【宝の鍵~金の王子と銀の王子~】本編 元平凡女性のイケメン王子は執着心強めな兄に溺愛される

月城はな

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第十章 盲目の神官

6-2* 半身への執着

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 しなやかな若木のような体を腕に抱いたまま、後腔の震える粘膜の中へと指を突き入れる。

「あっ……、ぁあああっ、……レオン、ッレオン」

 リュセルは甘く啼きながら、目の前のレオンハルトの腕に縋って体を震わせた。膝立ちになって脚を広げたリュセルの下肢から、ぐちゅぐちゅという淫猥な音が絶え間なく耳に響く。

 後腔を犯すレオンハルトの指が次第に増やされていき、せつない程に内部をかき乱す。焦らすように綻ばせるように、執拗な程。

「嫌だ、ぁ……あ、挿れてッ……早く、もぅ、嫌だッ」

 そうして、いつものように啼きながらリュセルはそれを口にしてしまう。

「…………」

 自分を見つめる琥珀の瞳の持ち主に哀願する。

「頼む……から、兄さッぁ、……ッぁあああ」

 熱く熟んだ兄の琥珀の色に発情した自分の顔が映し出されたかと思ったら、腰を強引に抱き寄せられた。

 下から串刺しに貫かれたリュセルは、熟れた体内をレオンハルトの形に押し開かされ、啼きながら目の前のたくましい体に縋る。一気に奥深くまで呑み込まされ、リュセルは体を痙攣させながらその衝撃に耐えていた。挿れられただけで達きそうだったのだ。

「ひっひぅ、……ッあ、レオン…………ッ」

 草の上に座った兄と向かい合うような形で兄のものを受け入れたリュセルは、すぐに甘い喘ぎ声を上げて熱を追う為に自分から腰を揺らす。絶頂の頂がすぐそこに在った。

 その甘い締め付けに苦笑を洩らしながら、レオンハルトはすぐに高みに向かおうとする弟の腰に手を添えてそれを抑える。

「そんなに急くな、もっとゆっくりと味わいなさい」

 ゆっくりと内(なか)を、それこそ味わうようにかき雑ぜられ、リュセルはヒクっと小さく喉を鳴らした。挿入までの前戯のようなしつようさで、自分を苛むつもりなのが丸分かりだったのだ。

 そんな欲情して潤んだ弟の銀色の瞳を見つめ返しながら、レオンハルトは甘い声でささやく。

「お前の中は熱いな……蕩けそうだ」

 熱に浮かされたような言葉に、リュセルは羞恥で顔を赤く染め、添えた兄の肩に爪をたてた。

 まるで傾国の美姫のような美麗な顔に優しさと甘さをにじませた微笑を浮かべて、下から自分を焦らすような緩慢な動きで攻め立てる兄の姿を見つめる。その時、一瞬、脳裏をシャノンの記憶の中に感じた熱の感じられない人形のような冷たいレオンハルトの姿がよぎった。

