31 / 32
第30章 永遠の愛とともに
しおりを挟む
「あの時、あなたは私に変身して、グローバル大統領を殺そうとした。しかし、あなたのESP波は強大すぎたのよ。私はそれを感知して、瀕死の重傷を負った彼をテレポートさせたわ。彼は今、誰も知らない安全な場所でコールド・スリープ治療を受けている。そろそろ完治する頃だわ。彼の無事な姿をSHLが確認すれば、GPSに宣戦布告する口実がなくなる」
「……」
「私を殺したければ、殺しなさい! でも、例え私が死んでも、この戦争は絶対に止めてみせるわ!」
鮮血にまみれた全身を、怒りの炎に包みながらテアが高らかに宣言した。
「くッ……! 貴様、その生意気な口をきいたことを後悔させてやるわ! あれを出しなさい!」
ソルジャー=スコーピオンが、右隣に立つバイオ・ソルジャーに命じた。命令を受けた男が、スペース・ジャケットの胸ポケットから、円筒状のケースを取り出して赤いサソリに手渡した。<テュポーン>の徽章である百頭竜が描かれた銀色のケースである。
「……! それは……」
テアはそのケースに見覚えがあった。<テュポーン>の虜囚となっていた時に、毎日のように眼にした物だったのである。
(アフロディジカル……?)
テアのプルシアン・ブルーの瞳に、紛れもない怯えが走った。横目で、アフロディジカルの魔力に犯されたロザンナを見る。全身から鮮血を流しながら、彼女は床に倒れこんでいた。強烈な禁断症状が、彼女の意識を奪ったのである。
「これを射たれても、生意気な口をきいていられるかしら?」
ケースを開け、赤い液体の入った無針注射器を取り出しながら、ソルジャー=スコーピオンが言った。
テアの脳裏に、惑星イリスでの凄まじい凌辱が甦る。明確な恐怖が、<銀河系最強の魔女>を襲った。
「や、やめて……」
テアの右腕を、ソルジャー=スコーピオンが掴んだ。逃げようにも、彼女の強力なESPのため、テアは身動きひとつ出来ない。
「いやああぁ……! やめ……アウッ!」
悲鳴を上げるテアの右腕に、無針注射器が押しつけられた。赤い液体が気化しながら、彼女の白い肌に吸収されていく。
「あ……くうッ……」
アフロディジカルは超即効性である。テアはその魔力を即座に実感させられた。
全身から汗が噴出する。呼吸が、そして鼓動が、目に見えて早くなる。そして、体の芯が熱く火照り始める。強力な催淫効果を誇る<悪魔の薬>が、<銀河系最強の魔女>を襲い始めた。
テアのプルシアン・ブルーの瞳が、霞がかかったように焦点を失った。
「どう、感想は……?」
そう言うと、ソルジャー=スコーピオンがテアの首筋を撫でた。
「くうッ……!」
たったそれだけで、テアの全身を紛れもない官能が走り抜ける。彼女の美しい瞳から、涙が溢れた。
「やめ……て……」
哀願するように、テアがソルジャー=スコーピオンを見上げた。
「どう、グローバル大統領の居場所を吐く気になった?」
「……」
テアはソルジャー=スコーピオンから顔を背けると、目を伏せた。
(ダメよ、テア。こんな事で、負けちゃダメ……)
全身を襲う官能の嵐と闘いながら、テアが唇を噛みしめた。
「そう。でも、そろそろ男が欲しくなってるんじゃない? <銀河系最強の魔女>が<テュポーン>のバイオ・ソルジャーに襲われるのも、滅多にない見せ物だわ……」
そう告げると、ソルジャー=スコーピオンが横の男たちに眼で合図した。
「……!」
(私をこいつらに凌辱させる気……?)
下卑た嗤いを浮かべながら、四人のバイオ・ソルジャーたちが、テアに近づいて来る。男たちは何れも、残忍な光を双眸に浮かべ、涎を垂れ流さんばかりである。<銀河系最強の魔女>と呼ばれても、テアは若い女性である。自分の身を襲う恐怖に、全身が震えた。
(ジェイ、助けて……!)
