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2020年7月
銛を持つ魚人の庭に招かれて 次の餌かと優しく笑う
しおりを挟むブラウンの革張りのソファを勧められた。事前に寒い、トイレの前は嫌だ、という話をしていたからトイレから離れたなるべく風のない場所を勧めてくれたのかもしれない。
年齢は四十を過ぎたあたりだろうか、クリーム色のシャツにシンプルなベージュのパンツルック。頬の辺りのしみが少し目立つのは、少ない保健師という少ない立ち位置からか、分かち合えない苦労を抱えているのかもしれない、そう思った。
施設の廊下はシン、と音がなく、遠くの方に人の気配はあれど、案内された一角だけを切り取れば、完全な密室にも思える安心感があった。廊下には、診察室と思われず小部屋が並び、その前にはソファが並んでいたが、部屋の中にも人の気配はなく、まるで建物全体が休日であるかのような雰囲気を出していた。とはいっても、太陽の名を持つ流行病が警戒される今、よほどの事情がなければ気軽には訪れない施設であることは確かなのだが。
話はシンプル。こちらは二人でソファに並びながら保健師の話を聞いていた。頬骨が押し上げられそうなほど口角を上げ、口端と目尻をつなげようと挑戦しているかのような笑みは、仕事柄必要なのだろう。笑みの合間、時折開く瞳はぎょろりとしていて、絶対に相手を圧しないぞ、という圧がこもっているのが見て取れた。大変な仕事だと思った。
それでもやることがあるのはいいことなのだろう、ぞんざいに扱われることもなく、親身な様子で最後まで話をしてくれた。最後にお礼をいって、通路へと向かう。
これで2万円とはお安い御用、そう思った。
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