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第六章 北の神童
4-3 アシェイラ城厨房立てこもり事件(完結編)③
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ローウェンは、倒れたマイクの体に鎖を巻きつけて、身動きをとれない様にしながら怒鳴ると、抱き合うアシェイラの剣主剣鍵コンビをビシッと指差した。
うっかりと、ここしばらく触れていなかった愛しい熱に触れてしまったのが、そもそもの間違いだったのだろう。
そこが、親兄弟の目の前だという事を忘れて、兄の与えてくれる口づけに酔いそうになったリュセルは、レオンハルトの背中に手を伸ばすと、その胡桃色の長い髪を思いきり引っ張った。
「!?」
痛みに眉をしかめて自分を解放したレオンハルトに対し、怒りが込み上げてくる。
「こんな時に何をするんだ!?」
眦を上げて怒鳴りつけてくる弟に首を傾げながら、レオンハルトはいつものように、抑揚のない声で答えた。
「ローウェンの意識を逸らせるかと思ったのでね。成功して良かったじゃないか」
(そりゃあ、逸らせるだろうさ。いきなり目の前で男同士のキスシーンが展開されればな!)
リュセルは顔を引きつらせると、生粋の王族らしく、常識が軽く欠如している感のあるレオンハルトに疲れを覚えた。結果的に、意識を逸らすだけでなく、正気にまで返す事が出来て、そりゃあ、万々歳なのだが……
(納得いかん)
リュセルはそう思いながら、目の前の兄の、典雅なる美貌を睨み続けた。
レオンハルトはというと、恨みがましいリュセルの視線を軽く無視し、ローウェンに蹴り飛ばされて倒れ臥していたジェイドに声をかけた。
「ご無事ですか? 父上」
(そうだ!)
レオンハルトの声を聞いたリュセルは、そこでようやく、人質にとられていた父王の事を思い出した。(ひどい)
「父上!」
カイルーズに支えられて立ち上がったジェイドは、ふんどし一丁という寒々しい姿のまま、リュセルに向かって両手を広げた。
「息子よ~~~~~! さあ、パパの胸の中に飛び込んでおいで!」
帰国を心待ちにしていた末の王子の無事な姿。それを見て感極まったかのように、真っ裸(ふんどし一丁)で自分に向かって両手を広げたジェイドの元へと、心持ちゆっくりとリュセルは駆け寄った。
「父上~~~~!」
「リュセル!」
二人の背後に、高波とオレンジ色の夕日を垣間見たローウェンは、なんとなく感動していた。
……が
「この、馬鹿親父っ!」
ジェイドに駆け寄ったリュセルは、裸の父王に見事なるボディーブローを決めたのだった。
「ぐ……、ぐほっ」
倒れかけた父親の体を、カイルーズは後ろから抱えると、リュセルに言った。
「さあ、存分にやりなよ。ちなみに、僕の分も残しておいてね」
「ふっ、任せておけ」
両手をごきごきと鳴らしながら、自分に迫って来る末息子を見つめ、ジェイドは能天気な顔をわずかに引きつらせた。
「パパ……、い、痛いのは、嫌だなぁ」
「どれだけの人達に心配かけたと思っているんですかッ」
「ごめんよ~」
情けない声を上げるジェイドの姿を横目に見つつ、レオンハルトは、マイクを縛り上げているローウェンに手を貸した。
「大丈夫か?」
「僕を誰だと思ってるの?」
マイクを鎖で器用に縛り付けたローウェンが、鼻をつんっとそびやかして、生意気そうにそう言うのを隣で聞いていたレオンハルトは、無言のまま、彼の頭をポンポンっと軽く叩いた。
「?」
今まで、誰にも、そんな風に優しく頭を叩かれた事のなかったローウェンは、レオンハルトの行動に軽く目を見張った。
感情のあまり表れないその琥珀の瞳が、ローウェンの右の蒼い瞳を、真っすぐに見つめている。
「レオンハルト兄さん?」
うっかりと、ここしばらく触れていなかった愛しい熱に触れてしまったのが、そもそもの間違いだったのだろう。
そこが、親兄弟の目の前だという事を忘れて、兄の与えてくれる口づけに酔いそうになったリュセルは、レオンハルトの背中に手を伸ばすと、その胡桃色の長い髪を思いきり引っ張った。
「!?」
痛みに眉をしかめて自分を解放したレオンハルトに対し、怒りが込み上げてくる。
「こんな時に何をするんだ!?」
眦を上げて怒鳴りつけてくる弟に首を傾げながら、レオンハルトはいつものように、抑揚のない声で答えた。
「ローウェンの意識を逸らせるかと思ったのでね。成功して良かったじゃないか」
(そりゃあ、逸らせるだろうさ。いきなり目の前で男同士のキスシーンが展開されればな!)
リュセルは顔を引きつらせると、生粋の王族らしく、常識が軽く欠如している感のあるレオンハルトに疲れを覚えた。結果的に、意識を逸らすだけでなく、正気にまで返す事が出来て、そりゃあ、万々歳なのだが……
(納得いかん)
リュセルはそう思いながら、目の前の兄の、典雅なる美貌を睨み続けた。
レオンハルトはというと、恨みがましいリュセルの視線を軽く無視し、ローウェンに蹴り飛ばされて倒れ臥していたジェイドに声をかけた。
「ご無事ですか? 父上」
(そうだ!)
レオンハルトの声を聞いたリュセルは、そこでようやく、人質にとられていた父王の事を思い出した。(ひどい)
「父上!」
カイルーズに支えられて立ち上がったジェイドは、ふんどし一丁という寒々しい姿のまま、リュセルに向かって両手を広げた。
「息子よ~~~~~! さあ、パパの胸の中に飛び込んでおいで!」
帰国を心待ちにしていた末の王子の無事な姿。それを見て感極まったかのように、真っ裸(ふんどし一丁)で自分に向かって両手を広げたジェイドの元へと、心持ちゆっくりとリュセルは駆け寄った。
「父上~~~~!」
「リュセル!」
二人の背後に、高波とオレンジ色の夕日を垣間見たローウェンは、なんとなく感動していた。
……が
「この、馬鹿親父っ!」
ジェイドに駆け寄ったリュセルは、裸の父王に見事なるボディーブローを決めたのだった。
「ぐ……、ぐほっ」
倒れかけた父親の体を、カイルーズは後ろから抱えると、リュセルに言った。
「さあ、存分にやりなよ。ちなみに、僕の分も残しておいてね」
「ふっ、任せておけ」
両手をごきごきと鳴らしながら、自分に迫って来る末息子を見つめ、ジェイドは能天気な顔をわずかに引きつらせた。
「パパ……、い、痛いのは、嫌だなぁ」
「どれだけの人達に心配かけたと思っているんですかッ」
「ごめんよ~」
情けない声を上げるジェイドの姿を横目に見つつ、レオンハルトは、マイクを縛り上げているローウェンに手を貸した。
「大丈夫か?」
「僕を誰だと思ってるの?」
マイクを鎖で器用に縛り付けたローウェンが、鼻をつんっとそびやかして、生意気そうにそう言うのを隣で聞いていたレオンハルトは、無言のまま、彼の頭をポンポンっと軽く叩いた。
「?」
今まで、誰にも、そんな風に優しく頭を叩かれた事のなかったローウェンは、レオンハルトの行動に軽く目を見張った。
感情のあまり表れないその琥珀の瞳が、ローウェンの右の蒼い瞳を、真っすぐに見つめている。
「レオンハルト兄さん?」
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