1 / 1
脳内AI
しおりを挟む「アナタニハ 生キル 才能ガ アリマセン」
私の中のAIは
私の価値をそう弾き出した。
私は見事な程
何も出来なかった。
スポーツも
勉強も
文化も芸術も
友達関係すら
上手くいかない。
先生にも
両親にも
努力が足りないと言われ
血反吐を吐く思いでやってきた。
浪人はさせられない。
平凡なサラリーマン家庭。
両親に言い聞かせられて
ギリギリで挑んだ大学受験
たった一度限りの大勝負
私は、競り合いに負けた。
燃え尽きて灰になった気分だった。
帰路、電車に乗らず
二駅分を歩きながら
家に電話をした。
呼出音がプッと切れると同時に
「どうだった!?」
母の先を急かす声が飛ぶ。
母の声は矢のように
私の中に突き刺さって
心ごと凍りつかせるようだった。
「……ごめん、駄目だった」
長い沈黙に、私が死んでいく。
ああ、早く救って。
救済して。
祈るような想いが
電波に乗って
母に伝わればいいのに。
やがて母は、告げた。
「…そう。努力の結果ね」
努力ノ結果……
寝る暇も惜しんで
勉強したつもりだった。
塾だって一度も
サボった事がない。
二年生の途中から
父の言いつけ通りに
一つ塾を増やした。
授業だって、真面目に聞いた。
分からなければ
いくらだって教科の先生に
聞きに行った。
あれだけの努力の結果が
「不合格」なら
「合格者」はどれ程の努力を
しているというんだろう。
血反吐を吐くだけじゃ
駄目だったんだろうか
腕の一本斬り落とす覚悟がなきゃ
医者なんて目指しちゃ
いけなかったんだろうか。
誰も、努力の方法なんて
教えてくれなかったじゃないか。
悲しくて、寂しくて
報われなくて、苦しくて
悔しくって……涙は
とうとう、零れ落ちる。
「アナタニハ 生キル 才能ガ アリマセン」
ああ、また聴こえる…。
私の中の感情のないAIの声。
「確かに、才能……ないかもね」
私は、そう呟いて
帰路を反れた。
合格発表の日に
大学近くをゾンビのように
フラフラと歩く。
傍目から見たら
一発で不合格者だとわかるだろう。
「アナタニハ 生キル 才能ガ アリマセン」
街ゆく人が私の背中に
後ろ指をさしてヒソヒソと
「出来ない子」のレッテルを
貼っているような気がした。
「も……だめだ、私……やっていけない」
そう思った時
私は、突発的にアスファルトを蹴って
車道に飛び出していた。
ビビビビーーーーーー!!
けたたましいクラクションの音
その後に、ドンッ
鈍い音が聴こえて
私の意識は、途切れた…。
「アナタニハ 生キル 才能ガアリマセン」
うるさい
「アナタニハ 生キル 才能ガアリマセン」
うるさいな、わかってる
「アナタニハ……生」
夢の中で鳴り響き続ける、
AIの声に嫌気が差して
私は目を開く。
そこには
「花凛!」
幼なじみの光輝の姿が
ぼやけて見えた。
「こ……うき」
「あー……も、涙出るっ」
光輝は涙を流しながら
恥ずかしげもなく私の手をとる。
光輝と…手を繋ぐのは
いつぶりの事だろう。
「お前……何で車道に飛び出したりしたんだよ」
普通、そんなこと
事故から目覚めたばかりの
人間に聞かない。
こんなところが馬鹿正直で
空気が読めない光輝らしい。
「死に……たかったの」
そして私も私だ。
聞にくい問いかけに
答えにくい回答を
律儀にしてあげるんだから。
「なんで、死にたかった?」
「生きる才能が……ないから」
ずっと耳の奥で
聴こえていた声を
言葉に出した途端
涙が溢れ出す。
光輝は
優しく頭を撫でながら
「花凛さ、ひでえ怪我してんだよ」
と、言葉を繋ぎ始める。
「一時、昏睡状態だぜ?」
ひとつ、言葉にする度
光輝の目から
そして私の目から
零れ出した涙はひとつとなって
シーツの上に水たまりを作った。
「でも目、覚ましてくれたじゃん…」
目を覚まして「くれた」
その言葉が心に春を運ぶ。
そしてもう一言
光輝はこう私に呟いた。
「お前には生きる才能がないんじゃなくて、死ぬ才能がないんだよ」
光輝は、躊躇いがちに私を抱き締める。
「生きててくれて、ありがとう」
その言葉が心の中に
すとんと落ちた瞬間
土砂降りだった心模様は
春一番でも吹いたかのように
さーっと青空に晴れた。
もう、AIの声は聴こえなかった。
生きる才能なんて必要ない
そう言ってくれる人がいる。
ただがむしゃらに
走り続けるだけでいいんだ。
いつか私も胸を張って
そう言えるようになりたい。
「お金は返します、バイトもします、どうしても医者になりたいんです…だからお願いします、一年浪人させて下さい」
身体が癒え、退院を間近に控えたある日
私は両親に、そう頭を下げた。
人生、まだまだ、これからだ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
『紅茶の香りが消えた午後に』
柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。
けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。
誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。
本物の聖女なら本気出してみろと言われたので本気出したら国が滅びました(笑
リオール
恋愛
タイトルが完全なネタバレ(苦笑
勢いで書きました。
何でも許せるかた向け。
ギャグテイストで始まりシリアスに終わります。
恋愛の甘さは皆無です。
全7話。
婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ
青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。
今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。
婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。
その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。
実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。
侯爵様の懺悔
宇野 肇
恋愛
女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。
そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。
侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。
その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。
おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。
――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる