紡ぐ箱

Cadenza

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破壊の権化

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エルドレアを離れ波に揺られている。
これから向かう先はあの時吹き飛ばされ瓦礫の山となった場所。
まだ復興すら進んでおらずそこにはただただシェイドシフターが眠り続けていた。
あの時切りつけた際に露出した赤褐色の輝きがきらめく。
動き出すまであと数時間───。

船から降りると、そこにはエルドレアへ向かう前より空薬莢や壊れた何かが散らばっていた。
「相変わらず続けてるんだな」
カイがぼそりとつぶやく。
遠くからもどんどんと何か大きなものを撃ち合う音が聞こえていた。
目的の場所まで送ってくれそうな人を探しているときに、何かが飛んできた。
それはロボットの欠片のようなものでかなり大きなものだった。
「まずい戦火がこっちに来やがる!早く逃げろ!」
一人の行商人がそう叫ぶと全員馬車に乗りどこかへ去ろうとする。
その中で一人だけカイたちに声をかけた。
「お前らもさっさと逃げろ!手段がないなら後ろに乗れ!巻き込まれて死ぬぞ!!!」
強い剣幕でまくしたてられカイたちは言われるがままにその男の馬車に乗った。
確認した後、男は馬を全力で走らせIFPから去っていった。
しばらくした後、戦火が襲い掛かってこないことを確信したのか馬を止めた。
「数少ない生還者だろ、運が悪いな、帰って早々争奪戦に巻き込まれるなんてよ」
男が声をかける。
「まさかあんな近いところでやってるとは思わなかった」
「だろうな。そこの嬢ちゃんも大丈夫だったか?」
「私は大丈夫、でもみんな……」
「あそこにいる行商人はみんな知ってて商売してる。だからあそこで死んでも構わないって思ってるやつらしか来ないんだ。それにあるとすれば帰還者の少ないエルドレアへの直行便だけ。片道切符の中でも色々買わせようとするのさ。俺だってそう」
男はそう語った。
あの争奪戦には関わるな、今はラウスが半壊してるおかげで戦火もマシになってるが復興したら港ごと吹っ飛びかねん。そう付け足して彼は話を締めくくった。
「の割にはずいぶん遠いところで戦ってるよな」
「そりゃぁそうだ。今はラウスの管轄でアトラスが攻め入ってる構図だからな、俺たちは祈ることしかできない」
カイは腕を組み頷いた。
「そういえばお前らどこへ行きたい?馬をある程度休ませたら連れてってやるよ」
タリアがすかさずに答える。
「ヴァリス!あのデカいのがいるところ!」
「おいおい、あのへんは立ち入り禁止になってるんだぜ?その手前までなら送ってやれるが」
男は返答に困った。
現在ヴァリスが眠る周辺は立ち入り禁止区域となっており現在はラウスガードの関係者のみ立ち入りを許されているのが現状だ。
「じゃあ手前で!私たちあれを倒さなきゃいけないから!」
「もともとは俺らの獲物だったしなー」
そうそう!と同意を示すタリア。
「わかったよ。どうせラウスにゃ用事はあるし、連れてってやるよ。その代わり金はとるからな?保険料だ」
「金はないが貴重な魔石なら持ってるぞ。これじゃダメか?」
カイはそういってポケットから小さな石を何個か取り出した。
「おぉ、一部地域でしか生息してないシェイドシフターからしかとれない魔石じゃないか。それで手打ちにしてやるよ。じゃあ行くか」
馬車は再び動き出し、爆心地として今もなお鎮座するヴァリスの元へ向かった。

遠くから戦いの音が聞こえるなか、馬車は遠ざかるようにラウスへと進んでいった。
同時に音も徐々に遠くなっていき、次第には静かになっていった。
それと同時に少しずつ瓦礫も増えていった。
瓦礫が山になってきたころ、馬車は動きを止めた。
「すみません、これ以上先は立ち入り禁止です」
「わかってる。こいつらを連れてきた、どうもあのデカブツに用があるみたいでな」
後ろを指さしながらぶっきらぼうに伝える。
「わかりました。その方だけ下ろしてあなたは避難してください。ここは危険です」
「わかってるよ」
カイとタリアをその場で下ろし男は去っていった。
さて、とカイが拳を打ち鳴らしたあとヴァリスへと向かった。
それについていく形でタリアも向かう。
二度とあの惨劇を起こさぬように。
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