愛する男の名を、心の中で叫ぶ。
「白状するなら、今のうちよ。最後にもう一度チャンスをあげる。グローバル大統領は何処にいるの?」
「誰が……言うもんですか……!」
アフロディジカルの魔力で、熱を帯びたように顔を赤らめながら、テアが言った。
「強情な女ね! 少し、可愛がってやんなさい!」
ソルジャー=スコーピオンの言葉を待っていたかのように、四人の男たちがテアに襲いかかった。銀色のスペース・ジャケットが引き裂かれ、テアの白い肌が露出される。
「いやあああぁ……!」
淡青色の髪を振り乱して、テアが絶叫した。
その時……!
『いい加減にしろッ!』
圧倒的なプレッシャーを有するテレパシーが周囲を席巻した。
「ぎゃッ!」
「ぐわッ!」
「ひいッ!」
「がッ!」
四人のバイオ・ソルジャーが、断末魔の悲鳴を上げて倒れ込む。あまりの凄まじいESPに、能力が劣る彼らは脳を焼かれて即死したのだった。同時に、五基あったESPジャマー・タイプΣが瞬時に破壊された。
「だ、誰ッ?」
頭を抑え片膝をつきながらも、ソルジャー=スコーピオンはESPシールドを張って即死を免れていた。
「大丈夫か、テア?」
彼女の横にテレポート・アウトすると同時に、シュン=カイザードがテアを助け起こした。
「シュン……」
テアが両手で、胸を隠しながら立ち上がる。バイオ・ソルジャーに襲われ、上半身裸であった。
「男が欲しいんなら、あんな奴らじゃなく、俺が抱いてやろうか?」
美しいテアのセミヌードを眩しそうに見つめながら、シュンが笑った。
「ばか……。 ジェシカに……殺されるわよ……」
アフロディジカルの魔力で、汗ばみ桜色になっている肌を出来るだけ隠しながら、テアが恥ずかしそうに告げた。
「もっと拝んでいたいけど、残念だな。これを着ていろ」
シュンは自分の上着を脱ぐと、テアに渡した。
「ありがとう……、お礼に、あなたが私の裸を見たことは……、ジェシカに内緒にしておくわ……」
そう告げると、テアは彼が手渡したスペース・ジャケットを身につけた。
「さて、あいつを始末するのか?」
シュンがソルジャー=スコーピオンを睨みつけながら訊いた。
「そうね。私がやりたいけど……、代わりにお願い……。あの薬のせいで、体が……いうことをきかないの……」
テアが潤んだ瞳でシュンに言った。呼吸が荒い。全身を襲う官能の嵐が、まだ抜け切っていないのだ。
「誰だ、貴様は……?」
シュンの強烈なテレパシーを完全にブロックしかねたソルジャー=スコーピオンが、ふらつく足取りで訊ねた。
「<パルテノン>を破壊したESPとでも言えば、お前にも分かるか?」
「……! 貴様が……?」
ソルジャー=スコーピオンの瞳に、怯えが走った。
GPS、SHL両軍合わせて二百万人の犠牲とともに、機動要塞<パルテノン>を破壊したESPは、<テュポーン>でもあまりに有名であった。
「お前と闘うつもりはない。お前に免じて、ロザンナは置いていこう」
そう言うと、ソルジャー=スコーピオンの全身がESP特有の光彩に包まれた。
「テレポートするわ……!」
テアが叫んだ。
「逃がすかッ!」
シュンが怒鳴った瞬間、想像を絶するテレパシーが脳裏に響き渡った。
『<テュポーン>のファースト・ファミリーが、敵前逃亡かッ?』
「きゃあッ!」
「うわッ!」
「ひッ……!」
テアたちは思わず耳を塞いで、地面に崩れ落ちた。凄まじい壮絶さを伴うテレパシーが世界を席巻した。
テア、シュン、ソルジャー=スコーピオンは、何れもΣナンバーのESPである。その三人を圧倒して余りある、超烈な存在感を有するテレパシーであった。
「ジ、ジュピター様……!」
恐怖のあまり、全身を震撼させながらソルジャー=スコーピオンが呟いた。
「ジュピター……? こいつが……?」
シュンも愕然として呟く。全宇宙最強のESPと呼ばれたジェイ=マキシアンをさえ凌駕するESPを有する彼が、戦慄のあまり立ち竦んだ。
「そうよ……、この男が、ジェイの仇敵よッ!」
<銀河系最強の魔女>が、プルシアン・ブルーの瞳に、凄まじい怒りを浮かべて言った。
『久しぶりだな、テア=スクルト。そして、<パルテノン>を破壊したESP、シュン=カイザード』
(俺を知っているッ?)
