ナナイの青春生存戦略

しぼりたて柑橘類

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14.必要以上のことをしてはならない

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 四限が終わり、昼休みを告げるチャイムが鳴った。生徒はぞろぞろと席を離れ、それぞれに集って昼食を広げ始めた。

 普段ならば俺はコズハに連れ去られて、屋上に向かっているはずであるこの時間帯。しかし拉致の常習犯は、俺に質問攻めしてきた二人組と一緒にいた。
 

 「ねーねーコズハちゃん!ナナイ君ユーちゃんの案内するしさ、ウチらとお昼一緒どう?」

 「俺今日飯持ってきてないからさー、食堂でいい?お弁当あるならそこで食べようぜ」

 「ええ、構いませんよ。むしろお誘いいただきありがとうございます」

 「まってコズハちゃん、バリカタくてウケるんだけど。何時代の人?」

 「同級生に敬語使うってすごいわー。俺先生にもちゃんとそんな使えねえもん」

 「元々誰に対してもこうですから、慣れれば簡単ですよ。ではナナイ君そういうことですので、ここらでアディオスです」
 
 「お、おう。変なことするなよー」


 なぜ急にスペイン語で別れを告げたかはついぞ分からないが、コズハは陽キャ二人組と共に食堂へと向かった。 


 きっとコズハも着いてくると思っていたが、あの二人は気を使ってくれたのだろう。一時的でも離れてくれるのならだいぶ助かる。トラブルが起きる可能性が極端に下がるからだ。
 
 揉め事はできるだけ回避しておきたい。
 
 

 入れ替わりでやってきたユーに、俺は手を掴まれた。   


 「さあさ、ナナイ!ぼくを案内するゆー!」

 「案内って言ってもどこに案内すりゃいいんだよ。全校の施設回って見てみるのか?」

 「いや、だいたい構造は把握したからそれは間に合ってるゆー。ぼくが聞きたいのは」

 “今の時間、人気がないところ”

 「だゆー」

 「……結構便利だな、テレパシーそれ
   
 
 都合の悪いことはテレパシーで伝えることで、伏せられるのか。内緒話に重宝されるだろうが、傍目から見れば俺が一方的に喋っているように見えて不気味だろう。だから人気の無いところに案内して欲しいのか。
 
 だが昼休みにおいて人気のないところなど、校内にあるだろうか。往々にして先客がいるものだ。空き教室、廊下、体育館……なかなかに話をするにはハードルが高い。


 「……」


 まだ俺は高校に入って二週間、人の動向は掴み切れていない。コズハに連れ回された記憶を頼りに思考をめぐらす。

 この時間帯……人がいないか寄り付かないところ。近くに教室がなく、近寄る理由もなく、近寄り難い理由があるところ……。


 「……北階段一階、階段下の物置」


 俺の記憶が正しければ、そこに人はいなかった。近くにあるトイレは故障し、ボイラー室の近くなので常にガソリン臭く、それでいて階段下は薄暗くて埃っぽい。玄関から教室までの直線上にないそこは、人気が無かったはずだ。

 俺が呟いてまもなく、ユーは頷いた。


 「了解だゆー!さあ、そうと決まれば出発だゆー!!」


 そう叫んだかと思えば、ユーは俺をひょいと肩に担ぎ上げた。俺がコズハにやったお米様抱っこである。それを、教室のど真ん中でやりやがった。

 昼時の教室がざわつく。一瞬遅れて、その渦中に居るのが俺とユーだとわかった。
 

 「待て待て待て待て降ろせ降ろせ降ろせ降ろせ!!!」


 必死でもがけど、全然ユーの腕は離れない。どういう力をしてるんだお前は。


 「なんだゆー?不要不急に暴れないで欲しいゆー」

 「なんだじゃねえよ!なんで唐突に俺を担ぎ上げた!?」

 「さっき言われた場所に連れていくためだゆー。ぼくの足ならナナイよりも軽々と向かえるはずだから、担いでいくんだゆー」
 
 「その間俺の尊厳はどうなる!留学初日の転校生に担ぎ上げられる奇人だぞ!」

 「今でも十分幼馴染に振り回されてる変人じゃないかゆー。それじゃ、甘んじて米俵になるんだゆー!」


 ユーは俺の上着をむんずと掴むと、全速力で走り始めた!

 さて、ユーは俺と同じくらいの背丈なので担がれた俺の視点は若干高くなった。腹の辺りが肩に乗っているので、鯖折りの如き不安定な姿勢のまま視点が高くなったのである。さらに全力疾走による速度と縦揺れを感じながら、廊下とという狭所を駆け抜ける。端的に言えばバーなしジェットコースターだ。
 
 一ヶ月ほど前にコズハと山に登って斜面を転がったのだが、同等かそれ以上の恐怖がそこにはあった。


 「ぎゃあああ!!!離せっ!離せえええっ!!……っ!?うあああああっ!!!?」
 

 暴力的な加速度に耐えられず、慣性に為す術なく振り回された。すれ違う人の目を気にしている余裕など一切無く、その運動エネルギーを享受する他なかった。

 それだけでは収まらず、


 「ゆーっ!!実際に歩いてみたら、意外と構造が複雑で楽しいゆー!じっくり見てみても面白いかもしれないゆー!」


 ユーの目は輝いている。まだまだ続ける気のようだ。


 「勘弁してくれええええっ!!!」


 全速力で校舎を引き回される俺の叫びは、ほとんどエイリアンの笑い声にかき消された。
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