12 / 23
4.Sweet Dream After a Nightmare
11
しおりを挟む
明け方、あの後来店した数名のお客さんが帰ったタイミングで店を閉め、2階に案内してくれる啓人さんに連れられて、螺旋階段を昇る。
部屋の奥の壁際に備え付けられたソファーに座り、そこで彼がシャワーを浴びて出てくるのをじっと待った。
え?これ冗談じゃなくて俺、これから啓人さんと一緒に寝るの?同じベッドで?
添い寝って、ホントに添い寝だけ?ぼかして言ってる訳じゃないよね?
一応昨日の夜寝る前に風呂浴びたけど、もう何時間も前の話だし、俺今ニオイ大丈夫?臭くない?
え、どうしよう、今日俺眠れなくない?何かあっても無くても、眠れないパターンのやつじゃない?
表面的にはソファーでぼうっと待っているように見えるかもしれないけれど、頭の中はもうパニック寸前で、心臓がドキドキとうるさくて仕方がない。
ガラッとシャワールームの扉が開く音に、ドキリと体が跳ねる。
啓人さんが濡れたままのゆるくウェーブがかった髪をタオルで拭きながら目の前まで来た時、緊張がMAXに達して言葉が出なかった。
「…あれ、待っててくれたんだ?先に寝ててくれても良かったのに。」
この一言で、啓人さんの言う添い寝が本当に“ただの添い寝”なのだという事が分かった。
自分の持つ、何かを期待するような気持ちがまた恥ずかしくなる。
「…ぃ、あ、…はい。」
「ふふっ、どうしたの?……歯磨く?予備のブラシあるよ。」
「あ、うん、磨く、ありがとう。」
並んで歯を磨きながら、鏡越しに目が合って、すぐに逸らす。
啓人さんがまた、ふふっていつもみたいに笑った気配がして、恥ずかしさに急いで口の中を濯ぎ、啓人さんが戻って来る前に寝てしまおうと慌ててベッドに入った。
「燈士くん…。」
「はい。」
「ははっ、なんで敬語に戻ってるの。」
「いや…。」
「…ごめんね、ちょっとだけそっちにずれてもらってもいい?」
「あ、うん。」
布団の中で壁際に身を捩って、人ひとりが十分に入れる分のスペースを作る。
一枚しかない掛け布団の間に入り込んでくる啓人さん。
そのシャンプーの良い香りのする体に、ドキドキと色んな種類の緊張感が胸を襲った。
・
「ねぇ…、燈士くん。」
ぴったりと俺の左腕に右腕をくっつけて目を瞑っていた啓人さんが、唐突に声を掛けてきた。
もうこの状態になってから数十分は経っていたから、とっくに眠っていると思っていたのに。
案の定こんなシチュエーションで呑気に眠れるほどの強メンタルを持ち合わせていなかった俺の頭は、冴えに冴えていた。
それでも啓人さんの急な声掛けには驚いて、ビクっと大げさな反応をしてしまう。
「あ、ごめん、びっくりさせちゃった?」
「いや、…うん、大丈夫だよ、どうしたの?」
「あぁ…、えーと、あのさ。」
「うん?」
啓人さんが顔をこちらに向けて、少しためらいがちに口を開いた。
「……添い寝って、どこまでしていいの?」
その質問に、ドキィッ!と漫画の効果音みたいな音がするほど、心臓が大きく飛び跳ねた。
いやいや待ってよ啓人さん、その質問、俺にする?
多分だけど、いや確実に、俺の“どこまでしてもいいか”の許容範囲より、啓人さんのそれの方が狭いと思うんだけど…。
俺は正直、どこまででもいい、啓人さんがしたいことすれば?って感じ。
でも、具体的に何と答えていいかが分からなくて、さすがに黙り込んでしまった。
「あのさ、…腕枕したいって言ったら、怒る?」
「え、あ、いや、…いいよ、全然。」
危うく『それだけ?』なんて口走りそうになって、しどろもどろになって返事をする。
くそう、この天然ノンケタラシめ。
アンタのせいで、こっちは無駄に何個もライフが削られてるっていうのに。
え、いいの?と嬉しそうに腕を広げる啓人さんの胸に体を寄せて、大人しく抱きかかえられる。
対面で抱かれていると息をどこに吐けばいいのか分からなくなって、腕の中で身じろいで啓人さんが向いているのと同じ方向に体を反転させた。
やっぱり今日は眠れそうにない。
だけどそんなことはもう、どうでもよくなっている。
頭上から聞こえる穏やかな寝息に、自然と笑みがこぼれた。
部屋の奥の壁際に備え付けられたソファーに座り、そこで彼がシャワーを浴びて出てくるのをじっと待った。
え?これ冗談じゃなくて俺、これから啓人さんと一緒に寝るの?同じベッドで?
添い寝って、ホントに添い寝だけ?ぼかして言ってる訳じゃないよね?
一応昨日の夜寝る前に風呂浴びたけど、もう何時間も前の話だし、俺今ニオイ大丈夫?臭くない?
え、どうしよう、今日俺眠れなくない?何かあっても無くても、眠れないパターンのやつじゃない?
表面的にはソファーでぼうっと待っているように見えるかもしれないけれど、頭の中はもうパニック寸前で、心臓がドキドキとうるさくて仕方がない。
ガラッとシャワールームの扉が開く音に、ドキリと体が跳ねる。
啓人さんが濡れたままのゆるくウェーブがかった髪をタオルで拭きながら目の前まで来た時、緊張がMAXに達して言葉が出なかった。
「…あれ、待っててくれたんだ?先に寝ててくれても良かったのに。」
この一言で、啓人さんの言う添い寝が本当に“ただの添い寝”なのだという事が分かった。
自分の持つ、何かを期待するような気持ちがまた恥ずかしくなる。
「…ぃ、あ、…はい。」
「ふふっ、どうしたの?……歯磨く?予備のブラシあるよ。」
「あ、うん、磨く、ありがとう。」
並んで歯を磨きながら、鏡越しに目が合って、すぐに逸らす。
啓人さんがまた、ふふっていつもみたいに笑った気配がして、恥ずかしさに急いで口の中を濯ぎ、啓人さんが戻って来る前に寝てしまおうと慌ててベッドに入った。
「燈士くん…。」
「はい。」
「ははっ、なんで敬語に戻ってるの。」
「いや…。」
「…ごめんね、ちょっとだけそっちにずれてもらってもいい?」
「あ、うん。」
布団の中で壁際に身を捩って、人ひとりが十分に入れる分のスペースを作る。
一枚しかない掛け布団の間に入り込んでくる啓人さん。
そのシャンプーの良い香りのする体に、ドキドキと色んな種類の緊張感が胸を襲った。
・
「ねぇ…、燈士くん。」
ぴったりと俺の左腕に右腕をくっつけて目を瞑っていた啓人さんが、唐突に声を掛けてきた。
もうこの状態になってから数十分は経っていたから、とっくに眠っていると思っていたのに。
案の定こんなシチュエーションで呑気に眠れるほどの強メンタルを持ち合わせていなかった俺の頭は、冴えに冴えていた。
それでも啓人さんの急な声掛けには驚いて、ビクっと大げさな反応をしてしまう。
「あ、ごめん、びっくりさせちゃった?」
「いや、…うん、大丈夫だよ、どうしたの?」
「あぁ…、えーと、あのさ。」
「うん?」
啓人さんが顔をこちらに向けて、少しためらいがちに口を開いた。
「……添い寝って、どこまでしていいの?」
その質問に、ドキィッ!と漫画の効果音みたいな音がするほど、心臓が大きく飛び跳ねた。
いやいや待ってよ啓人さん、その質問、俺にする?
多分だけど、いや確実に、俺の“どこまでしてもいいか”の許容範囲より、啓人さんのそれの方が狭いと思うんだけど…。
俺は正直、どこまででもいい、啓人さんがしたいことすれば?って感じ。
でも、具体的に何と答えていいかが分からなくて、さすがに黙り込んでしまった。
「あのさ、…腕枕したいって言ったら、怒る?」
「え、あ、いや、…いいよ、全然。」
危うく『それだけ?』なんて口走りそうになって、しどろもどろになって返事をする。
くそう、この天然ノンケタラシめ。
アンタのせいで、こっちは無駄に何個もライフが削られてるっていうのに。
え、いいの?と嬉しそうに腕を広げる啓人さんの胸に体を寄せて、大人しく抱きかかえられる。
対面で抱かれていると息をどこに吐けばいいのか分からなくなって、腕の中で身じろいで啓人さんが向いているのと同じ方向に体を反転させた。
やっぱり今日は眠れそうにない。
だけどそんなことはもう、どうでもよくなっている。
頭上から聞こえる穏やかな寝息に、自然と笑みがこぼれた。
0
あなたにおすすめの小説
この冬を超えたら恋でいい
天気
BL
夜の街で、凪は人生の底にいた。
古いアパートに帰る途中、父の残した借金の取り立てに絡まれ、逃げ場を失う。
そこに現れたのは、大手企業の社長・鷹宮だった。
偶然の救い。年齢も立場も違う二人は、その夜を境に交わることになる。
事情を多く語らない凪は、不幸が当たり前のように身にまとい、誰かに頼ることを知らない。
一方の鷹宮は、完璧な成功者として生きてきた男だった。
危険から守るため、鷹宮は凪を一時的に自宅へ迎え入れる。
