ママの「約束」:目を閉じる境界線

にゃんこビーム

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予知と毒(おふざけバージョン)

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一:地獄のタオル畳み

日曜の午後。リビングには、優雅なティータイムにしか見えない風景が広がっていたが、その実態は地獄の強制労働である。

「何言ってるんですか! その時間でSNSを見てる場合じゃないでしょ! あんたはいつも、ぐずぐずして、推し活に忙しいんだから!」

みよりは手に持っていた最高級ホテルのフカフカタオルを、ばさっとテーブルに広げた。

五歳のめいとは床に正座し、肩を震わせる。

(おかあさんは、ぼくのおやつより完璧な角が大事なんだ。おかあさんの愛情表現、いつも難易度高すぎ!)

「……うん。わかった、おかあさん。ちゃん、やるよ、たぶん。」

みよりは、めいとがタオルを見ていないことを察知する。

「何をぼんやりしてるの? その目、タオルの角じゃなくて、キッチンの冷蔵庫を見てるわね?」

「余計なことを考えない! 今、タオルのこと以外を考えたから、ポイントマイナス一万点! さあ! このフカフカタオルを、零コンマ三秒以内に畳んで、元の場所に戻しなさい! 一秒でも遅れたら、今日の夕食はキャベツの芯の味噌汁よ!」

めいとの手のひらに汗が噴き出す。それはもはや人間に可能な速度ではない。

「うっ……うう、ごめんなさい、おかあさん。フカフカすぎて、空気抵抗でうまく、うまく、たためないよぉ……!」

みよりは鼻で笑う。

「泣き言を言わない。そのキャベツの芯の匂いで、タオルが畳めるわけがないでしょう。泣いてる時間があるなら、どうすれば時間を超越して畳めるか、頭の回路を最適化しなさい!」

そして、彼女は最大限にふざけた言葉を突きつけた。

「もう二度と、お父さんみたいな、家でゲームばっかりしてる役立たずにはならないでね。あたしは、あなたに、課金ゲームのトップランカーになってほしいんだから!」

みよりはそのままキッチンへ。めいとの頭の中で、「トップランカー」という目標が、重くのしかかる。

二:緊急予知!ヤバすぎる未来

「もう、やだ。」

めいとはビスケットを丸飲みし、立ち上がった。

「もうやだ! タオルの完璧主義も、夕食のキャベツの芯も、もう、やらない! おかあさんは、いつも、ぼくの自由な魂をいじめる!」

めいとは机の上の**算数ドリル(表紙に「超難解」と書かれている)**を床に叩きつけると、一目散に玄関へ。

「めいと、もう、二次元の世界に行く!」

バタン!と、ドアを開け、外へ飛び出した。

「めいと! 待ちなさい!」

みよりが追いかけようと一歩踏み出した瞬間、頭の中に眩しい光と、非常に詳細な映像が流れ込んだ。

(予知映像:家からそう遠くない、あの公園。めいとが、錆びた果物ナイフを手にしている。その幼い顔は真剣そのもので、ナイフを自分の首ではなく、**首から下げた『推しのキーホルダー』**に向け、「こんな人生なら、推しと心中だ!」と叫んでいる。)

「っ……あああああ!」(顔面蒼白になり、その場に崩れ落ちそうになる。)

予知は、**「推し活の危機」**を告げていた!

「公園! 推しと心中に行くのね! キーホルダーを傷つけさせない! あたしが、あんたの未来を、変えてみせる!」

みよりは、キャベツの芯の味噌汁の鍋も無視し、発狂したように、裸足のまま、公園へ向かって全力疾走する。

三:ナイフと推しの心中回避

公園のベンチのそばで、めいとは立ち尽くしていた。ナイフの刃先を、キーホルダーに触れるか触れないかのところまで持っていく。

(もう、限定グッズが手に入らない世界なんて、めいとのいるばしょじゃない!)

その瞬間、公園の入り口から、悲鳴が聞こえた。

「やめなさい!めいと!!」

みよりはめいとに飛びつき、ナイフを持っためいとの手を、力ずくでねじり上げる。ナイフは、ガシャン!と地面に落ちる。

「何をしようとしてるの! 推しのキーホルダーを傷つけるなんて!」

「はなして! いたっ! おかあさんの、バカ! めいと、限定グッズのために自分の魂を売る子なんでしょ!? なら、いなくなっちゃう!」

みよりはめいとを強く抱きしめ、嗚咽にまみれる。

「っ、違う! あなたが、いらない子なわけないでしょう! あなたは、この世で、たった一人、レアな推しグッズを譲れる相手なのよ!」

みよりは、すべてをさらけ出す。

「あたしにはね、見えるの。 少し先の、未来が。お父さんと離婚したのも、予知でお父さんが課金で全財産を溶かす未来が見えたからよ。」

「そして……今、あたしが見た未来は、あなたが、推しと心中して、限定グッズをバラバラにする姿だった! だから、あたしは鬼になった! あなたを最高の人間にして、グッズの価値を高めるしかないと思ったからよ!」

四:和解と自由

めいとは、みよりの手の甲に、ナイフを奪う時に切った赤い傷が滲んでいるのを見た。

「おかあさん、て……て、あかくなってる……。ごめんね……。」

みよりは自分の傷など気にせず、力なく笑う。

「いいのよ、これは。どうせすぐに治るわ。」

「……でもね、めいと。あたしは、間違っていたわ。」

みよりは嗚咽混じりに続けた。

「完璧なグッズコレクターにすることが、あなたを救う道だと思った。でも、あなたは、『完璧じゃないとグッズを持つ資格がない』と思ってしまった。ごめんなさい。あなたの人生は、あたしの予知のためにあるんじゃない。あなたの、自由に推し活をするためにあるのよ。」

めいとの心に、張り詰めていた緊張が溶けていく。

「じゃあ……もう、ドリル、ぜんぶやらなくても、いい? ガチャを天井まで回しても、いい?」

みよりは鼻をすすり、力強く、そして優しく頷いた。

「いいわ。ドリルも、全部じゃなくていい。やりたくないなら、やらなくていい。 ガチャも、自分の判断で回しなさい。一緒に、ゆっくり、最高の推し活を見つけましょう!」

エピローグ:平和な日常

それから数週間後の、日曜日の午後。

リビング。みよりはソファで、めいとの推しが出ているアニメのDVDを真剣に鑑賞している。めいとは床で、自由に絵を描いていた。

めいとが、ふいにクレヨンを置いて立ち上がった。

めいと(セリフ) 「おかあさん、できたよ!」

みよりはリモコンを置いて、微笑んでめいとを見る。

みより(お母さん) 「見せてごらん、めいと。今日は何を描いたの?」

めいとが差し出した紙には、カラフルで、少し歪な形の『推しキャラ』が、楽しそうにフカフカタオルを抱きしめている絵が描かれていた。

めいと(セリフ) 「これはね、**『推しとの日常』**だよ! おかあさん、ぜんぜんおこってないから、推し活がはかどって、つよくて、やさしい気持ちなの!」

みより(お母さん) (みよりは感極まり、推しキャラの絵を胸に抱きしめる。) 「まぁ。そうね、本当に最高の日常だわ。」

「あのね、めいと。おかあさんね、今、思ったの。」

めいと(セリフ) 「なに?」

みより(お母さん) 「この絵を描くのって、すごく推しへの愛が必要なのね。これだけ愛情を込めて描けるなんて、めいとは本当にすごい力を持っているわ。ドリルなんかで測れない、最高の推しへの情熱よ。」

めいと(セリフ) (顔をパッと輝かせる。) 「へへ! そうでしょ! だからね、つぎは、もっとおおきい、等身大パネルも描きたい!」

みより(お母さん) 「ええ、いいわね。おかあさん、その等身大パネル、一緒に色塗り手伝うわ。」

みよりは立ち上がり、めいとを抱きしめる。

みより(心の声) (未来の予知なんて、もういらない。推し活を自由に楽しむあなたを信じる。それが、あなたを本当に救う、たった一つの道だったのね。)

(完)
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