死にたがりの悪役令嬢

わたちょ

文字の大きさ
47 / 48
第二部

再会する悪役令嬢

しおりを挟む

 どうしてこう女性の買い物と言うのは長いのでしょうか。楽しげに笑う少女たちを見るのは微笑ましいのですが少し疲れてきてしまいましたわ。早く決まらないものかしら……
「トレーフルブラン様は何れにいたしますか」
「私はあの白いのにしようと思いますわ。どうでしょうか」
「まあ、素敵ですわ! きっととてもよくお似合いになります」
「アクセサリー等はどういたしますか」
「そうですわね。あのチョーカーが良いのではと思っているのですがどうでしょうか」
「まあ、素晴らしいですわ。とてもよい組み合わせですわ。さすがトレーフルブラン様です」
「決めるのも早くて羨ましいですわ。私なんていつも迷ってしまいますのに」
「ほんとだよねーー。なんでそんなに早く決めれるの。私まだ決まらないよーー。やっぱりあれかなーー」
「いえ、あれよりはさやか様の場合はあちらの方がいいんじゃいですか」
「やっぱり。でもーー」
 あれなどはとまた少女たちが話し出すのにほぅと息をついてしまいます。これはまだまだ長そうですわ。
 先生がいなくなってからもう半年近く経ってしまいました。先生は見つからないまま今日で二年も終わってしまいます。修了式が終わり、夜には毎年恒例の学年末のパーティー。今は四人娘やさやかさんとパーティーで着るドレスを買いに着ています。本当はもっと早く用意する予定でしたのですが、私たち六人の予定が中々合わずに今日になってしまいました。私は店のなかのものを、一通り見たら何にするのか大体決めていたのですが、皆様が楽しそうに何れにするか迷っていたので言えずにいました。聞かれてやっと云えたのですが、みんなはまだまだ決めかねているようで……。
 みなさんの様子を見ているのは本当に楽しいのですが、……でもやっぱり長いですわね。
 げっと嫌そうな声が聞こえてきたのにはぁぁとわざとらしくため息をついてやりました。ドレスをなんとか決め終え時間もあるので一度みんなと別れた私は学園に戻りテラスへと向かいました。本当は先生の部屋に行きたかったのですが、校舎のドアが開いていなかったのですよね。先生の部屋にはもうなにもないのですが、それでも先生の部屋で過ごした思いではあるように思え半年の間かかすことなく通っていました。一人になりたいときなどは彼処に行くのが好きでした。行けなかったのは残念ですが一人になりたかったのでテラスに来たのですがそこには先客、セラフィード様がいて彼は私を見て明らかに嫌そうな顔をしてくださったのです。
「女性に向けてそんな顔をするのは失礼ですわよ。セラフィード様」
「……すまない。だがお前がこんなタイミングで来るから……」
「はい?」
「何でもない。それよりどうしてここにさやかたちと今日のドレスを買いに行ったんじゃないのか」
「終わったから来たんですよ」
 なに!とセラフィード様は目を見開き信じられないと声をあげました。
「終わっただとあれの買い物が! まだ二時間しか経ってないのに。嘘だろ。さやかと買い物に行くと最低でも四時間は掛かるぞ」
 なんでそんなに早く終わるんだとセラフィード様が云うのにいや二時間は全く早くありませんわよと云いたくなり云わないようにするのが大変でした。何とかたまたまですわと口にしました。買い物行くと三十分もしないうちにもう嫌だって分かりやすく顔に出すから腹が立つのと面白いのでついついそれを見たいために五時間とか振り回してしまうと言うのをさやかさんから聞いています。
「乙女の買い物は長いものなんですよ」
「お前はいつも早かったが」
「…………人にもよるんですの。でも大抵の乙女の買い物は長いものなんです」
 はぁとセラフィード様が重いため息をつきました。
「何です。そんなにいやなんですか」
「いや、いやと言う訳じゃないんだが……女と言うのは面倒だと。買い物は長いし、話し出すと止まらない。誕生日だなんだとこまめに祝ってやらないと怒る」
 面倒だとため息ごとセラフィード様は言います。たまに疲れると言うのにまあ仕方ないことですわねと言いました。私だって誕生日やお祝い事は祝ってもらいたいですしと言えばえっとセラフィード様は驚いた声をあげます。
「そんなの当然でしょう。男のかたがどう思うかは分かりませんが祝ってもらえたら大切にされているようでうれしいではないですか。たくさん話すのだって二人で時間を共有したいからですわ。同じことを知っていたいのです」
「……だがお前はそんなことしなかったじゃないか」
「だってセラフィード様は長いお話は話し半分で殆ど聞かないじゃないですか。聞いてくださいなんて言えるほど我が儘にもなりれませんでしたしね。それなのに祝ってほしいだなんて言えませんでしたのよ」
 黙ってしまったセラフィード様は罰が悪そうに俯いてからならといいました。
「グリシーヌ先生には言えたのか」
 今度は私が黙る番でした。数分沈黙してしまいます。
「先生とはそんな仲ではありませんでしたわ」
 何とか吐き出したのにそうかとセラフィード様が言いました。私たちの間を沈黙が走ります。そう言えばとセラフィード様が声をあげます。
「今日のパーティー、来賓が来るんだが聞いているか?」
「来賓?? 何時もの方々の事ですか」
「いや、そうじゃない。実は昨日からお忍びである国の方々がこの国に来ていて、その人たちがパーティーにも来るんだ」
「ああ、そう言えば何処ぞの国の偉い手が昨日突然来たと言う話はブランリッシュから聞きましたわね。あの子とても機嫌が悪かったのですがどんな失礼な方々なんですの」
 何でそんな話をいきなりと思いながら話していて思い出したのは朝のブランリッシュの事でした。ブランリッシュは勉強のため最近はセラフィード様の元で過ごしているのですが、朝珍しく帰ってきたかと思うとその話をしていったのです。かなり不機嫌でそんなにあれな人達だったのかとかわいそうになったものです。セラフィード様も大丈夫ですかととえば、何故かセラフィード様はとても奇妙な顔をしました。何といっていいか分からないと言うようなそんな顔です。
「いや、失礼ではなかったが……。ただ大丈夫でもなかったと言うか」
 歯切れ悪く話ははぁとため息をセラフィード様はつく。何かありましたのと聞くのに返ってくるのは何でもないと言う言葉です。
「まあ、色々はあったんだが…………なあ、トレーフルブラン」
 疲れたような顔をしながらセラフィード様が私を見ました。すがるような目に見えたのに何ですのと言います。言いにくそうにしながらそれでもセラフィード様は口を開きました
「俺が今でもお前のこと好きだっていたらどうする」
 きょとんと瞬きをしてしまいます。何を言われたのか少しの間考えてはぁと盛大なため息をついてあげました。
「何も致しませんわ。だって私は貴方のことをもう何も思っていませんし、それに今は先生がいますしね。私は彼にまた会える日が来るのを待っているんですの」
「そうか」
「それよりバカなこといっているんじゃありませんわよ。さやかさんといい感じだと言うのに浮気でもするつもりでしたの」
「……………いや、ただまあ、最後にな」
 不思議なことを云うのでもうとっくに最後は迎えたでしょと言ってしまいました。そうするとそうなんだけどとまた歯切れ悪くセラフィード様は口にしました。
「パーティーが始まったらお前もわかるさ……」




 わぁわぁと聞こえてくる声に私は信じられない思いでいました。学年末のパーティーは何時もよりずっと華やかなもので、それらを生徒たちが楽しんでいたときにやって来た先生たちがこれから来賓が来ることを告げました。その告げられた来賓方が誰なのかを理解できませんでした。呆然とする私。周りはがやがやとしていました。四人娘とさやかさん、ルーシュリック様がえっと云う顔をして顔を見合わせていました。それって、もしかしてと彼らが口々に言います。彼らの様子を見て何を言われたのか少しずつ理解できはじめました
 来賓はドランシス国からのお客人、国王の一行であると確かに先生は言いました。鎖国状態であるドランシスからお客、それも国王と聞いて周りはざわめいています。私はそれだけではいられませんでした。
「ドランシスって先生の」
 誰かの声が聞こえました。目頭が暑くなります。ブランリッシュやセラフィード様の今日の不思議な様子を思い出しました。まさかと思いました。
 入り口がざわりとざわめきました。そちらを振り向きます。ああと声が漏れたのが耳に届いて初めて気付きました。
 大勢の人姿。それでもはっきりと先生の姿が見えました。溢れそうになってしまう涙を堪えるのに先生が私を見ました。ふわりと先生が笑って一筋涙がこぼれてしまう。
 まっすぐに先生が私のもとに来ました。何を言えば良いのか分からないでいる私の前で先生が跪きました。
「トレーフルブラン・アイレッド嬢。貴方のことをずっと前から愛していました。どうか私と結婚していただけないでしょうか」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。 しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。 しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。 夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。 いきなり事件が発生してしまう。 結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。 しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。 (こうなったら、私がなんとかするしかないわ!) 腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。 それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...