34 / 44
勇者と魔界
しおりを挟む
うわあああああああああああああああ!
マーナの誕生日パーティの翌日、魔王城の中で目が覚めた勇者は朝から大きな声を上げていた。
「大丈夫ですか。勇者様」
目の前にはにっこりと笑うマーナの姿。ばくばくと勇者の心臓は鳴り響いていた。知らぬ間に眠っていた部屋に異性がいるのだから当然の反応ともいえる。マーナの場合は後ろにいる魔王のことを思い出してしまって
さらに恐ろしくなってしまうのだ。
「だ、大丈夫だよ。マーナちゃん。起こしに来てくれたのか。ありがとう」
「いえ、それよりも朝食の準備できていますよ。早くいらしてください」
「ああ。分かった」
震えた声で答えた勇者に対してマーナは何処までも笑顔だった。純粋無垢な笑みを向けてくる。心臓を落ち着かせながら勇者は身支度を整えていく。マーナは去るかと思えば去ることなく勇者の身支度が終わるのを待っていたので大急ぎになってしまった。
行こうかと手を差し出せばとても嬉しそうに頷く。
朝食は魔王とも一緒だった。他にスイレイも一緒に行って四人で朝食を食べた。魔界での食事はいつぞやのピクニックの時よりもおぞましいものが出てきた。それでも楽し気な子供たちの雰囲気を壊さぬようにと黙々と食べた勇者を魔王が凄いななんて言っていてわざとだったことがよく分かる出来事だった。
朝食を食べ終えた後は魔王を覗いた三人は魔界観光へと出かけた。
「……これは絶景だな」
呟く勇者の声には少しだけだが恐怖が混ざっていた。三人が今いるのは魔界一高いと言う山頂で、見下ろす景色は下の地面さえも見えないほどであった。しかも山頂と一応言っているものの本当に山と言っていいのか分からないほどには細長く勇者と子供二人が立っているだけでも少し余裕がある程度大人が五人もいればすぐにぎゅうぎゅう詰めになりそうなほと狭かった。
足元から吹きすさぶ風が恐ろしくこれは絶対観光にはならないななんて現実逃避の一環に勇者はそんなことを思った。
ただマーナとスイレイ二人の子供たちはけろっとした顔で立っている。全く怖くなさそうだった。
「ほら勇者様見てください、あそこ。
あそこから崖になっておりますでしょう。あそこから先は何処にもつながっていなくて魔界はそこで途切れているのです。それがぐるっと一周して円の形になっていますので、こちらの世界は表の世界よりは広くないのですよ。
ただ狭い世界の中環境の変化が表の世界よりも激しくて人の住む場所としては適していないのではないかと思いますね。環境の変化に対応するためなのか様々な形をした種が多く、それぞれの環境に適した姿をしているのです。
ほら、スイレイなんかはあちらの山が燃えている地区で生れたんです」
「勇者様も後で是非きてください。ここから出は見えませんが、すこしてまえにちょうどいい大きさの岩があってそこなら熱さを気にする必要はないと思います。
子供たちがにこにこと笑う。スイレイがきらきらとした瞳で見てくるけれどそれより怖いと思っている勇者にはあまり伝わっていない。何とか分かるのは魔界が思っていたより狭いと言う事と、魔族は目がいいと言う事だ。人間よりは色んな所が鋭いのは分かっていたことだが、子供でもすごかった。勇者には二人が言う景色は何一つ見えていなかった。
あまり悲しませたくはないけど、ここで嘘を言ってもいいものかと悩んでさすがに勇者は今回は素直に見えないと言っていた。魔族二人が驚いた顔をしていた。
「ごめんな。本当に申し訳ないんだけど、俺には何個か立っている山が見えるだけで、それ以外は何も見えないんだ。
だから見える場所に連れていてくれないか」
怖いからとはさすがに言わず懇願した。
分かりましたとマーナとスイレイは素直に頷いてドラゴンを呼び寄せていた。ここまで来たのもドラゴンだった。近くに来たドラゴンを良い子ねとマーナが撫でる。何でも聞いた話だとそのドラゴンはマーナのペットらしかった。
ドラゴンもてっきり魔族だと思っていた勇者は驚くと同時に長年の疑問も解けていた。ずっと乗られる魔族と乗る魔族がいることが気になっていたのだ。上下関係などもあるのだろうがそれにしても何かおかしくないかと思っていたが、そもそも片方は魔族でなかったとは。勇者は魔界に住むすべてが魔族だと思っていたが二人の話によるとそうではなく他種族とも意思疎通ができるものだけが魔族と呼ばれそれいがいは魔獣と呼ばれる獣だったらしい。
知らないことがたくさんあるんだなとその時勇者は少しだけ己の無知を反省した。そしてこれからはできる限り多くのことを学んでいこうと思ったりもしたのだが、
学ぶって難しいなと勇者は遠い目をしていた。
崖の上から手ごろな岩にまで映ってきた三人だが今度は凍えるように寒かった。ぎゅっとマーナとスイレイが勇者の足元に抱き着いてきている。
「勇者様ここは氷河地帯です。ここで暮らすものも多くいるのですが、私たちは寒くてあまりここには来ませんわ。ただお父様なんかはよく来ています」
がたがたがたがた歯をならして勇者はもう別の所にいこうかなんて言ってしまっていた。一つひとつしっかり見て学びたい気持ちはあるが、寒さにたえられないのだった。分かりましたとドラゴンがまた来る。次の場所に行きましょうとドラゴンの背に乗り飛び立っていた。
マーナの誕生日パーティの翌日、魔王城の中で目が覚めた勇者は朝から大きな声を上げていた。
「大丈夫ですか。勇者様」
目の前にはにっこりと笑うマーナの姿。ばくばくと勇者の心臓は鳴り響いていた。知らぬ間に眠っていた部屋に異性がいるのだから当然の反応ともいえる。マーナの場合は後ろにいる魔王のことを思い出してしまって
さらに恐ろしくなってしまうのだ。
「だ、大丈夫だよ。マーナちゃん。起こしに来てくれたのか。ありがとう」
「いえ、それよりも朝食の準備できていますよ。早くいらしてください」
「ああ。分かった」
震えた声で答えた勇者に対してマーナは何処までも笑顔だった。純粋無垢な笑みを向けてくる。心臓を落ち着かせながら勇者は身支度を整えていく。マーナは去るかと思えば去ることなく勇者の身支度が終わるのを待っていたので大急ぎになってしまった。
行こうかと手を差し出せばとても嬉しそうに頷く。
朝食は魔王とも一緒だった。他にスイレイも一緒に行って四人で朝食を食べた。魔界での食事はいつぞやのピクニックの時よりもおぞましいものが出てきた。それでも楽し気な子供たちの雰囲気を壊さぬようにと黙々と食べた勇者を魔王が凄いななんて言っていてわざとだったことがよく分かる出来事だった。
朝食を食べ終えた後は魔王を覗いた三人は魔界観光へと出かけた。
「……これは絶景だな」
呟く勇者の声には少しだけだが恐怖が混ざっていた。三人が今いるのは魔界一高いと言う山頂で、見下ろす景色は下の地面さえも見えないほどであった。しかも山頂と一応言っているものの本当に山と言っていいのか分からないほどには細長く勇者と子供二人が立っているだけでも少し余裕がある程度大人が五人もいればすぐにぎゅうぎゅう詰めになりそうなほと狭かった。
足元から吹きすさぶ風が恐ろしくこれは絶対観光にはならないななんて現実逃避の一環に勇者はそんなことを思った。
ただマーナとスイレイ二人の子供たちはけろっとした顔で立っている。全く怖くなさそうだった。
「ほら勇者様見てください、あそこ。
あそこから崖になっておりますでしょう。あそこから先は何処にもつながっていなくて魔界はそこで途切れているのです。それがぐるっと一周して円の形になっていますので、こちらの世界は表の世界よりは広くないのですよ。
ただ狭い世界の中環境の変化が表の世界よりも激しくて人の住む場所としては適していないのではないかと思いますね。環境の変化に対応するためなのか様々な形をした種が多く、それぞれの環境に適した姿をしているのです。
ほら、スイレイなんかはあちらの山が燃えている地区で生れたんです」
「勇者様も後で是非きてください。ここから出は見えませんが、すこしてまえにちょうどいい大きさの岩があってそこなら熱さを気にする必要はないと思います。
子供たちがにこにこと笑う。スイレイがきらきらとした瞳で見てくるけれどそれより怖いと思っている勇者にはあまり伝わっていない。何とか分かるのは魔界が思っていたより狭いと言う事と、魔族は目がいいと言う事だ。人間よりは色んな所が鋭いのは分かっていたことだが、子供でもすごかった。勇者には二人が言う景色は何一つ見えていなかった。
あまり悲しませたくはないけど、ここで嘘を言ってもいいものかと悩んでさすがに勇者は今回は素直に見えないと言っていた。魔族二人が驚いた顔をしていた。
「ごめんな。本当に申し訳ないんだけど、俺には何個か立っている山が見えるだけで、それ以外は何も見えないんだ。
だから見える場所に連れていてくれないか」
怖いからとはさすがに言わず懇願した。
分かりましたとマーナとスイレイは素直に頷いてドラゴンを呼び寄せていた。ここまで来たのもドラゴンだった。近くに来たドラゴンを良い子ねとマーナが撫でる。何でも聞いた話だとそのドラゴンはマーナのペットらしかった。
ドラゴンもてっきり魔族だと思っていた勇者は驚くと同時に長年の疑問も解けていた。ずっと乗られる魔族と乗る魔族がいることが気になっていたのだ。上下関係などもあるのだろうがそれにしても何かおかしくないかと思っていたが、そもそも片方は魔族でなかったとは。勇者は魔界に住むすべてが魔族だと思っていたが二人の話によるとそうではなく他種族とも意思疎通ができるものだけが魔族と呼ばれそれいがいは魔獣と呼ばれる獣だったらしい。
知らないことがたくさんあるんだなとその時勇者は少しだけ己の無知を反省した。そしてこれからはできる限り多くのことを学んでいこうと思ったりもしたのだが、
学ぶって難しいなと勇者は遠い目をしていた。
崖の上から手ごろな岩にまで映ってきた三人だが今度は凍えるように寒かった。ぎゅっとマーナとスイレイが勇者の足元に抱き着いてきている。
「勇者様ここは氷河地帯です。ここで暮らすものも多くいるのですが、私たちは寒くてあまりここには来ませんわ。ただお父様なんかはよく来ています」
がたがたがたがた歯をならして勇者はもう別の所にいこうかなんて言ってしまっていた。一つひとつしっかり見て学びたい気持ちはあるが、寒さにたえられないのだった。分かりましたとドラゴンがまた来る。次の場所に行きましょうとドラゴンの背に乗り飛び立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~
小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。
そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。
幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。
そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――?
「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」
鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。
精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる