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第1章 運命の女神
2 二つ名
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冒険者登録を終えたアトロポスは、カウンターの一番右側にあるアイテムカウンターに向かった。属性判定紙を買って、魔力属性の種類を調べるためだった。
「すみません。魔力属性を調べたいんですが、属性判定紙って売っていますか?」
アトロポスはカウンターの中にいる五十代半ばの男性に声を掛けた。身長はアトロポスより頭二つ分高く、横幅は倍以上もあるガッシリとした体格の男だった。顔の三分の一以上は口ひげに覆われており、一見すると熊のようにも見えた。
「魔力属性か? 判定紙で分かるのは魔力の種類だけで、魔力量までは分からんぞ。正確に調べたかったら、首都レウルーラの本部にある魔力測定器を使った方がいい」
外見と違い面倒見は良さそうだと思いながら、アトロポスは笑顔で答えた。
「取りあえず、種類だけで構いません。一枚いくらですか?」
「金貨五枚だ。首都の魔力測定器は一回白金貨一枚だから、そっちの方がいいぞ」
(ホントに面倒見が良さそうね。でも、レウルーラには戻れないし、どこか他に魔力測定器がある場所を教えてもらおう)
「ありがとうございます。首都から来たばかりで、目的地は逆方向なんです。魔力測定器って、他にもどこかにあるんですか?」
「レウルキア王国では王宮と冒険者ギルド本部にしかないな。別の国で良ければ、どの国でも王宮や冒険者ギルド本部には置いてあるぞ」
どうやら魔力測定器というのは高額な物らしいとアトロポスは考えた。どちらにせよ、今回の目的地はユピテル皇国の首都イシュタールだ。イシュタールの冒険者ギルド本部に行けば魔力測定器があるようだった。
「そうですか。ありがとうございます。では、魔力の種類だけでも調べたいので、判定紙を一枚お願いします」
首からギルド証を外すと、アトロポスは男に手渡した。
「分かった。倉庫から取ってくるから、少し待っててくれ」
そう言うと、男はアトロポスのギルド証を受け取ってカウンターの奥にある事務所へ向かっていった。
「待たせたな。これが属性判定紙だ」
一辺が五セグメッツェくらいの正方形の白い紙をアトロポスに手渡しながら、男が告げた。それを見て、アトロポスは驚いた。羊皮紙ではなく、雁皮紙と呼ばれる本物の紙だったのだ。雁皮紙は雁皮という植物を原料とした紙で、表面がなめらかで光沢がある高級紙だった。
(金貨五枚は高いと思ったけど、雁皮紙が使われているのなら納得だわ。姫様が王族や大貴族宛の手紙に使われていたけど、冒険者ギルドにもあったなんて驚きだわ)
雁皮紙の表面には魔方陣が描かれていた。おそらく、魔力を感知する魔方陣だとアトロポスは考えた。
「その魔方陣が書かれている面を額に当てるんだ。そうすると、紙自体が光って色が変わる。その色によって、持っている魔力の種類が分かるって仕組みだ」
アトロポスの予想を裏切らない答えを、男が説明した。
「使う前に、どの色がどの属性なのかを教えてもらってもいいですか?」
「構わんよ。水属性が青、火属性が赤、風属性が緑、土属性が茶だ。二つ以上の属性を持っていた場合、色が分かれて出てくる」
「なるほど、分かりやすいですね」
男の説明に納得すると、アトロポスは右手に持った属性判定紙を額に近づけた。
「では、いきます」
眼を閉じると、アトロポスは「ちゃんと光って」と念じながら属性判定紙を額に押しつけた。
「おおっ!」
男が上げた驚きの声で、アトロポスは眼を開けた。
(変な結果だったのかな?)
慌てて右手に持った属性判定紙を確認した。
「真っ黒だわ……」
(黒って? たしか、青、赤、緑、茶じゃなかったっけ?)
アトロポスは男の言葉を思い出しながら、首を傾げた。
「闇属性だッ! 初めて見たぞッ!」
男が興奮したように大声で叫んだ。それを聞きつけたギルド職員や冒険者たちが、一斉にアトロポスの周りに集まってきた。
(闇属性って……。何か、印象悪くない?)
アトロポスの考えを否定するかのように、背後の冒険者たちが騒ぎ出した。
「闇属性だってよ!」
「ホントか? すげえな!」
「闇属性魔法って、最強だっていうぜ!」
「あんな可愛い娘が闇属性? 萌えるッ!」
「名前なんていうんだ?」
「あ、えっと……ローズです」
思わず答えたアトロポスに、冒険者たちの興奮は過熱した。
「闇のローズ……『闇の薔薇』だッ!」
「いや、あの黒髪……『漆黒の薔薇』だろう?」
「何言ってやがる? 『夜薔薇』に決まってるだろう!」
「おお! ナイト・ローズか! いいな!」
「あんたの二つ名は、『夜薔薇』で決まりだッ!」
「二つ名って、何ですか?」
興奮のるつぼと化した冒険者たちに引き攣りながら、アトロポスはカウンターの男に小声で訊ねた。
「冒険者クラスAから名乗れるあだ名みたいなもんだ。あんた、冒険者クラスは?」
「さっき冒険者登録したばかりなので、クラスFです……」
「まあ、クラスFで二つ名があっても違反じゃない。恥ずかしかったら、一日も早くクラスAになるこった」
「はい……」
小さくため息をつくと、アトロポスは男の言葉に頷いた。
冒険者たちの勧誘を振り切って、アトロポスは何とか食堂にいるシルヴァレートのところに戻ってきた。アイテムカウンターから食堂までの十メッツェに満たない距離の間に、七組の冒険者パーティから勧誘を受けた。闇属性持ちというのは、それほどまでに珍しかったのだ。
「なるほど、モテモテだったな」
話を聞いたシルヴァレートは笑いながらアトロポスを慰めた。
「笑い事じゃないわ。ホントに大変だったんだから!」
「『夜薔薇』か。本当は俺が最初にその名を付けたんだけどな」
「え? 聞いてないわよ」
シルヴァレートの言葉に、アトロポスは驚いて彼の顔を見つめた。
「お前が寝ている間に、口づけをしながらそう呼んだのさ」
「ち、ちょっと……。人が寝てる間に何しているのよ?」
知らない間に口づけされたと聞いて、アトロポスは真っ赤に顔を染めた。
「まあ、気にするな。それよりも、闇属性っていうのはすごいな。数万人に一人と言われている属性だぞ」
アトロポスの文句を笑っていなすと、シルヴァレートが話題を変えた。
「でも、闇属性って何かイメージ悪くない?」
「神話に出てくる悪魔が使う魔法が闇属性だからな。逆に言えば、それだけ強力な魔力属性だってことだ」
「悪魔ね……。どうせなら、光属性の方がよかったな」
悪魔の属性と聞いて、アトロポスは大きくため息をついた。
「真面目な話、闇属性魔法を教えられる奴なんて、たぶんいないぞ。詠唱も知っている奴はいないと思う。もし手がかりがあるとしたら、悪魔と闘ったという神話が残っているユピテル皇国かゾルヴァラタ神国くらいじゃないかな?」
「まあ、別にいいわ。私は剣士だし、魔法はちょっと使えたら楽しいかなってくらいの気持ちだったから……。使えなくて困ったことも今までないしね」
ふてくされたように頬を膨らませると、アトロポスは片肘をついて窓の外に視線を移した。
「そう残念がるな。明日の昇格試験でクラスBになれたら、二つ名を名乗っても恥ずかしくなくなるさ」
「そうね……」
シルヴァレートの励ましにも、アトロポスの気持ちは晴れなかった。
(ホントはシルヴァと同じ水属性が良かったのに……)
「分かった。明日、クラスBになれたら、お祝いに剣を作ってやる。今の剣はこう言っちゃなんだが、取りあえず武器屋で買った物だろう?」
「剣を作るって?」
「言葉通りだ。お前専用の剣を鍛治士に注文して作ってもらうんだ」
「ホントに……!?」
アトロポスの黒瞳が興味と期待に輝いた。鍛治士に特注して剣を打ってもらうというのは、剣士にとって何にもまして憧れだった。
「でも、高いんじゃないの?」
「まあ、そこそこはするだろうけど、お前がくれたこのコートよりは安いと思うぞ」
「そのコート、銀貨一枚と銅貨五枚なんだけど……」
アトロポスが笑いながら告げた。
「本来の価値からすると、白金貨一万枚くらいだぞ。俺の剣が白金貨千枚くらいだったから、このコートよりも安いさ」
「白金貨千枚って……」
想像を遥かに超える金額に、アトロポスは引き攣った。今の細短剣は金貨一枚で買った物だった。
「ローズ、お前が言ったんだろう? 俺を護るのがお前の仕事だって。お前の武器を強化することは、俺の生命を護ることに繋がるんだ。だから、金額は気にするな」
「うん……。何かうまく言いくるめられた気がするけど……。取りあえずは明日の昇格試験、がんばるわ」
「そうしてくれ。それと、今日は早く宿に帰って、お仕置きの続きだ」
「え……? 何で? 私、何も悪いことはしてないわよ」
お仕置きと聞いて、アトロポスは真っ赤に顔を染めながら言った。
「お前が騒ぎを起こしたから、俺は冒険者登録が出来なくなったんだぞ」
「あ、あれは私のせいじゃ……」
慌てて弁解しようとしたが、シルヴァレートの正論の前にアトロポスは玉砕した。
「あの騒ぎの中で、俺に冒険者登録をしろと?」
「か、カウンターが空いていたんだから、誰かを呼び出して……」
「ほう。ギルド職員まで総出でお前を囲んでいたのに、その中の一人を捕まえて登録の手続きをさせろと? ずいぶんと自分勝手な行いをさせるんだな、お前は?」
「そ、それは……」
アトロポスの様子を見て、シルヴァレートはニヤリと笑った。
「俺が冒険者登録をできなかったきっかけは、誰が作ったのかな?」
「わ、わたし……?」
「正解。というわけで、お仕置きを楽しみにしておけ」
そう告げると、シルヴァレートは伝票を掴んで会計をするために席を立った。
(何でこんなことになってるの?)
アトロポスは期待と不安に顔を真っ赤に締めながら、慌ててシルヴァレートの後を追った。
「すみません。魔力属性を調べたいんですが、属性判定紙って売っていますか?」
アトロポスはカウンターの中にいる五十代半ばの男性に声を掛けた。身長はアトロポスより頭二つ分高く、横幅は倍以上もあるガッシリとした体格の男だった。顔の三分の一以上は口ひげに覆われており、一見すると熊のようにも見えた。
「魔力属性か? 判定紙で分かるのは魔力の種類だけで、魔力量までは分からんぞ。正確に調べたかったら、首都レウルーラの本部にある魔力測定器を使った方がいい」
外見と違い面倒見は良さそうだと思いながら、アトロポスは笑顔で答えた。
「取りあえず、種類だけで構いません。一枚いくらですか?」
「金貨五枚だ。首都の魔力測定器は一回白金貨一枚だから、そっちの方がいいぞ」
(ホントに面倒見が良さそうね。でも、レウルーラには戻れないし、どこか他に魔力測定器がある場所を教えてもらおう)
「ありがとうございます。首都から来たばかりで、目的地は逆方向なんです。魔力測定器って、他にもどこかにあるんですか?」
「レウルキア王国では王宮と冒険者ギルド本部にしかないな。別の国で良ければ、どの国でも王宮や冒険者ギルド本部には置いてあるぞ」
どうやら魔力測定器というのは高額な物らしいとアトロポスは考えた。どちらにせよ、今回の目的地はユピテル皇国の首都イシュタールだ。イシュタールの冒険者ギルド本部に行けば魔力測定器があるようだった。
「そうですか。ありがとうございます。では、魔力の種類だけでも調べたいので、判定紙を一枚お願いします」
首からギルド証を外すと、アトロポスは男に手渡した。
「分かった。倉庫から取ってくるから、少し待っててくれ」
そう言うと、男はアトロポスのギルド証を受け取ってカウンターの奥にある事務所へ向かっていった。
「待たせたな。これが属性判定紙だ」
一辺が五セグメッツェくらいの正方形の白い紙をアトロポスに手渡しながら、男が告げた。それを見て、アトロポスは驚いた。羊皮紙ではなく、雁皮紙と呼ばれる本物の紙だったのだ。雁皮紙は雁皮という植物を原料とした紙で、表面がなめらかで光沢がある高級紙だった。
(金貨五枚は高いと思ったけど、雁皮紙が使われているのなら納得だわ。姫様が王族や大貴族宛の手紙に使われていたけど、冒険者ギルドにもあったなんて驚きだわ)
雁皮紙の表面には魔方陣が描かれていた。おそらく、魔力を感知する魔方陣だとアトロポスは考えた。
「その魔方陣が書かれている面を額に当てるんだ。そうすると、紙自体が光って色が変わる。その色によって、持っている魔力の種類が分かるって仕組みだ」
アトロポスの予想を裏切らない答えを、男が説明した。
「使う前に、どの色がどの属性なのかを教えてもらってもいいですか?」
「構わんよ。水属性が青、火属性が赤、風属性が緑、土属性が茶だ。二つ以上の属性を持っていた場合、色が分かれて出てくる」
「なるほど、分かりやすいですね」
男の説明に納得すると、アトロポスは右手に持った属性判定紙を額に近づけた。
「では、いきます」
眼を閉じると、アトロポスは「ちゃんと光って」と念じながら属性判定紙を額に押しつけた。
「おおっ!」
男が上げた驚きの声で、アトロポスは眼を開けた。
(変な結果だったのかな?)
慌てて右手に持った属性判定紙を確認した。
「真っ黒だわ……」
(黒って? たしか、青、赤、緑、茶じゃなかったっけ?)
アトロポスは男の言葉を思い出しながら、首を傾げた。
「闇属性だッ! 初めて見たぞッ!」
男が興奮したように大声で叫んだ。それを聞きつけたギルド職員や冒険者たちが、一斉にアトロポスの周りに集まってきた。
(闇属性って……。何か、印象悪くない?)
アトロポスの考えを否定するかのように、背後の冒険者たちが騒ぎ出した。
「闇属性だってよ!」
「ホントか? すげえな!」
「闇属性魔法って、最強だっていうぜ!」
「あんな可愛い娘が闇属性? 萌えるッ!」
「名前なんていうんだ?」
「あ、えっと……ローズです」
思わず答えたアトロポスに、冒険者たちの興奮は過熱した。
「闇のローズ……『闇の薔薇』だッ!」
「いや、あの黒髪……『漆黒の薔薇』だろう?」
「何言ってやがる? 『夜薔薇』に決まってるだろう!」
「おお! ナイト・ローズか! いいな!」
「あんたの二つ名は、『夜薔薇』で決まりだッ!」
「二つ名って、何ですか?」
興奮のるつぼと化した冒険者たちに引き攣りながら、アトロポスはカウンターの男に小声で訊ねた。
「冒険者クラスAから名乗れるあだ名みたいなもんだ。あんた、冒険者クラスは?」
「さっき冒険者登録したばかりなので、クラスFです……」
「まあ、クラスFで二つ名があっても違反じゃない。恥ずかしかったら、一日も早くクラスAになるこった」
「はい……」
小さくため息をつくと、アトロポスは男の言葉に頷いた。
冒険者たちの勧誘を振り切って、アトロポスは何とか食堂にいるシルヴァレートのところに戻ってきた。アイテムカウンターから食堂までの十メッツェに満たない距離の間に、七組の冒険者パーティから勧誘を受けた。闇属性持ちというのは、それほどまでに珍しかったのだ。
「なるほど、モテモテだったな」
話を聞いたシルヴァレートは笑いながらアトロポスを慰めた。
「笑い事じゃないわ。ホントに大変だったんだから!」
「『夜薔薇』か。本当は俺が最初にその名を付けたんだけどな」
「え? 聞いてないわよ」
シルヴァレートの言葉に、アトロポスは驚いて彼の顔を見つめた。
「お前が寝ている間に、口づけをしながらそう呼んだのさ」
「ち、ちょっと……。人が寝てる間に何しているのよ?」
知らない間に口づけされたと聞いて、アトロポスは真っ赤に顔を染めた。
「まあ、気にするな。それよりも、闇属性っていうのはすごいな。数万人に一人と言われている属性だぞ」
アトロポスの文句を笑っていなすと、シルヴァレートが話題を変えた。
「でも、闇属性って何かイメージ悪くない?」
「神話に出てくる悪魔が使う魔法が闇属性だからな。逆に言えば、それだけ強力な魔力属性だってことだ」
「悪魔ね……。どうせなら、光属性の方がよかったな」
悪魔の属性と聞いて、アトロポスは大きくため息をついた。
「真面目な話、闇属性魔法を教えられる奴なんて、たぶんいないぞ。詠唱も知っている奴はいないと思う。もし手がかりがあるとしたら、悪魔と闘ったという神話が残っているユピテル皇国かゾルヴァラタ神国くらいじゃないかな?」
「まあ、別にいいわ。私は剣士だし、魔法はちょっと使えたら楽しいかなってくらいの気持ちだったから……。使えなくて困ったことも今までないしね」
ふてくされたように頬を膨らませると、アトロポスは片肘をついて窓の外に視線を移した。
「そう残念がるな。明日の昇格試験でクラスBになれたら、二つ名を名乗っても恥ずかしくなくなるさ」
「そうね……」
シルヴァレートの励ましにも、アトロポスの気持ちは晴れなかった。
(ホントはシルヴァと同じ水属性が良かったのに……)
「分かった。明日、クラスBになれたら、お祝いに剣を作ってやる。今の剣はこう言っちゃなんだが、取りあえず武器屋で買った物だろう?」
「剣を作るって?」
「言葉通りだ。お前専用の剣を鍛治士に注文して作ってもらうんだ」
「ホントに……!?」
アトロポスの黒瞳が興味と期待に輝いた。鍛治士に特注して剣を打ってもらうというのは、剣士にとって何にもまして憧れだった。
「でも、高いんじゃないの?」
「まあ、そこそこはするだろうけど、お前がくれたこのコートよりは安いと思うぞ」
「そのコート、銀貨一枚と銅貨五枚なんだけど……」
アトロポスが笑いながら告げた。
「本来の価値からすると、白金貨一万枚くらいだぞ。俺の剣が白金貨千枚くらいだったから、このコートよりも安いさ」
「白金貨千枚って……」
想像を遥かに超える金額に、アトロポスは引き攣った。今の細短剣は金貨一枚で買った物だった。
「ローズ、お前が言ったんだろう? 俺を護るのがお前の仕事だって。お前の武器を強化することは、俺の生命を護ることに繋がるんだ。だから、金額は気にするな」
「うん……。何かうまく言いくるめられた気がするけど……。取りあえずは明日の昇格試験、がんばるわ」
「そうしてくれ。それと、今日は早く宿に帰って、お仕置きの続きだ」
「え……? 何で? 私、何も悪いことはしてないわよ」
お仕置きと聞いて、アトロポスは真っ赤に顔を染めながら言った。
「お前が騒ぎを起こしたから、俺は冒険者登録が出来なくなったんだぞ」
「あ、あれは私のせいじゃ……」
慌てて弁解しようとしたが、シルヴァレートの正論の前にアトロポスは玉砕した。
「あの騒ぎの中で、俺に冒険者登録をしろと?」
「か、カウンターが空いていたんだから、誰かを呼び出して……」
「ほう。ギルド職員まで総出でお前を囲んでいたのに、その中の一人を捕まえて登録の手続きをさせろと? ずいぶんと自分勝手な行いをさせるんだな、お前は?」
「そ、それは……」
アトロポスの様子を見て、シルヴァレートはニヤリと笑った。
「俺が冒険者登録をできなかったきっかけは、誰が作ったのかな?」
「わ、わたし……?」
「正解。というわけで、お仕置きを楽しみにしておけ」
そう告げると、シルヴァレートは伝票を掴んで会計をするために席を立った。
(何でこんなことになってるの?)
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