シュンが驚いた。
『お前が、テアの新しいパートナーか?』
圧倒的なジュピターのテレパシーが訊ねた。
「違うわ! 私のパートナーは、ジェイ=マキシアンただ一人よッ!」
淡青色の髪を靡かせながら、テアが叫んだ。
(パートナーっていうのは……!)
シュンはテアの言葉から、SH にとって『パートナー』がどのような意味を持つのかを理解した。
テアたちにとって『パートナー』というのは、何ものにも代え難い自分の半身なのだと言うことを……。
『それは、失礼した。ところで、ジェシカ=アンドロメダにもう会ったか?』
「ジェシカ? 彼女がどうしたの?」
ジュピターの言葉をシュンが慌てて遮る。
「待て、ジュピター! あのことはまだテアに告げていない!」
「あのことって……?」
真剣な表情で宙を見上げるシュンを、テアのプルシアン・ブルーの瞳が射抜くように見つめた。
『そうか……。では、私が代わりに告げてやろう。テア、よく聞け!』
「待て、ジュピター!」
シュンの叫びを無視して、ジュピターが告げた。
『ジェイ=マキシアンは生きている!』
「なッ……!」
『彼に会いたければ、私のもとにやって来いッ! お前のパートナーに会わせてやろう!』
「そんな……!」
衝撃のあまり、テアは言葉を失った。
『詳しくは、アンドロメダ大尉に訊くがいい! ソルジャー=スコーピオン、ロザンナ王女を連れて、ネオ・ジオイドへ戻ってこい!』
「はい、ジュピター様……」
ソルジャー=スコーピオンの全身が、再びESP波特有の光彩に包まれる。
「そうはさせない! ロザンナ王女を置いて行け!」
シュンが全身から青い炎を噴出しながら叫んだ。Σナンバー特有の光彩である。
『慌てるな、シュン=カイザード。GPSの科学力では、ロザンナ王女を治すことは出来ない。我々が彼女を完治させてやろう』
ジュピターがそう告げた瞬間、シュンのESPがブロックされた。
「何ッ……?」
五基の新型ジャマーを、一瞬で破壊するほどの威力を持つΣナンバー最強クラスの能力が、完全にブロックされたのだ。
「シュン、私のESPも……!」
驚愕を美しい瞳に映し出して、テアが告げる。
銀河系最大の麻薬ギルド<テュポーン>の総統ジュピター。
銀河系を裏から支配する帝王の偉大なESPは、二人のΣナンバーのESPを完全に封じ込めたのであった。
「お前たちのESPで、ジュピター様に敵うと思ったか?」
ソルジャー=スコーピオンが高らかに笑った。
「何て、ESPなんだ……」
「ジュピター……!」
呆然と立ち尽くす二人のΣナンバーを横目に、ソルジャー=スコーピオンとロザンナの体がESP波特有の光彩に包み込まれた。
次の瞬間、テアとシュンの二人を残して、紅い髪の魔女と金髪碧眼の美女の姿が消失した。
『テア、ネオ・ジオイドにやって来い! ジェイ=マキシアンが待っているぞ!』
ジュピターのテレパシーが虚空に響きわたった。
「待って、ジュピター! ジェイが生きているって、本当なのッ?」
テアが絶叫した。
「落ち着け、テア!」
シュンがテアの腕を掴む。
「離して、シュン! ジュピターッ! 何処に行けば、ジェイに会えるのッ? ネオ・ジオイドって、何処なのッ?」
淡青色の髪を振り乱して、テアが叫んだ。
『また、会おう……』
ジュピターのテレパシーが、一方的に途切れた。
「ジュピターッ! 待ってッ!」
テアのプルシアン・ブルーの瞳から、涙が溢れ出た。
「ジェイは本当に、生きてるのッ? ジュピター……ッ!」
<銀河系最強の魔女>の絶叫が、衛星ガダルカナルの夜に響きわたった。
ジェイ=マキシアンへの永遠の愛とともに……。
「……」
「私を殺したければ、殺しなさい! でも、例え私が死んでも、この戦争は絶対に止めてみせるわ!」
鮮血にまみれた全身を、怒りの炎に包みながらテアが高らかに宣言した。
「くッ……! 貴様、その生意気な口をきいたことを後悔させてやるわ! あれを出しなさい!」
ソルジャー=スコーピオンが、右隣に立つバイオ・ソルジャーに命じた。命令を受けた男が、スペース・ジャケットの胸ポケットから、円筒状のケースを取り出して赤いサソリに手渡した。<テュポーン>の徽章である百頭竜が描かれた銀色のケースである。
「……! それは……」
テアはそのケースに見覚えがあった。<テュポーン>の虜囚となっていた時に、毎日のように眼にした物だったのである。
(アフロディジカル……?)
テアのプルシアン・ブルーの瞳に、紛れもない怯えが走った。横目で、アフロディジカルの魔力に犯されたロザンナを見る。全身から鮮血を流しながら、彼女は床に倒れこんでいた。強烈な禁断症状が、彼女の意識を奪ったのである。
「これを射たれても、生意気な口をきいていられるかしら?」
ケースを開け、赤い液体の入った無針注射器を取り出しながら、ソルジャー=スコーピオンが言った。
テアの脳裏に、惑星イリスでの凄まじい凌辱が甦る。明確な恐怖が、<銀河系最強の魔女>を襲った。
「や、やめて……」
テアの右腕を、ソルジャー=スコーピオンが掴んだ。逃げようにも、彼女の強力なESPのため、テアは身動きひとつ出来ない。
「いやああぁ……! やめ……アウッ!」
悲鳴を上げるテアの右腕に、無針注射器が押しつけられた。赤い液体が気化しながら、彼女の白い肌に吸収されていく。
「あ……くうッ……」
アフロディジカルは超即効性である。テアはその魔力を即座に実感させられた。
全身から汗が噴出する。呼吸が、そして鼓動が、目に見えて早くなる。そして、体の芯が熱く火照り始める。強力な催淫効果を誇る<悪魔の薬>が、<銀河系最強の魔女>を襲い始めた。
テアのプルシアン・ブルーの瞳が、霞がかかったように焦点を失った。
「どう、感想は……?」
そう言うと、ソルジャー=スコーピオンがテアの首筋を撫でた。
「くうッ……!」
たったそれだけで、テアの全身を紛れもない官能が走り抜ける。彼女の美しい瞳から、涙が溢れた。
「やめ……て……」
哀願するように、テアがソルジャー=スコーピオンを見上げた。
「どう、グローバル大統領の居場所を吐く気になった?」
「……」
テアはソルジャー=スコーピオンから顔を背けると、目を伏せた。
(ダメよ、テア。こんな事で、負けちゃダメ……)
全身を襲う官能の嵐と闘いながら、テアが唇を噛みしめた。
「そう。でも、そろそろ男が欲しくなってるんじゃない? <銀河系最強の魔女>が<テュポーン>のバイオ・ソルジャーに襲われるのも、滅多にない見せ物だわ……」
そう告げると、ソルジャー=スコーピオンが横の男たちに眼で合図した。
「……!」
(私をこいつらに凌辱させる気……?)
下卑た嗤いを浮かべながら、四人のバイオ・ソルジャーたちが、テアに近づいて来る。男たちは何れも、残忍な光を双眸に浮かべ、涎を垂れ流さんばかりである。<銀河系最強の魔女>と呼ばれても、テアは若い女性である。自分の身を襲う恐怖に、全身が震えた。
(ジェイ、助けて……!)
愛する男の名を、心の中で叫ぶ。
「白状するなら、今のうちよ。最後にもう一度チャンスをあげる。グローバル大統領は何処にいるの?」
「誰が……言うもんですか……!」
アフロディジカルの魔力で、熱を帯びたように顔を赤らめながら、テアが言った。
「強情な女ね! 少し、可愛がってやんなさい!」
ソルジャー=スコーピオンの言葉を待っていたかのように、四人の男たちがテアに襲いかかった。銀色のスペース・ジャケットが引き裂かれ、テアの白い肌が露出される。
「いやあああぁ……!」
淡青色の髪を振り乱して、テアが絶叫した。
その時……!
『いい加減にしろッ!』
圧倒的なプレッシャーを有するテレパシーが周囲を席巻した。
「ぎゃッ!」
「ぐわッ!」
「ひいッ!」
「がッ!」
四人のバイオ・ソルジャーが、断末魔の悲鳴を上げて倒れ込む。あまりの凄まじいESPに、能力が劣る彼らは脳を焼かれて即死したのだった。同時に、五基あったESPジャマー・タイプΣが瞬時に破壊された。
「だ、誰ッ?」
頭を抑え片膝をつきながらも、ソルジャー=スコーピオンはESPシールドを張って即死を免れていた。
「大丈夫か、テア?」
彼女の横にテレポート・アウトすると同時に、シュン=カイザードがテアを助け起こした。
「シュン……」
テアが両手で、胸を隠しながら立ち上がる。バイオ・ソルジャーに襲われ、上半身裸であった。
「男が欲しいんなら、あんな奴らじゃなく、俺が抱いてやろうか?」
美しいテアのセミヌードを眩しそうに見つめながら、シュンが笑った。
「ばか……。 ジェシカに……殺されるわよ……」
アフロディジカルの魔力で、汗ばみ桜色になっている肌を出来るだけ隠しながら、テアが恥ずかしそうに告げた。
「もっと拝んでいたいけど、残念だな。これを着ていろ」
シュンは自分の上着を脱ぐと、テアに渡した。
「ありがとう……、お礼に、あなたが私の裸を見たことは……、ジェシカに内緒にしておくわ……」
そう告げると、テアは彼が手渡したスペース・ジャケットを身につけた。
「さて、あいつを始末するのか?」
シュンがソルジャー=スコーピオンを睨みつけながら訊いた。
「そうね。私がやりたいけど……、代わりにお願い……。あの薬のせいで、体が……いうことをきかないの……」
テアが潤んだ瞳でシュンに言った。呼吸が荒い。全身を襲う官能の嵐が、まだ抜け切っていないのだ。
「誰だ、貴様は……?」
シュンの強烈なテレパシーを完全にブロックしかねたソルジャー=スコーピオンが、ふらつく足取りで訊ねた。
「<パルテノン>を破壊したESPとでも言えば、お前にも分かるか?」
「……! 貴様が……?」
ソルジャー=スコーピオンの瞳に、怯えが走った。
GPS、SHL両軍合わせて二百万人の犠牲とともに、機動要塞<パルテノン>を破壊したESPは、<テュポーン>でもあまりに有名であった。
「お前と闘うつもりはない。お前に免じて、ロザンナは置いていこう」
そう言うと、ソルジャー=スコーピオンの全身がESP特有の光彩に包まれた。
「テレポートするわ……!」
テアが叫んだ。
「逃がすかッ!」
シュンが怒鳴った瞬間、想像を絶するテレパシーが脳裏に響き渡った。
『<テュポーン>のファースト・ファミリーが、敵前逃亡かッ?』
「きゃあッ!」
「うわッ!」
「ひッ……!」
テアたちは思わず耳を塞いで、地面に崩れ落ちた。凄まじい壮絶さを伴うテレパシーが世界を席巻した。
テア、シュン、ソルジャー=スコーピオンは、何れもΣナンバーのESPである。その三人を圧倒して余りある、超烈な存在感を有するテレパシーであった。
「ジ、ジュピター様……!」
恐怖のあまり、全身を震撼させながらソルジャー=スコーピオンが呟いた。
「ジュピター……? こいつが……?」
シュンも愕然として呟く。全宇宙最強のESPと呼ばれたジェイ=マキシアンをさえ凌駕するESPを有する彼が、戦慄のあまり立ち竦んだ。
「そうよ……、この男が、ジェイの仇敵よッ!」
<銀河系最強の魔女>が、プルシアン・ブルーの瞳に、凄まじい怒りを浮かべて言った。
『久しぶりだな、テア=スクルト。そして、<パルテノン>を破壊したESP、シュン=カイザード』
(俺を知っているッ?)
