魔王の娘(6歳)は勇者が欲しい

わたちょ

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魔王とウィンディーネ

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 魔王が彼女に出会ったのはいまから十数年前、まだマーナが産まれる前のことであった。
 それは劇的な出会いで、そしてそこから始まったのは甘く美しい恋だった。


 その頃の魔王は魔界のことも表の世界のことも何もかもがどうでもよかった。何もかもがどうでもよくただ己が強くありさえすればよかった。力だけを追い求めていた。何のためにと問われても魔王はその答えを持ってはいなかった。ただただ強くありたかった。
 何もない場所で生れ何もないままに生きた魔王にはそれしかなかったのだ。
 そうして強さを追い求めた魔王は四大魔族とたたえられるほどに強くなり、魔族の中でも満足に戦えるものはほとんどいなくなっていた。それでも魔王は力を求めた。すでに充分なほどの強さを得ていても満足はできずに強くなるための道を追い求めていた。
 そうして探した求めたのは全ての力の源ともいわれる世界樹であった。
 それを手に入れることができれば誰より強くなれる。強くなってどうなるのかなんて分からないのに魔王はそれを探していた。
 そして、その場に足を踏み入れていた。
 不思議な場所だった。人を拒絶するような冷たさを感じながら、すべてを許すかのような暖かさもあった。きらきらと眩いほどに全体が輝きながら緑が生い茂り、真ん中には巨大な気が合った。天にまで届きそうなほど立派な木。
 誰に聞かなくとも一目見て魔王はこれこそが世界樹であると気付いた。
 圧倒されながらも魔王はその木に手を伸ばした。その時、傍で見ている彼女のことに気付いたのだ。貴様はなんだと魔王は問いかけた。彼女はその金色の目を大きく見開かせ、そして長く美しい青色の髪を揺らしていた。私が見えるのそうその口は動いてそれから貴方は何をしに来たのと魔王に聞いた
 魔王は答えなかった。何だともう一度問いかける。彼女の目が魔王を見てくる。吸い込まれそうなほど深い目。見ていられなくなって魔王は目をそらした。
 この木が欲しいの
 女が聞いた。魔王はそうだと答える。どうしてと女はまた聞いた。理由などないと魔王は答えた。
理由などないけど強くなりたい。
 魔王がそう言うのに女は不思議そうにしてから貴方はこの世界のことも自分のこともよく分かってないのね。ねえ、それならお話をしましょうと魔王を誘ったのだった。魔王は何のためにと言った。女は少し遠い目をして何のためかしらと呟く。その声は魔王に聞かせているものではないように聞こえた。
 不思議な魅力を持った女だった。
 女は納得できるような答え何も言っていないのにもかかわらず、気付けば魔王は頷いてしまっていた。戦う理由もなく戦う日々に魔王自身が疲れてしまっていたのもあるのかもしれなかった。
 魔王は女に話をすることを望んだ。 


 それから魔王は女からいろんなこの世界の話を聞いた。女が話す世界は美しく色鮮やかに輝いていた。時折汚い所だってあったけれどそれでも美しくて魔王は女の話に夢中になっていた。女の話をもっともっと聞いていたいと思い、その日以降何度も女に会いに行った。
 女の話を聞くうちに世界樹のことなどどうでもよくなっていた。
 女が話す話はとても興味深く、そして魔王の心に深く残った。やがて魔王は自ら世界を見てみたいと思うようになり、魔界の外を飛び出して世界中を回り始めた。
 女が話してくれた景色を見、教えられた人々の営みを見つめた。話を聞くのではなく自分の目で見る世界は話と違って落胆することもあれば、聞いていた者よりずっと素晴らしくて目が離せなくなることもあった。
 たちまち魔王は世界のとりこになっていた。
 世界中を駆け回り、そうしながら女の元に行っては女に話をねだった。時には自分が見た初めての光景、女の話にもなかった風景を語ることもあった。見つけた綺麗なものを女に持ち帰ることも多くあった。
 始め女は美しくも冷たい顔をしていたが次第に良く笑うようになって魔王に語り掛ける声も優しいものへとなっていていた。
 二人でたくさんの話をした。
 世界樹の下二人で過ごす時間が魔王にとっては何より大切な宝物になっていき、そして女の方も何か特別なものを感じてくれているようだった。
 二人はそうして特別な関係へとなっていた。
 女の名前はウィンディーネ。この世界を守る五つの世界樹、その一つ水を司る世界樹の精霊であった。
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