冬の同居生活の中で、凪は少しずつ日常を取り戻していく。
大学へ通い、温かい食事をし、夜を一人で怯えずに眠る。
しかし、守られることに慣れない凪は、距離が近づくほどに自分から一歩引いてしまう。
それは、失うことを恐れる、健気で不器用な選択だった。
一方、鷹宮は気づいてしまう。
凪が笑うだけで、胸が満たされることに。
そんな自分の感情から凪を守るつもりで引いた距離が、
凪を遠ざけてしまう。
近づきたい。
けれど、踏み込めば壊してしまうかもしれない。
互いを思うほど、すれ違いは深くなる。
2人はこの冬を越えることができるのかーー
僕の歓び
晴珂とく
BL
道弥と有一は、交際一年半。
深い関係になってからは、さらに円満なお付き合いに発展していた。
そんな折、道弥は、親に紹介したいと有一から打診される。
両親と疎遠になっている道弥は、有一の申し出に戸惑い、一度は断った。
だけど、有一の懐の深さを改めて思い知り、有一の親に会いたいと申し出る。
道弥が両親と疎遠になっているのは、小学校6年生のときの「事件」がきっかけだった。
祖母に引き取られ、親と離れて暮らすようになってからはほとんど会っていない。
ずっと仄暗い道を歩いていた道弥を、有一が救ってくれた。
有一の望むことは、なんでもしてあげたいくらいに感謝している。
有一の親との約束を翌日に控えた夜、突然訪ねてきたのは、
祖母の葬式以来会っていない道弥の母だったーー。
道弥の学生時代の、淡く苦い恋が明かされる。
甘くてしんどい、浄化ラブストーリー。
===
【登場人物】
都築 道弥(つづき みちや)、25歳、フリーランスデザイナー
白川 有一(しらかわ ゆういち)34歳、営業部社員
常盤 康太(ときわ こうた)道弥の同級生
===
【シリーズ展開】
前日譚『僕の痛み』
時系列
『僕の痛み』→『僕の歓び』
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
【第二部完結】恋するホストと溺れる人魚と、多分、愛の話
凍星
BL
両片想いのじれったい関係から、ようやく恋人同士になったホストの川嶋蓮と、カフェの店長代理を務める高槻泉水。
付き合いは順調に見えたが、お互いの仕事のせいで一緒に過ごせる時間が極端に少なく、蓮は不満を募らせていた。
そして、そんな問題を解消するために店を辞めようとする蓮には、先輩ホストの高城皇という大きな壁が立ちはだかる。
恩人からの圧力に煮え切らない蓮を見て、背中を押してくれたのは…「マイペース」を絵に描いたようなのんびりした性格の後輩ユキだった。
「蓮夜先輩に幸せになって欲しい」と願い、蓮のサポートに奮闘するユキだが、別れが近付くにつれ、その気持ちも少しずつ変化していってーー?
「自分の本当の想い」に気付いた時、ユキが取るのは人魚姫のような犠牲的な行為か、それとも……
「恋とか愛とか、よく分からない!」という、恋愛に不器用な男子3人の視点をメインに「誰かを好きになる気持ち」を考察する、もだもだラブストーリーです♪
『カフェと雪の女王と、多分、恋の話』の続編となります。
タイトルに「*」付きの回は、性的表現ありです。苦手な方はご注意を。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
優しく恋心奪われて
静羽(しずは)
BL
新人社員の湊 海翔(みなと かいと)は大手企業に就職した。
情報処理システム課に配属された。
毎日作成した書類を営業課に届けている。
新人社員の湊 海翔(みなと かいと)は大手企業に就職した。
情報処理システム課で毎日作成した書類を営業課に届けている。
そこには営業課に所属するやり手社員、綾瀬 遥斗(あやせ はると)の姿があった。
顔見知りになった二人は、会社の歓迎会で席が隣になったことで打ち解け遥斗は湊に一目惚れしていた事、自分のセクシャリティを打ち明けた。
動揺しつつも受け入れたいと思う湊。
そのタイミングで大学時代に憧れていた先輩・朝霧 恒一(あさぎり こういち)と卒業後初めて再会し、湊の心は二人の間で揺れ動く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる