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第十二章 月華の乙女
13-3 暴かれた秘密
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(隠し事?)
……………………ある。
目の前の天敵上司どころか、信頼する部下や同僚、そして、敬愛するリュカ老師にすら言えぬ事が。
「何の事だ? 第一、いくら上司といえど、俺のすべてをお前に報告する義務などないだろう?」
そう強がりながらも、目が泳いでしまう。
「昼間、あなたをこの部屋に送ったリューイ神官が、あなたが恋患いをしていると言っておりましたが……」
リューイ神官。
(クマキチ弟!?)
瞬間、話の内容よりも先にルークの脳裏を巡ったのは、先程の刺激の強すぎる光景だ。
タラーーーーッ
「ル、ルーク!? っちょ、鼻血、鼻血が…………上を向きなさい!」
いきなり鼻血を流し始めたルークに慌てたライサンは、自分の神官服の袂に入れていたハンカチを彼の鼻に押し当てる。
「どうしたのでしょう。今朝の階段落ちでぶつけてから鼻の粘膜が弱っているのでしょうか」
(もう、ボロボロだ……)
ルークは促されるまま寝台の上に横になりながら、心の中で男泣きをする。捻挫はするし、それをさらに悪化させるし、鼻血は出るし。
全部、全部、あれの所為だ!
きっと、そうに違いないッ!
でも、きっとまたあれを見てしまったら、自分のこの意思は覆るのだ。
(お許し下さい、リュカ様。セイントクロスの女神よ……、俺は不出来な使徒です)
「なる程、クローゼットですか」
ルークがそんな事を考えている間に、彼の視線がチラチラとクローゼットに向かうのに気づいていたライサンは、そう呟いて踵を返す。
「は!? ま、待て、セリクス、そこには何もない!!」
クローゼットに向かうライサンに気づいたルークは、慌てて身を起こした。しかし、再び鼻血が噴き出してしまい、ライサンに借りたハンカチで鼻を強く押さえる事を優先してしまう。
「何もないなら見てもいいでしょう? 起きてはいけませんよ。じっとしていなさい」
「頼む、頼むから、そこは開けるな!」
鼻を抑えながら必至に寝台から降りかけるが、足を怪我している為うまくいかず、そのまま寝台の下に転げ落ちたルークの視線の先で、クローゼットは無造作に開かれた。
「やめてくれえええええええッ!」
ガタッ
年代物の、少々建てつけの悪いクローゼットを開けたライサンは、奥にあった、あきらかに服以外のものを取り出し、それにかかっていた布を取った。
「おやおや」
下から現れたものを見て、ライサンはすべてを悟ったのだった。
*****
「今日、これから、どうするんだ! あんな場面目撃されて……この、この、馬鹿野郎~~~~~~~~ッ!」
まだ夜も明けぬ時分、リュセルはそう叫ぶと、仕度を終えたばかりの兄に詰め寄った。
大聖堂での行為の後、寄宿舎の部屋に戻ったリュセルは疲れ果ててしまっていて、そのまま気絶するように眠りに就いた為、汚れに汚れた神官服の処理等、事後処理はすべてレオンハルトがしてくれたようだ。朝起きた時、既に夜着に着替えさせられており、行為によって生じた体に残っていた不快感もなくなっていた。
至れり尽くせり。そう思わなくはないが……。昨夜の事を思い出すと、気まずさと羞恥心で目の前が真っ暗になる。
よりによって、あの、真面目固物の神官長補佐にレオンハルトと交わっている様を目撃されるとは。
「第一、どうしてお前はそうなんだよ! 人がいるのが分かってて、何故続けるんだ~~~~ッ(泣)」
リュセルの言葉を聞き流していたレオンハルトは、仕方なさそうに、ため息交じりに答えた。
「あの状態で止められると思うかい?」
それはそうだ。それに、あの状態で止められて困ったのは、レオンハルトではなく、むしろリュセルの方だろう。
「俺はもう、外ではしないからな」
過去、自室の寝室以外で事に及び、一部の知人に情事を覗かれたリュセルはそう宣言する。だが、実は知らないのはリュセルのみで、城内でも一部の使用人に見られた経験があるのだが、知らぬは本人ばかりである。
リュセルの宣言を聞いたレオンハルトは、目の前の弟の真新しい神官服(前のはとてもじゃないが着られる状態ではなくなった為)の襟元を直してやりながら言った。
「分かった、善処するよ。それよりも今日は例の神官と接触を持つのだろう? 知っての通り、私達の誕生式典の日も近い。あまりここ(神殿)に長いも出来ないよ。そろそろ本格的に月華の乙女の取り戻しに踏み切った方がいいかもしれないね」
軽い返事の後、さりげなく話を逸らされたリュセルは、不満に思いながらも頷く。
「それじゃ、直球勝負でいくか」
オスカー・デイズ
彼に事情を説明し、月華の乙女を返してもらう。もし、返すのを渋ったら……。
「殴りつけてでも取り返してやるッ! あれは、俺(リュセル王子)の恥だ。取り返した後は厳重に封印して門外不出にするからな、レオン!」
ダンッ
ギリギリと歯ぎしりさせながら、テーブルの上に勢いつけて手をついたリュセルを見つめ、レオンハルトは淡々と答えた。
「好きにしなさい」
その時
コンコン
控え目な小さなノックの音を聞いたレオンハルトは、顔を扉の方へ向ける。
「入れ」
「失礼致します」
ノックと同じ控え目な声と共に翠緑の髪をした盲目の青年が姿を現す。
「おはようございます。無事にお戻りになられたようで安心致しました、剣主様」
レオンハルトにそう声をかけながら入室してきた彼は、今度はリュセルのいる方に顔を向ける。
「剣鍵様も、元気になられたようですね」
「私が留守の間この子の面倒を見させてしまい、すまなかったね」
労うようなレオンハルトの言葉を聞き、子供扱いをされたリュセルはムッとする。
「もったいないお言葉です。では、朝の祈りの儀に向かいましょう」
また、あれか。
今回で最後になる事を祈りつつ、リュセルは言った。
「さあ、行くぞ!」
リュセルの、昨日の朝とはまるで違う威勢の良さに、セフィはうんうんと何度も嬉しそうに頷く。
「やっぱり、半身である剣主様がいらっしゃるのといらっしゃらないのでは、違いますね。剣鍵様、昨日はしおれた花のような風情でしたので、本当に心配しました」
「ほう」
セフィの、ほっと胸をなで下ろすような声を聞いたレオンハルトは、その端正な唇に薄い笑みを浮かべる。
「…………行くぞ」
揶揄うような意地の悪い視線を兄から向けられたリュセルは、若干居心地を悪くしながら、もう一度低い声でそう言った。
……………………ある。
目の前の天敵上司どころか、信頼する部下や同僚、そして、敬愛するリュカ老師にすら言えぬ事が。
「何の事だ? 第一、いくら上司といえど、俺のすべてをお前に報告する義務などないだろう?」
そう強がりながらも、目が泳いでしまう。
「昼間、あなたをこの部屋に送ったリューイ神官が、あなたが恋患いをしていると言っておりましたが……」
リューイ神官。
(クマキチ弟!?)
瞬間、話の内容よりも先にルークの脳裏を巡ったのは、先程の刺激の強すぎる光景だ。
タラーーーーッ
「ル、ルーク!? っちょ、鼻血、鼻血が…………上を向きなさい!」
いきなり鼻血を流し始めたルークに慌てたライサンは、自分の神官服の袂に入れていたハンカチを彼の鼻に押し当てる。
「どうしたのでしょう。今朝の階段落ちでぶつけてから鼻の粘膜が弱っているのでしょうか」
(もう、ボロボロだ……)
ルークは促されるまま寝台の上に横になりながら、心の中で男泣きをする。捻挫はするし、それをさらに悪化させるし、鼻血は出るし。
全部、全部、あれの所為だ!
きっと、そうに違いないッ!
でも、きっとまたあれを見てしまったら、自分のこの意思は覆るのだ。
(お許し下さい、リュカ様。セイントクロスの女神よ……、俺は不出来な使徒です)
「なる程、クローゼットですか」
ルークがそんな事を考えている間に、彼の視線がチラチラとクローゼットに向かうのに気づいていたライサンは、そう呟いて踵を返す。
「は!? ま、待て、セリクス、そこには何もない!!」
クローゼットに向かうライサンに気づいたルークは、慌てて身を起こした。しかし、再び鼻血が噴き出してしまい、ライサンに借りたハンカチで鼻を強く押さえる事を優先してしまう。
「何もないなら見てもいいでしょう? 起きてはいけませんよ。じっとしていなさい」
「頼む、頼むから、そこは開けるな!」
鼻を抑えながら必至に寝台から降りかけるが、足を怪我している為うまくいかず、そのまま寝台の下に転げ落ちたルークの視線の先で、クローゼットは無造作に開かれた。
「やめてくれえええええええッ!」
ガタッ
年代物の、少々建てつけの悪いクローゼットを開けたライサンは、奥にあった、あきらかに服以外のものを取り出し、それにかかっていた布を取った。
「おやおや」
下から現れたものを見て、ライサンはすべてを悟ったのだった。
*****
「今日、これから、どうするんだ! あんな場面目撃されて……この、この、馬鹿野郎~~~~~~~~ッ!」
まだ夜も明けぬ時分、リュセルはそう叫ぶと、仕度を終えたばかりの兄に詰め寄った。
大聖堂での行為の後、寄宿舎の部屋に戻ったリュセルは疲れ果ててしまっていて、そのまま気絶するように眠りに就いた為、汚れに汚れた神官服の処理等、事後処理はすべてレオンハルトがしてくれたようだ。朝起きた時、既に夜着に着替えさせられており、行為によって生じた体に残っていた不快感もなくなっていた。
至れり尽くせり。そう思わなくはないが……。昨夜の事を思い出すと、気まずさと羞恥心で目の前が真っ暗になる。
よりによって、あの、真面目固物の神官長補佐にレオンハルトと交わっている様を目撃されるとは。
「第一、どうしてお前はそうなんだよ! 人がいるのが分かってて、何故続けるんだ~~~~ッ(泣)」
リュセルの言葉を聞き流していたレオンハルトは、仕方なさそうに、ため息交じりに答えた。
「あの状態で止められると思うかい?」
それはそうだ。それに、あの状態で止められて困ったのは、レオンハルトではなく、むしろリュセルの方だろう。
「俺はもう、外ではしないからな」
過去、自室の寝室以外で事に及び、一部の知人に情事を覗かれたリュセルはそう宣言する。だが、実は知らないのはリュセルのみで、城内でも一部の使用人に見られた経験があるのだが、知らぬは本人ばかりである。
リュセルの宣言を聞いたレオンハルトは、目の前の弟の真新しい神官服(前のはとてもじゃないが着られる状態ではなくなった為)の襟元を直してやりながら言った。
「分かった、善処するよ。それよりも今日は例の神官と接触を持つのだろう? 知っての通り、私達の誕生式典の日も近い。あまりここ(神殿)に長いも出来ないよ。そろそろ本格的に月華の乙女の取り戻しに踏み切った方がいいかもしれないね」
軽い返事の後、さりげなく話を逸らされたリュセルは、不満に思いながらも頷く。
「それじゃ、直球勝負でいくか」
オスカー・デイズ
彼に事情を説明し、月華の乙女を返してもらう。もし、返すのを渋ったら……。
「殴りつけてでも取り返してやるッ! あれは、俺(リュセル王子)の恥だ。取り返した後は厳重に封印して門外不出にするからな、レオン!」
ダンッ
ギリギリと歯ぎしりさせながら、テーブルの上に勢いつけて手をついたリュセルを見つめ、レオンハルトは淡々と答えた。
「好きにしなさい」
その時
コンコン
控え目な小さなノックの音を聞いたレオンハルトは、顔を扉の方へ向ける。
「入れ」
「失礼致します」
ノックと同じ控え目な声と共に翠緑の髪をした盲目の青年が姿を現す。
「おはようございます。無事にお戻りになられたようで安心致しました、剣主様」
レオンハルトにそう声をかけながら入室してきた彼は、今度はリュセルのいる方に顔を向ける。
「剣鍵様も、元気になられたようですね」
「私が留守の間この子の面倒を見させてしまい、すまなかったね」
労うようなレオンハルトの言葉を聞き、子供扱いをされたリュセルはムッとする。
「もったいないお言葉です。では、朝の祈りの儀に向かいましょう」
また、あれか。
今回で最後になる事を祈りつつ、リュセルは言った。
「さあ、行くぞ!」
リュセルの、昨日の朝とはまるで違う威勢の良さに、セフィはうんうんと何度も嬉しそうに頷く。
「やっぱり、半身である剣主様がいらっしゃるのといらっしゃらないのでは、違いますね。剣鍵様、昨日はしおれた花のような風情でしたので、本当に心配しました」
「ほう」
セフィの、ほっと胸をなで下ろすような声を聞いたレオンハルトは、その端正な唇に薄い笑みを浮かべる。
「…………行くぞ」
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