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4.魔女の化粧水
フェアリーテイル
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大公邸の大広間で開かれる夜会にはいつものように貴族たちが思い思いの服を着て参加している。調香師になってもう何年もたっているけれど、今日はいつも以上にそわそわしてしまう。それは伯爵夫人にセットアップをしてもらったからという部分によるものだろうと結論付けていた。
とはいえ、着ているものや髪形が違ったところで、しょせんはただの平民。調香師という立場があるからこの夜会に出席させてもらっているが、貴族というコミュニティーにはなじむことができず、ただ一人、伯爵夫人の後ろについてあいさつをしているだけだ。
何人もの貴族たちとあいさつした後、見覚えのある紳士がドーラたちの目の前にやってきた。
「おや、別嬪さんだと思ったら、ラススヴェーテ嬢。今日のあなたは花の妖精みたいだな」
「ポローシェ侯爵、お戯れを」
「これはこれは、まいりましたな」
冗談のような軽さで笑ったのは『ステルラ』のパトロンでもあり、エルスオング大公国調香院理事、エルスオング大公アンゼリムの番犬とも称されるポローシェ侯爵。
あまり接点がないように見えたアンナとはウン十年前の成人の夜会以来の仲であるのだと前の事件の後に明かしていて、とくに社交界シーズンの間は頻繁に連絡を取り合っているのだとアンナが言っていた。
「お前さんがまさかコレンルファ伯爵夫人に気に入られるとはな」
「全くです。世の中、どうなるものかわかりませんね」
生来、ドーラの運は悪いほうだと自分では思っている。
小さいころに地主の娘というだけで何度、誘拐されそうになったかわからないし、公都に出てきてからも調香技術以外の部分ではからっきしだった。調香技術の師匠である叔母が失踪したのも、おそらくドーラの運の悪さのせい。
それなのにこの一年、半年の間は運がいい。
ひょんなことからアイゼル=ワード大公国の女大公閣下と知り合い、外国の知己を得ることができた。そのおかげで調香師会議という場でやり取りするという度胸もついたのではないかと思える。
「しかし、今日の夜会は匂いがよりきついと思いませんか」
とはいえ、まだ引っ込み試案であることには変わりはない。こんなきらびやかな場にいるのは間違いじゃないのかと思ってしまうくらいには。
でも、“貴族”と“平民”という関係でなければ話は違う。
アンナがちょっとほかの人と話してくるわと言って、ポローシェ侯爵とドーラのそばから離れた後、そっとドーラは侯爵に尋ねてしまった。すると苦笑いして、そうだなと肯定されてしまった。
「やっぱりお前さんもそう感じたか」
「はい。さすがにフランキンセンスやミルラの香りは少しであるからこそいいのであって、こうまで強いとむせ返してしまいそうで」
ドーラが肩をすくめると、侯爵はまったくだとあきれたように頷いて、お前さんも知ってるかもしれんがと前置きしてから昔話をしだした。
「どの国でもそうだが、こういった夜会を催すときには絶対に武器としてフレグランスオイルは使われてきたのだが、今ほどきちんと香りの害というものが認知されていなかった。だから、百年ぐらい前に五大公国全体で夜会における香水やフレグランスオイルの厳禁令が出たことがあるんだが、そのたびに闇取引がひどくなってな」
その話はドーラも調香技術を学んでいるときに聞いたことがあった。
ハーブの利権の問題は調香師試験にはほとんど出ないところだが、こちらは精油の配合割合にも関わってくるところなので、かなり重要な歴史でもある。
「あまりにも匂いがきつすぎて、食事の香りさえ分からなくなる状態だったんでしたっけ?」
「その通りだ。それに訓練で汗をかいた後の香水と混じった匂いはとんでもなかった。だから、調理師と武官は職務中について香水の使用を禁じられたが、それ以外のときやそれ以外の職業の人間はどんなときでも問題ない。今でこそましになったが、十五年ぐらい前なんかは大公邸の廊下は大変な匂いだったぞ」
「……想像したくありませんね」
人々の生活を豊かにする香り。
それを使いすぎることによって、人々を害する香りに変わる。その移り変わりを知っているポローシェ侯爵はうんざりとしながらもきちんと説明してくれる。
「ああ、想像したくないだろうな。あれは悪夢のような場所だったから。だが、今のアンゼリム閣下が大公につかれてからすぐに、公共の場所での香害対策として、香水とフレグランスオイルの製造販売の免許制度ができたのさ」
「あれって、ごく最近だったんですね。叔母さまがとっていたので『ステルラ』ではなにも考えずに香水やフレグランスオイルを置いてましたけれど」
質素倹約を家訓とするエルスオング大公家。
五大公家の中でもっとも家格が劣るといわれるアイゼル=ワード家の前大公よりも一般人に近い感覚を持つ大公は、真っ先に手を付けたのが夜会において服飾以上に経済が回るとされている利権のはく奪。それは貴族だけではなく多くの調香師たちからも反発があっただろうが、断行した功績は大きい。
しかし、それを知らない世代であり、自分の店ではなく成り行きで師匠の店を継いだだけの彼女にとっては、その功績は計り知れない。
「そうだ。とはいえ、また最近では五大公国のどこかから、もしくは帝国から禁薬と呼ばれるものが、闇市場に出回っているらしいから気をつけねばな」
「禁薬ってまさか――――」
「その通り。おそらく《堕ちたアザミ》関連の仕業だろうな」
禁薬。
調香用語の一つで、人々を惑わすための香りを放つものすべてを指す。
それを使うことだけでなく、それを作り出すことは『調香典範』によって禁じられており、作った人間は調香師を示すバッジからとられた《堕ちたアザミ》と呼ばれる。彼らは調香師の世界から追放されるため、この禁薬を作り出す人間はなかなか現れない。
五十年くらい前に帝国南部から五大公国との国境沿いにかけて活動をしていた組織を摘発して以来、禁薬は出回っていないとされていたが、どうやらまた出現してしまったらしい。
禁薬の市場経路からしても、調香師だけの活動ではないことは確実とされていて、そういったものたちを一網打尽にする必要がある。
「ま、今は諜報員たちに探らせている最中だ。また手伝ってもらいたいときは声を掛ける」
ポローシェ侯爵が動くということは、調香院所属の調香師も民間の調香師たちも動く可能性がある。
しかし、まだそのときではないと暗に言われたドーラは、すっと意識を今に戻す。
「今は“華”を楽しんでなさい。せっかく伯爵夫人にドレスを作ってもらったんだから、ポローシェ侯爵という後見とコレンルファ伯爵という銘柄の広告塔としてしゃきっとしていなさい」
今日はいつも以上にスポンサーが多い。
その言葉にドーラはしっかりと頷き、ポローシェ侯爵の後ろについて貴族たちへの挨拶に回った。
とはいえ、着ているものや髪形が違ったところで、しょせんはただの平民。調香師という立場があるからこの夜会に出席させてもらっているが、貴族というコミュニティーにはなじむことができず、ただ一人、伯爵夫人の後ろについてあいさつをしているだけだ。
何人もの貴族たちとあいさつした後、見覚えのある紳士がドーラたちの目の前にやってきた。
「おや、別嬪さんだと思ったら、ラススヴェーテ嬢。今日のあなたは花の妖精みたいだな」
「ポローシェ侯爵、お戯れを」
「これはこれは、まいりましたな」
冗談のような軽さで笑ったのは『ステルラ』のパトロンでもあり、エルスオング大公国調香院理事、エルスオング大公アンゼリムの番犬とも称されるポローシェ侯爵。
あまり接点がないように見えたアンナとはウン十年前の成人の夜会以来の仲であるのだと前の事件の後に明かしていて、とくに社交界シーズンの間は頻繁に連絡を取り合っているのだとアンナが言っていた。
「お前さんがまさかコレンルファ伯爵夫人に気に入られるとはな」
「全くです。世の中、どうなるものかわかりませんね」
生来、ドーラの運は悪いほうだと自分では思っている。
小さいころに地主の娘というだけで何度、誘拐されそうになったかわからないし、公都に出てきてからも調香技術以外の部分ではからっきしだった。調香技術の師匠である叔母が失踪したのも、おそらくドーラの運の悪さのせい。
それなのにこの一年、半年の間は運がいい。
ひょんなことからアイゼル=ワード大公国の女大公閣下と知り合い、外国の知己を得ることができた。そのおかげで調香師会議という場でやり取りするという度胸もついたのではないかと思える。
「しかし、今日の夜会は匂いがよりきついと思いませんか」
とはいえ、まだ引っ込み試案であることには変わりはない。こんなきらびやかな場にいるのは間違いじゃないのかと思ってしまうくらいには。
でも、“貴族”と“平民”という関係でなければ話は違う。
アンナがちょっとほかの人と話してくるわと言って、ポローシェ侯爵とドーラのそばから離れた後、そっとドーラは侯爵に尋ねてしまった。すると苦笑いして、そうだなと肯定されてしまった。
「やっぱりお前さんもそう感じたか」
「はい。さすがにフランキンセンスやミルラの香りは少しであるからこそいいのであって、こうまで強いとむせ返してしまいそうで」
ドーラが肩をすくめると、侯爵はまったくだとあきれたように頷いて、お前さんも知ってるかもしれんがと前置きしてから昔話をしだした。
「どの国でもそうだが、こういった夜会を催すときには絶対に武器としてフレグランスオイルは使われてきたのだが、今ほどきちんと香りの害というものが認知されていなかった。だから、百年ぐらい前に五大公国全体で夜会における香水やフレグランスオイルの厳禁令が出たことがあるんだが、そのたびに闇取引がひどくなってな」
その話はドーラも調香技術を学んでいるときに聞いたことがあった。
ハーブの利権の問題は調香師試験にはほとんど出ないところだが、こちらは精油の配合割合にも関わってくるところなので、かなり重要な歴史でもある。
「あまりにも匂いがきつすぎて、食事の香りさえ分からなくなる状態だったんでしたっけ?」
「その通りだ。それに訓練で汗をかいた後の香水と混じった匂いはとんでもなかった。だから、調理師と武官は職務中について香水の使用を禁じられたが、それ以外のときやそれ以外の職業の人間はどんなときでも問題ない。今でこそましになったが、十五年ぐらい前なんかは大公邸の廊下は大変な匂いだったぞ」
「……想像したくありませんね」
人々の生活を豊かにする香り。
それを使いすぎることによって、人々を害する香りに変わる。その移り変わりを知っているポローシェ侯爵はうんざりとしながらもきちんと説明してくれる。
「ああ、想像したくないだろうな。あれは悪夢のような場所だったから。だが、今のアンゼリム閣下が大公につかれてからすぐに、公共の場所での香害対策として、香水とフレグランスオイルの製造販売の免許制度ができたのさ」
「あれって、ごく最近だったんですね。叔母さまがとっていたので『ステルラ』ではなにも考えずに香水やフレグランスオイルを置いてましたけれど」
質素倹約を家訓とするエルスオング大公家。
五大公家の中でもっとも家格が劣るといわれるアイゼル=ワード家の前大公よりも一般人に近い感覚を持つ大公は、真っ先に手を付けたのが夜会において服飾以上に経済が回るとされている利権のはく奪。それは貴族だけではなく多くの調香師たちからも反発があっただろうが、断行した功績は大きい。
しかし、それを知らない世代であり、自分の店ではなく成り行きで師匠の店を継いだだけの彼女にとっては、その功績は計り知れない。
「そうだ。とはいえ、また最近では五大公国のどこかから、もしくは帝国から禁薬と呼ばれるものが、闇市場に出回っているらしいから気をつけねばな」
「禁薬ってまさか――――」
「その通り。おそらく《堕ちたアザミ》関連の仕業だろうな」
禁薬。
調香用語の一つで、人々を惑わすための香りを放つものすべてを指す。
それを使うことだけでなく、それを作り出すことは『調香典範』によって禁じられており、作った人間は調香師を示すバッジからとられた《堕ちたアザミ》と呼ばれる。彼らは調香師の世界から追放されるため、この禁薬を作り出す人間はなかなか現れない。
五十年くらい前に帝国南部から五大公国との国境沿いにかけて活動をしていた組織を摘発して以来、禁薬は出回っていないとされていたが、どうやらまた出現してしまったらしい。
禁薬の市場経路からしても、調香師だけの活動ではないことは確実とされていて、そういったものたちを一網打尽にする必要がある。
「ま、今は諜報員たちに探らせている最中だ。また手伝ってもらいたいときは声を掛ける」
ポローシェ侯爵が動くということは、調香院所属の調香師も民間の調香師たちも動く可能性がある。
しかし、まだそのときではないと暗に言われたドーラは、すっと意識を今に戻す。
「今は“華”を楽しんでなさい。せっかく伯爵夫人にドレスを作ってもらったんだから、ポローシェ侯爵という後見とコレンルファ伯爵という銘柄の広告塔としてしゃきっとしていなさい」
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