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第百四十二話
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共鳴作用というには、きわめて理不尽である。欲求不満なわけではないのに、セヴランは欲情全開の状態になってしまって、仕事中だったのに慌てて隠れて自己処理を余儀なくされたという。しかもそれが何度やっても全然おさまらなくて、セルフ・サービスが止まらない状態になってしまったのだと言う。あの日、セヴランが目の下にクマができていて、やつれたような、疲れた印象だったのは、仕事に根を詰め過ぎたのではなくてそういう事情があったのだそうだ。
聞かされて呆気にとられた。とてもではないが、イネスにもモニークにも言えない、文字通りの珍事で、だからあれから、奈々実が黒い魔石に全力チャージする場合にはあらかじめ日時を決めて、セヴランは休みをとって、奈々実の知らない場所に閉じこもっているようにしていた。だから、五回しかできなかったのだが、イネスはその事情を知らない。もっと回数をできないかと言われたけれど、規定の休みしかとらなかったセヴランが短期間に何度も休みを取ったことはそれだけで軍の内部で話題になってしまっていて、これ以上休むわけにはいかないし、その事情を奈々実の口からイネスになんて、とても言えない。どう言えばいいのかわからない。
「リュドミラがいる必要は無いし、セヴラン様がやり方を理解して、きちんとナナミの魔力をコントロールして魔石に注入できれば、わたしがいなくてもいいのだけど、でも、セヴラン様とナナミは・・・、その、まだ、・・・よね? ベアトリス嬢との顛末の時みたいに、セヴラン様の生命力が異常に消耗してしまうのかどうかは、やってみないとわからないけど、・・・どうしたの?」
おそらく奈々実はものすごく珍妙な、切羽詰まった顔をしていたらしい。イネスもリュドミラも怪訝そうに奈々実を見ている。
「トイレに行きたいの?」
リュドミラが気を遣ってくれるけれど、別にトイレに行きたいのを我慢しているわけではない。
美女二人に見つめられて、呼吸が止まりそうである。この美女サマ方にむかって、まさかそんな、セヴランのようなイケメンが困った状態になってしまう説明をするなんて、絶対できない。自分のことならともかく、セヴランのことを言うなんて、できるはずがない。
―――どうしよう・・・、言ったらダメ・・・、だよね? っていうか、なんて言えばいいの?
そもそもがセヴランの品格にかかわる。わたしが全力で魔力を使うと、セヴラン様のアレが勃っちゃって、何回出してもおさまらなくなっちゃうんです、勃起しまくりになっちゃうんです、なんて、セヴランの名誉にかけて、口が裂けても言えない。
「とっ・・・、とりあえず、セヴラン様に言ってみます・・・」
赤くなったり青くなったりしながら、奈々実はかろうじてそれだけ言った。それだけ言うのが精一杯だった。しどろもどろの奈々実にイネスもリュドミラも怪訝そうにしていたけれど、それ以上はなにも言わなかった。
聞かされて呆気にとられた。とてもではないが、イネスにもモニークにも言えない、文字通りの珍事で、だからあれから、奈々実が黒い魔石に全力チャージする場合にはあらかじめ日時を決めて、セヴランは休みをとって、奈々実の知らない場所に閉じこもっているようにしていた。だから、五回しかできなかったのだが、イネスはその事情を知らない。もっと回数をできないかと言われたけれど、規定の休みしかとらなかったセヴランが短期間に何度も休みを取ったことはそれだけで軍の内部で話題になってしまっていて、これ以上休むわけにはいかないし、その事情を奈々実の口からイネスになんて、とても言えない。どう言えばいいのかわからない。
「リュドミラがいる必要は無いし、セヴラン様がやり方を理解して、きちんとナナミの魔力をコントロールして魔石に注入できれば、わたしがいなくてもいいのだけど、でも、セヴラン様とナナミは・・・、その、まだ、・・・よね? ベアトリス嬢との顛末の時みたいに、セヴラン様の生命力が異常に消耗してしまうのかどうかは、やってみないとわからないけど、・・・どうしたの?」
おそらく奈々実はものすごく珍妙な、切羽詰まった顔をしていたらしい。イネスもリュドミラも怪訝そうに奈々実を見ている。
「トイレに行きたいの?」
リュドミラが気を遣ってくれるけれど、別にトイレに行きたいのを我慢しているわけではない。
美女二人に見つめられて、呼吸が止まりそうである。この美女サマ方にむかって、まさかそんな、セヴランのようなイケメンが困った状態になってしまう説明をするなんて、絶対できない。自分のことならともかく、セヴランのことを言うなんて、できるはずがない。
―――どうしよう・・・、言ったらダメ・・・、だよね? っていうか、なんて言えばいいの?
そもそもがセヴランの品格にかかわる。わたしが全力で魔力を使うと、セヴラン様のアレが勃っちゃって、何回出してもおさまらなくなっちゃうんです、勃起しまくりになっちゃうんです、なんて、セヴランの名誉にかけて、口が裂けても言えない。
「とっ・・・、とりあえず、セヴラン様に言ってみます・・・」
赤くなったり青くなったりしながら、奈々実はかろうじてそれだけ言った。それだけ言うのが精一杯だった。しどろもどろの奈々実にイネスもリュドミラも怪訝そうにしていたけれど、それ以上はなにも言わなかった。
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