 あの男娼の中にあった、記憶と違い過ぎる兄の姿に混乱してしまう。

 人形のようだった記憶の中の兄と違い、今目の前でリュセルを翻弄している兄は、確かに血の通った熱い男だった。

「読みたいなら、読んで感じてみるがいい。私の記憶を」

 弟の考えがわかったのか、レオンハルトは小刻みに震える目の前の若い肌を愛撫しながら、それを口にする。

「は……あっあ、ぁ……あ、ぁんッ」

 ゆっくりと下から突き上げられながら、切なく喘いだリュセルが意識を集中するまでもなく、その記憶と感情はたやすく触れた肌を伝って流れこんできた。

「あっあああああぁ、レオ……、レオンっ」

 瞬間、リュセルはその激しさに悲鳴を上げる。

 初めて感じた兄の激情は、一瞬とはいえ、リュセルの意識を途切れさせるのに十分なものだったのだ。



 この世に産まれ落ちた瞬間から、その存在のみを求め、失われた時は狂気に陥った。


 そのまま、まだ見ぬ半身のみを求め、愛した。


 幼い頃は理不尽な運命に怒り、本当だったら最も傍でその成長を見守る事が出来たであろう半身の姿を無駄と思いつつも、常に探していた。
 
 初めて陰の日を迎えてからは、多くの人間を抱きながらも、ずっと彼ら(彼女ら)の後ろに失われた半身を見ていた。

 狂おしいまでの半身への執着と、恐ろしいまでの激情を隠す為、自分を抑える術を身につけていたのに気付いたのは、いつの頃の事だったか……。

 決して感情を表さず、どんな事にも冷静にどんなものにも冷酷になる。氷の王子と呼ばれるようになろうとも、ただ一人のみを求め続ける。


 欲しいのは、たった一人だけ。

 この腕に抱きたいのは、ただ一人だけ。

 それまでは、ただ生きる。

 例え、世界のすべてが意味のないものでも、その日が訪れるのを待つ。

 ただ、出会える事だけを信じて……。



 激しい。

 激し過ぎる感情、激情。

 それを感知したリュセルは、それだけで達ってしまったのだった。



「……っは……あ、兄さ…………っぁ……」

 リュセルは垣間見たレオンハルトの記憶の感情から意識を取り戻すと、熱い息を吐いて、目の前の兄をその目に映そうとする。

 感知能力使用による絶頂という、普通なら考えられない達し方をしたリュセルの視界は、衝撃のあまり、しばらくぼやけていた。

「大丈夫か?」

 ようやく視界が開けると、いつの間に押し倒され組み伏せられたのか、兄の金色の瞳は真っすぐに自分を見下ろしていた。

 草の上に敷かれた羽織りの上に横たえられていた為、背中に土の感触はない。

「あ……」

 感知能力の使用から弟の意識が逸れていた間、動きを止めていたらしい兄自身は、自分の身の内でその存在を主張していた。

「まだ疑うかい? 私の愛を」

 低いその声に、リュセルは愛おしさとせつなさと、狂おしいまでの想いの残り香を感じ、頬を涙で濡らしながら緩く頭を振った。

 あまりの衝撃に、声が出なかったのだ。

 その様子を見たレオンハルトは、口の端をわずかに上げて小さく笑う。

「さあ、ご褒美だよ」

 妖艶なその微笑と共に再開された突き上げは、先程までの焦らすような緩慢な動きではなく、想いの強さを伝えるかのような激しさだった。

「や、やっ……まだ、や、ぁーーーあ、ぁぁああッ」

 拒絶の言葉とは裏腹に、達ったばかりだというのにそれを待ち望んでいたリュセルの体は悦びに震え、淫ら過ぎる兄の動きに歓喜し、答えようとするのを抑制できない。もっと深くと求めるのを止める事など出来なかった。

 唇から出るのは、荒い息と甘い喘ぎ声だけ。

 狂気すら孕んだ、深過ぎるレオンハルトの感情に恍惚となりながら、リュセルは言葉を発する事も出来ずに、兄のたくましい背に爪をたてる。

 彼だけではない……。

 これは、彼のみの狂気ではない。

 この執着は、自分自身のものでもある。

 まるで半身とは、己の影を映しだす鏡のようだ。

 レオンハルトの自分に対する独占欲や支配欲、激しい執着は、確かにリュセルの中にもあったのだ。兄にのみ向けた強いそれは、きっとこの先、持て余す事になるであろう。

(何故だ。レイデューク……)

 どうしても、わからない。

(母上……何故、どうして、俺達を二つに分けた…………)

 切ない想いに支配されながら、一晩中、それこそ一つに溶け合おうとでもいうように何度も抱き合った二人であったが、リュセルが意識を失う頃には、彼がかすかに感じ取っていた闇の気配はなくなっていた。
 
 リュセル自身の隠されていた影の感情が抑制不可能な程謙虚に表れたのは、この微弱過ぎる闇の影響が強い。

 そんな、人でもない邪鬼でもないその闇の視線は、兄の口づけを乞うリュセルをただ見つめ続けている……。

 熱のないその視線は、まるで監視するかのようだった。



 ー哀れな子ー



 どこからか、嘆き哀しむ母の声が聞こえる。

 ーあの子は、知っておるのだろうか。気づいておるのだろうか……ー

 誰の事を言っているんだ?

 ー人でもない、邪鬼でもない、その挟間に生きる者。その宿命に産まれ落ちた者の、なんと哀しいことか。…………先程、心の内で叫んでおったな。”どうして俺達を二つに分けた?”と。お前は、どうしてだと思うのだ? 吾子ー

 わからない。

 ー互いを支え合う為だ。スノーの妄執にその魂を侵食されぬ為。己は決して一人ではないのだという証が、半身の存在なのだよ。狂おしい程の愛おしさに、時に恐れを抱く事もあるであろう。じゃが、それだけではないはずだ。わかるか?ー

 ああ。

 ーいい子だ、わらわの愛し子よ。…………しかし、あの子にはそれがいない。スノーは、わらわのように己が子に半身を創らなんだ。その目的に必要なかったのかもしれぬが、なんとむごい事を。そこまで世界が憎いか、そこまでわらわが憎いかー

 あの子?

 ー邪神の子供。お前達、わらわの子供の対極にある者。いずれ決着をつけねばなるまいー

 ……レイデューク?

 ー…………もうお戻り。レオンが待っておるぞー

 その言葉を最後に、優しい母神の声は聞こえなくなった。







「う……」

 一瞬、夢と現実の区別がつかなくて、リュセルはゆっくりと瞬きを繰り返す。

「目が覚めたか」

 近くで聞こえた低い声に、リュセルは状況がわからないまま答えた。

「兄さん」

「ふふ、寝ぼけているのか?」

 微笑を含んだような声を聞いて、リュセルは身じろぎをする。

 パシャン
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