シュンが驚いた。
『お前が、テアの新しいパートナーか?』
圧倒的なジュピターのテレパシーが訊ねた。
「違うわ! 私のパートナーは、ジェイ=マキシアンただ一人よッ!」
淡青色の髪を靡かせながら、テアが叫んだ。
(パートナーっていうのは……!)
シュンはテアの言葉から、SH にとって『パートナー』がどのような意味を持つのかを理解した。
テアたちにとって『パートナー』というのは、何ものにも代え難い自分の半身なのだと言うことを……。
『それは、失礼した。ところで、ジェシカ=アンドロメダにもう会ったか?』
「ジェシカ? 彼女がどうしたの?」
ジュピターの言葉をシュンが慌てて遮る。
「待て、ジュピター! あのことはまだテアに告げていない!」
「あのことって……?」
真剣な表情で宙を見上げるシュンを、テアのプルシアン・ブルーの瞳が射抜くように見つめた。
『そうか……。では、私が代わりに告げてやろう。テア、よく聞け!』
「待て、ジュピター!」
シュンの叫びを無視して、ジュピターが告げた。
『ジェイ=マキシアンは生きている!』
「なッ……!」
『彼に会いたければ、私のもとにやって来いッ! お前のパートナーに会わせてやろう!』
「そんな……!」
衝撃のあまり、テアは言葉を失った。
『詳しくは、アンドロメダ大尉に訊くがいい! ソルジャー=スコーピオン、ロザンナ王女を連れて、ネオ・ジオイドへ戻ってこい!』
「はい、ジュピター様……」
ソルジャー=スコーピオンの全身が、再びESP波特有の光彩に包まれる。
「そうはさせない! ロザンナ王女を置いて行け!」
シュンが全身から青い炎を噴出しながら叫んだ。Σナンバー特有の光彩である。
『慌てるな、シュン=カイザード。GPSの科学力では、ロザンナ王女を治すことは出来ない。我々が彼女を完治させてやろう』
ジュピターがそう告げた瞬間、シュンのESPがブロックされた。
「何ッ……?」
五基の新型ジャマーを、一瞬で破壊するほどの威力を持つΣナンバー最強クラスの能力が、完全にブロックされたのだ。
「シュン、私のESPも……!」
驚愕を美しい瞳に映し出して、テアが告げる。
銀河系最大の麻薬ギルド<テュポーン>の総統ジュピター。
銀河系を裏から支配する帝王の偉大なESPは、二人のΣナンバーのESPを完全に封じ込めたのであった。
「お前たちのESPで、ジュピター様に敵うと思ったか?」
ソルジャー=スコーピオンが高らかに笑った。
「何て、ESPなんだ……」
「ジュピター……!」
呆然と立ち尽くす二人のΣナンバーを横目に、ソルジャー=スコーピオンとロザンナの体がESP波特有の光彩に包み込まれた。
次の瞬間、テアとシュンの二人を残して、紅い髪の魔女と金髪碧眼の美女の姿が消失した。
『テア、ネオ・ジオイドにやって来い! ジェイ=マキシアンが待っているぞ!』
ジュピターのテレパシーが虚空に響きわたった。
「待って、ジュピター! ジェイが生きているって、本当なのッ?」
テアが絶叫した。
「落ち着け、テア!」
シュンがテアの腕を掴む。
「離して、シュン! ジュピターッ! 何処に行けば、ジェイに会えるのッ? ネオ・ジオイドって、何処なのッ?」
淡青色の髪を振り乱して、テアが叫んだ。
『また、会おう……』
ジュピターのテレパシーが、一方的に途切れた。
「ジュピターッ! 待ってッ!」
テアのプルシアン・ブルーの瞳から、涙が溢れ出た。
「ジェイは本当に、生きてるのッ? ジュピター……ッ!」
<銀河系最強の魔女>の絶叫が、衛星ガダルカナルの夜に響きわたった。
ジェイ=マキシアンへの永遠の愛とともに……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる