5 / 50
PART 1 : ハルの嵐
No.05 ナツと使命
しおりを挟む
「俺の命を守る……?」
心当たりはあの『黒い泥』だが、あれに狙われる理由が思い当たらない。
そもそもあの『黒い泥』は何なのか?
ハルにとってはわからないことだらけだ。
そんなことはナツにとっては承知のことだろう。
「そう。一つずつ説明していくわね。
あなたが狙われている理由は――ちょっと『並行世界』に関わってくることだから一旦後回し」
「えー……?」
そこが一番知りたいところなのだが、と思うものの、物事には順序がある。
黙って話を聞くことにした。
「まずさっきあなたを襲ったヤツ……アレは『デブリ』という、言ってみれば『魔物』みたいなものね」
「デブリ……か」
『黒い泥』=デブリということがわかった。
そして、それがなぜかハルを狙っているということも。
「デブリは並行世界の『狭間』に漂うもの、とだけ覚えておけばいいわ。これも並行世界そのものについて話す時に触れるから。
重要なのは、本来なら世界に干渉することのないはずのデブリが、今この世界に溢れ出してあなたを狙っているということ。
とは言っても、デブリ自体に意思とかそういうものはない……はずなのよね」
「だが、おまえが自分で言ったんだろう? 俺の命を狙ってるって」
「うん。でも、それはデブリが自分の意思で狙っているということとイコールじゃないわよ?」
「む……? いや、確かに……?」
デブリがハルに襲い掛かって来たことから勝手にそう思っていたが、ナツの言が正しければデブリ自体に意思はない。
では偶然デブリが襲ってくるのかと言えば――それも違うだろう。でなければ、ナツがわざわざ『守りに来た』というはずはないのだから。
「デブリをこの世界に誘導してあなたを狙っているヤツがいる、そういうこと」
「犯人がいるってわけか……」
「うん。まだ犯人は掴めていないんだけど、ハルを殺されるわけにはいかないわ。だからこうして守りに来たってわけ」
話の流れでそのままナツの言葉を信じてしまっていることにハルも気付いていたが、今はそのまま会話を進めることにした。
デブリにしろ、デブリを送り込んできている犯人にしろ、ハル自身に狙われる心当たりは全くない。
「よし、俺が狙われているってことは一旦了解した。あのデブリってヤツが危険ってこともわかった。
じゃあ次は、なぜ俺が狙われているのかってことだな」
先ほどは『一旦後回し』とされたことであるが、ここに触れないわけにはいかないだろう。
デブリという不可解な存在について先に疑問を解消し、根本的なことについて話す際の邪魔にならないように、という配慮なのだろうとハルは勝手に思っておくこととする。
ナツも頷き、ハルの疑問に答えようとする。
「ハルが狙われている理由は――結論から言うと、あなたは並行世界における『特異点』なの。あ、まぁ用語としちゃ微妙に間違ってるんだけど……いやまぁ他に言いようがないからいっか」
「『特異点』……? 俺が?」
「そう。数ある並行世界の中、今のところ観測できている唯一の特異点。それがハル、あなたなのよ」
ナツの言葉に引っ掛かるところはあるが、おそらくは後々語られることだろう、とハルは一旦置いておくこととする。
それよりも優先すべき話は、自分の命が狙われる理由――『特異点』であるということだろう。
「私たちが観測できる並行世界は幾つもあるんだけど、その中でも『法則』はあるのね。
で、ハルはその『法則』から逸脱しているってわけ」
「……その『法則』はなんだ?」
一拍置いて、ナツは答える。
「――性別よ」
「?」
「簡単に言うと、複数の並行世界における私たち――私とハル、それに他の私たちの性別なんだけど……ハル、あなた以外は全員『女』なの。
そして、今のところあなた……っていうか、私たち以外に並行世界間で性別が異なる人物っていないのよ」
「いや、待て待て!? 『並行世界』なんだろ? なら、ある人物の性別が違うという世界が合ってもおかしくないんじゃないか?
……おまえの並行世界という世迷言が正しいことを仮定すれば、だが」
結局はそこに行きつくことになる。
「うん、並行世界の証明はもうちょっと待ってもらうことになるけど……そうね、事前に説明はしておいた方がいいよね。
というわけで、後回しにしていた『並行世界そのもの』について説明しましょうか」
心当たりはあの『黒い泥』だが、あれに狙われる理由が思い当たらない。
そもそもあの『黒い泥』は何なのか?
ハルにとってはわからないことだらけだ。
そんなことはナツにとっては承知のことだろう。
「そう。一つずつ説明していくわね。
あなたが狙われている理由は――ちょっと『並行世界』に関わってくることだから一旦後回し」
「えー……?」
そこが一番知りたいところなのだが、と思うものの、物事には順序がある。
黙って話を聞くことにした。
「まずさっきあなたを襲ったヤツ……アレは『デブリ』という、言ってみれば『魔物』みたいなものね」
「デブリ……か」
『黒い泥』=デブリということがわかった。
そして、それがなぜかハルを狙っているということも。
「デブリは並行世界の『狭間』に漂うもの、とだけ覚えておけばいいわ。これも並行世界そのものについて話す時に触れるから。
重要なのは、本来なら世界に干渉することのないはずのデブリが、今この世界に溢れ出してあなたを狙っているということ。
とは言っても、デブリ自体に意思とかそういうものはない……はずなのよね」
「だが、おまえが自分で言ったんだろう? 俺の命を狙ってるって」
「うん。でも、それはデブリが自分の意思で狙っているということとイコールじゃないわよ?」
「む……? いや、確かに……?」
デブリがハルに襲い掛かって来たことから勝手にそう思っていたが、ナツの言が正しければデブリ自体に意思はない。
では偶然デブリが襲ってくるのかと言えば――それも違うだろう。でなければ、ナツがわざわざ『守りに来た』というはずはないのだから。
「デブリをこの世界に誘導してあなたを狙っているヤツがいる、そういうこと」
「犯人がいるってわけか……」
「うん。まだ犯人は掴めていないんだけど、ハルを殺されるわけにはいかないわ。だからこうして守りに来たってわけ」
話の流れでそのままナツの言葉を信じてしまっていることにハルも気付いていたが、今はそのまま会話を進めることにした。
デブリにしろ、デブリを送り込んできている犯人にしろ、ハル自身に狙われる心当たりは全くない。
「よし、俺が狙われているってことは一旦了解した。あのデブリってヤツが危険ってこともわかった。
じゃあ次は、なぜ俺が狙われているのかってことだな」
先ほどは『一旦後回し』とされたことであるが、ここに触れないわけにはいかないだろう。
デブリという不可解な存在について先に疑問を解消し、根本的なことについて話す際の邪魔にならないように、という配慮なのだろうとハルは勝手に思っておくこととする。
ナツも頷き、ハルの疑問に答えようとする。
「ハルが狙われている理由は――結論から言うと、あなたは並行世界における『特異点』なの。あ、まぁ用語としちゃ微妙に間違ってるんだけど……いやまぁ他に言いようがないからいっか」
「『特異点』……? 俺が?」
「そう。数ある並行世界の中、今のところ観測できている唯一の特異点。それがハル、あなたなのよ」
ナツの言葉に引っ掛かるところはあるが、おそらくは後々語られることだろう、とハルは一旦置いておくこととする。
それよりも優先すべき話は、自分の命が狙われる理由――『特異点』であるということだろう。
「私たちが観測できる並行世界は幾つもあるんだけど、その中でも『法則』はあるのね。
で、ハルはその『法則』から逸脱しているってわけ」
「……その『法則』はなんだ?」
一拍置いて、ナツは答える。
「――性別よ」
「?」
「簡単に言うと、複数の並行世界における私たち――私とハル、それに他の私たちの性別なんだけど……ハル、あなた以外は全員『女』なの。
そして、今のところあなた……っていうか、私たち以外に並行世界間で性別が異なる人物っていないのよ」
「いや、待て待て!? 『並行世界』なんだろ? なら、ある人物の性別が違うという世界が合ってもおかしくないんじゃないか?
……おまえの並行世界という世迷言が正しいことを仮定すれば、だが」
結局はそこに行きつくことになる。
「うん、並行世界の証明はもうちょっと待ってもらうことになるけど……そうね、事前に説明はしておいた方がいいよね。
というわけで、後回しにしていた『並行世界そのもの』について説明しましょうか」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
負けヒロインに花束を!
遊馬友仁
キャラ文芸
クラス内で空気的存在を自負する立花宗重(たちばなむねしげ)は、行きつけの喫茶店で、クラス委員の上坂部葉月(かみさかべはづき)が、同じくクラス委員ので彼女の幼なじみでもある久々知大成(くくちたいせい)にフラれている場面を目撃する。
葉月の打ち明け話を聞いた宗重は、後日、彼女と大成、その交際相手である名和立夏(めいわりっか)とのカラオケに参加することになってしまう。
その場で、立夏の思惑を知ってしまった宗重は、葉月に彼女の想いを諦めるな、と助言して、大成との仲を取りもとうと行動しはじめるが・・・。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる