異世界ダイエット

Shiori

文字の大きさ
143 / 200

第百四十二話

しおりを挟む
 共鳴作用というには、きわめて理不尽である。欲求不満なわけではないのに、セヴランは欲情全開の状態になってしまって、仕事中だったのに慌てて隠れて自己処理を余儀なくされたという。しかもそれが何度やっても全然おさまらなくて、セルフ・サービスが止まらない状態になってしまったのだと言う。あの日、セヴランが目の下にクマができていて、やつれたような、疲れた印象だったのは、仕事に根を詰め過ぎたのではなくてそういう事情があったのだそうだ。
 聞かされて呆気にとられた。とてもではないが、イネスにもモニークにも言えない、文字通りの珍事で、だからあれから、奈々実が黒い魔石に全力チャージする場合にはあらかじめ日時を決めて、セヴランは休みをとって、奈々実の知らない場所に閉じこもっているようにしていた。だから、五回しかできなかったのだが、イネスはその事情を知らない。もっと回数をできないかと言われたけれど、規定の休みしかとらなかったセヴランが短期間に何度も休みを取ったことはそれだけで軍の内部で話題になってしまっていて、これ以上休むわけにはいかないし、その事情を奈々実の口からイネスになんて、とても言えない。どう言えばいいのかわからない。
「リュドミラがいる必要は無いし、セヴラン様がやり方を理解して、きちんとナナミの魔力をコントロールして魔石に注入できれば、わたしがいなくてもいいのだけど、でも、セヴラン様とナナミは・・・、その、まだ、・・・よね? ベアトリス嬢との顛末の時みたいに、セヴラン様の生命力が異常に消耗してしまうのかどうかは、やってみないとわからないけど、・・・どうしたの?」
おそらく奈々実はものすごく珍妙な、切羽詰まった顔をしていたらしい。イネスもリュドミラも怪訝そうに奈々実を見ている。
「トイレに行きたいの?」
リュドミラが気を遣ってくれるけれど、別にトイレに行きたいのを我慢しているわけではない。
 美女二人に見つめられて、呼吸が止まりそうである。この美女サマ方にむかって、まさかそんな、セヴランのようなイケメンが困った状態になってしまう説明をするなんて、絶対できない。自分のことならともかく、セヴランのことを言うなんて、できるはずがない。
―――どうしよう・・・、言ったらダメ・・・、だよね? っていうか、なんて言えばいいの?
そもそもがセヴランの品格にかかわる。わたしが全力で魔力を使うと、セヴラン様のアレが勃っちゃって、何回出してもおさまらなくなっちゃうんです、勃起しまくりになっちゃうんです、なんて、セヴランの名誉にかけて、口が裂けても言えない。
「とっ・・・、とりあえず、セヴラン様に言ってみます・・・」
赤くなったり青くなったりしながら、奈々実はかろうじてそれだけ言った。それだけ言うのが精一杯だった。しどろもどろの奈々実にイネスもリュドミラも怪訝そうにしていたけれど、それ以上はなにも言わなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

気がつけば異世界

波間柏
恋愛
 芹沢 ゆら(27)は、いつものように事務仕事を終え帰宅してみれば、母に小さい段ボールの箱を渡される。  それは、つい最近亡くなった骨董屋を営んでいた叔父からの品だった。  その段ボールから最後に取り出した小さなオルゴールの箱の中には指輪が1つ。やっと合う小指にはめてみたら、部屋にいたはずが円柱のてっぺんにいた。 これは現実なのだろうか?  私は、まだ事の重大さに気づいていなかった。

一般人になりたい成り行き聖女と一枚上手な腹黒王弟殿下の攻防につき

tanuTa
恋愛
 よく通っている図書館にいたはずの相楽小春(20)は、気づくと見知らぬ場所に立っていた。  いわゆるよくある『異世界転移もの』とかいうやつだ。聖女やら勇者やらチート的な力を使って世界を救うみたいな。  ただ1つ、よくある召喚ものとは異例な点がそこにはあった。  何故か召喚された聖女は小春を含め3人もいたのだ。  成り行き上取り残された小春は、その場にはいなかった王弟殿下の元へ連れて行かれることになるのだが……。  聖女召喚にはどうも裏があるらしく、小春は巻き込まれる前にさっさと一般人になるべく画策するが、一筋縄では行かなかった。  そして。 「──俺はね、聖女は要らないんだ」  王弟殿下であるリュカは、誰もが魅了されそうな柔和で甘い笑顔を浮かべて、淡々と告げるのだった。        これはめんどくさがりな訳あり聖女(仮)と策士でハイスペック(腹黒気味)な王弟殿下の利害関係から始まる、とある異世界での話。  1章完結。2章不定期更新。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

乙女ゲームの世界に転移したら、推しではない王子に溺愛されています

砂月美乃
恋愛
繭(まゆ)、26歳。気がついたら、乙女ゲームのヒロイン、フェリシア(17歳)になっていた。そして横には、超絶イケメン王子のリュシアンが……。推しでもないリュシアンに、ひょんなことからベタベタにに溺愛されまくることになるお話です。 「ヒミツの恋愛遊戯」シリーズその①、リュシアン編です。 ムーンライトノベルズさんにも投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

処理中です...