。きっと……きっと、大丈夫じゃ」
祈るように呟くリュカ老師の手を、隣に立つ初老の女性がそっと握った。
「リュカ様……」
「すまぬ、エルディナ。わしは少々混乱しておる」
「無理もありませんわ」
ディエラ支部の大巫女であるエルディナは、気遣わしげな眼差しをリュカ老師に向けつつ、もう一人の大神官に言った。
「アルスター、ゲート神官長からの報告を神子様方にお話して下さい」
現在、各国の情報収集と混乱する神殿内の正常化に向け奔走している本部の神官長からの報告を、アルスターはリュセル達に告げる。
「まず、神子様方がいなかった三日間の出来事ですが、アシェイラ国、ディエラ国、サンジェイラ国共に異常はありません。邪鬼からの干渉もないそうです。ご存じの通り、異常があったのは、この本部内。ドラゴン達が本格的に我らに牙を剥き始めました。目的は、セリクス神官長の命…………。それと」
アルスターの切れ長の瞳が、リュカ老師の後ろに立つ真っ青な顔色のルークに向けられる。それだけでリュセル達はすべてを悟った。
「ねえ、やっぱりドラゴンって、強いのかな? 鍵のいないレオンハルト兄さんとジュリナ姉さんだけで大丈夫?」
ローウェンが不安そうな眼差しを、傍らに立つアルティスに向ける。
「わからぬ。しかし、レオンハルト殿もジュリナ殿も、我らはここに残るようにと言っておったし、女神の武器を発動させるつもりはないのだろう」
「で、ででで、でも、相手はドラゴンなんだよ!?」
兄の言葉に反論するようにそう言うと、ローウェンは不安そうな視線をリュセルに向けた。その目線に頷くと、リュセルは静かに言った。
「レオンとジュリナ殿は大丈夫だ。彼らは、俺達(女神の子供)に悪意を抱いていない。自分達の邪魔をされれば反撃してくるとは思うが、こちらが何もしない限り何もしては来ないだろう。…………問題は、”ディエラ”だ」
あえてライサンを”ディエラ”と呼んだリュセルは、苦虫を噛みしめたような顔で告げる。
「彼は、森に死にに行ったようなものだぞ」
こんな無茶をするような人だったとは知らなかった。そんなイメージのある人ではなかったからだ。しかし、ライサンの気持ちも分かる気がした。我慢しきれなかったのだろう。彼(ライサン)は、自分の事で他人が傷つくのを黙って静観出来る人ではない。
「とにかく、アシェイラ様達のお帰りを神子様方はお待ち下さい」
アルスターのその言葉を最後に、一旦その場は解散になった。
それは、いつの事だっただろうか……。
いつものようにあの男の後を追い、いつものようにあの男を見つけた。仕事をさぼってはのんびりと空を見上げていた彼に、いつものように怒鳴り散らしていた時だ。
「ねえ、ルーク」
抜けるような青空を見上げて、彼は微笑んでいた。
「空が青いですねぇ」
そんな事をのん気に言うものだから、自分は更に頭に血を上らせて「空が青いのは当たり前だッ!」と相手の脛に蹴りを入れたのだ。
彼は部下の暴行にも、ただ笑っているだけだった。そして、言ったのだ。
「この世界は、とても美しい」
目を細め、まるで眩しいものを見つめるかのように世界を見ていた。
知っていたからだ。
この美しい世界を手に入れる為に、何を犠牲にし、何を切り捨てたかを……。
赤黒く燃える空を知っていた。
焦土と化した大地を知っていた。
人々の流される血と悲哀に満ちた嘆きを知っていた。
だからずっと、愛おしいものを見るように世界を見、それと同時に、己の犯した罪と向き合い続けてきたのだ。
逃げるつもりはないと言っていた。これからも背負っていくと……。あんなに不真面目な仕事態度だったというのに、何をいきなり真面目ぶっているんだ。
ルークはそう考えながらも、今まで曖昧にしてきた自分の気持ちを自覚する。
自分の道は決まった。
いや、考える時間など、本当はいらなかった。
決まっていた。ずっとずっと前から決まっていたのだ。
極寒のサンジェイラ国で、あの暖かな手を握った時に…………。
「…………」
ルークは自分に用意された部屋で無言のまま支度を済ませると、なるべく音を立てないようにしながら外に出た。扉を出たすぐそこでは、一人の神官が座り込んで居眠りをしている。
「まさか、使う事になるとはな」
アシェイラ支部を発つ前にリチャードから餞別として渡された眠り薬。一体何しに本部に行くと思っているんだと叱り飛ばしたのだが、もらっておいて正解だったようだ。自分につけられた見張りの神官を眠らせる事に役立とうとは、あの時のルークは考えもしなかった。
廊下を見回すが、自分につけられた見張りは、この神官一人だったらしく、他に人影は見当たらない。勤めていた期間を考えると、アシェイラ支部で神官長補佐として働いていた期間よりも、本部勤めをしていた期間の方が長かった。その為、どのようにして行けば神殿の入口にまで人目を避けて辿り着けるのか、そして、どうしたら見張りの多い橋を渡らずに森へと渡れるのか、そのやり方も知っている。
両方共、昔、ライサンに教わったのだ。
おそらく、彼もそれを使って神殿を抜け出たのだろう。それ故に、神殿を出て行く彼の姿は誰も見ていないのである。
危険なのは承知の上。それもこれからする事は、重大な命令違反だ。自分は神官の籍を剥奪されるかもしれない。自分を育て育んでくれた恩人の顔に泥を塗る事になるかもしれない行為。
それでも、行かねばならない。
最低限の荷物をショルダーバックに積め、部屋を抜け出したルークは、ライサンと同じように神殿を抜け出すつもりだった。
そうして意を決して歩き始めたルークの背に、それは唐突にかかった。
0
あなたにおすすめの小説
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
【3/11書籍発売】麗しの大公閣下は今日も憂鬱です。
天城
BL
【第12回BL大賞 奨励賞頂きました!ありがとうございます!!3/11に発売になります、よろしくお願いします!】
さえないサラリーマンだったオジサンは、家柄・財力・才能と類い稀なる美貌も持ち合わせた大公閣下ルシェール・ド・ヴォリスに転生した。
英雄の華々しい生活に突然放り込まれて中の人は毎日憂鬱だった。腐男子だった彼は知っている。
この世界、Dom/Subユニバースってやつだよね……。
「さあ気に入ったsubを娶れ」
「パートナーはいいぞ」
とDomの親兄弟から散々言われ、交友関係も護衛騎士もメイド含む屋敷内の使用人全てがSubで構成されたヴォリス家。
待って待って情報量が多い。現実に疲れたおっさんを転生後まで追い込まないでくれ。
平凡が一番だし、優しく気立のいいsubのお嫁さんもらって隠居したいんだよ。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる