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24.落着は夜空に漂い
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「まさか私に悟られていないとでも?」
夜の街の上空で、平泳ぎをしながらコズハはユーに問いかけた。
「だって、普通異星人が居るだなんて常識的には考えないし……話してみた感じ様子がおかしいだけでリアリストって感じだったからそんなことは考えないだろうなと思ったんだゆー」
「なるほど、確かにそれは私の落ち度ですね。
生まれながらのクールビューティが裏目に出てしまうとは、西上コズハ一生の不覚です」
「クールビューティは死んでもネグリジェで平泳ぎしねえよ」
「いますよ、ここに。多様性の時代ですし目の前にいるじゃないですか見えないのですかナナイ君。魅惑の西上コズハですよ」
「やめろ、ここぞとばかりに足を見せつけてくるんじゃねぇ!」
さて、どうして俺らが宙に浮かんでいるかと言うと、話は数分前に遡る。
ユーとコズハが和解してしばらく談笑していた俺ら3人。途中、ユーの口から反重力装置の話がチラリと出ると、コズハはピラニアの如き食い付きを見せたのである。
「体験させてください。この通りです」
「なんですか、お金が必要なんですか。いくらですか払いますよ」
「人体の仕組みとか興味があるならお教えしましょう。なんなら脱ぎましょうか。ちなみにこの服3秒で脱ぐことが可能ですよ。はい、3」
こんな調子のコズハに頼み込まれ、あわや破廉恥の寸前で俺らは重力の外に放り投げられたのである。
俺らの腕を掴んだ一瞬で窓から投げ捨て、反重力装置を作動させたユーの体さばきは、語り継がねばならぬほど誠に鮮やかであった。
かくしてユーの聡明な反応速度によって平和は守られ、俺ら3人は宙を漂っていたのである。
話を現在に戻そう。
平泳ぎのまま、コズハはユーの周りをぐるぐる回った。
「今後のユースティンさんの生活のために怪しかった点をざっと上げますと、勧められたご飯を一口も口に入れないこと、アニメの影響と影響を鑑みても母国語の音韻的にへんちくりんな語尾、色素異常らしいのにも関わらず日差しを気にしない様子etc……」
「そ、そんなにかゆー」
「はい。何より、ナナイ君と一緒にいたことが怪しかったですね。状況証拠的にどう足掻いても異星人だとは思いましたが……あまりにもそれっぽすぎて逆に疑わしくなかったんですよね」
「逆にとはなんだゆー逆にとは」
「雑木林で遭遇した場合、ユースティンさんと茶髪で普通っぽい顔かつ人間らしい言葉遣いの方がいらっしゃれば後者の方が遥かに怪しいですからね。TPOが総崩れあれば逆に怪しくないのですよ」
「一昨日のお前みたいなやつか。すごく分かりやすかったぞ今の例え」
「心底不服ですがそういうことです。しかし、クラスの子達の様子を見るにさほど気にしなくて良いとも同時に思いますがね」
そう言いつつ平泳ぎからクロールに切り替えたコズハは、俺の目の前まで泳いで来たかと思えば静止して漂い始めた。さながら魚のように優雅な姿勢転換。ドーム型の水槽の中で展示される魚を見ている気分だ。なんでこいつはこの短時間で俺よりこの空間に順応しているんだ。
些細な疑問を考える隙など与えないと言わんばかりに、コズハは俺の周りを旋回しつつ話しかけてきた。
「しかし、ナナイ君が私に隠し事なんてらしくない手段を取りましたね。いずれバレるというのに隠す意味なんてありましたか?」
「……悪かったな。だが意味はあっただろ。あのままお前らが再会ところで派手に衝突してただろうからな」
「であれば、ナナイ君は私たちの間を取り持ったと仰りたいのですか?」
「そんな大仰なことはしてねえよ。俺はお前のビンタを受けてユーの話を聞いただけだ。最後和解したのはお前とユーだろ?」
その場でくるくると天地を返しながら、コズハは少しだけ眉に皺を寄せた。一体何が不服だと言うのか。
しばらく見つめあった後、コズハはやれやれとため息をついた。
「それは謙遜ですか?仮にそうでないとするならば、ナナイ君は生粋の人たらしですよ」
「悪かったな、どうやら俺は人たらしらしい」
「開き直らないでください、私の気も知らないで。ユースティンさんが異星人だと気がついた時、私がどんなに心配したことかナナイ君は一度でも想像しましたか?ビンタをした側の人間の手のひらの痛みを考えましたか?いえ、後者に関しては少しくらい考えていそうですね相変わらずの優男なのですから」
「待て、一人で盛り上がってんじゃねえよ。お前は何が言いてぇんだ」
コズハはしばらく硬直したかと思えば、逆さまなまま俺の頬をつまんできた。それも強く、横一文字に。
「引っ張んじゃねぇよ」
「話をきちんと聞いていただくためです。今度こそ、私の思いも知ってもらいたいのです。私の方を見てください」
そうまっすぐに言ってくるのだ。俺はコズハの得も言われぬ迫力に、深く考えず頷いた。
「言質は取りましたよ、じゃあ私からお願いです」
コズハは押し切る際の勢いに反して、優しい口調で俺に語り掛けてきた。
「たまには私に甘えてください。常に気負いすぎで、考えているのは他人のことばかり。みんなに気を使っているのに肝心のナナイ君は人を頼りにしなさすぎです」
「……」
「……私は頼られたいのです。信用に足らない人間なのも、わかっているつもりです。ですから、気が向いたらでいいです。時には頼ってください、ナナイ君」
「……コズハ」
「分かったら返事」
「ひゃい」
「ふふ、よろしい」
満足気に言い残したコズハは、俺の方を背に飛び上がった。黒い星空に浮かび上がり、ネグリジェの裾が夜風に揺れている。
その進行方向には、ユーが佇んでいた。ぼんやりと星を見上げている。
「ユースティンさん……いえ……ユーちゃん。そろそろお開きにしませんか。あとちょっとで、また学校ですよ」
「……!そうだゆー!それじゃあ、2人は早く寝なきゃだゆー!」
ユーは笑顔でコズハの手を取ると、凄まじい勢いで俺の方目掛けて落ちてきた。
「わっ!? やめろ危ないだろ!」
「ちゃんと浮いてるから、山から転がり落ちるよりは安全だゆー!さあさあ四の五の言わずに、学校に行く準備だゆー!」
「確かにそうでしょうね。ユーちゃんがいれば百人力でしょう。……もしや、あんなことも?」
意味深に呟くコズハほど恐ろしいものは無いが、安全性が担保されたのも事実。雑木林に行った時に、新たな友人ができるだなんて想像だにしなかったことだ。
人並みに平和な日常が来るのはまだ遠いだろう。しかし日常が保たれた喜びを、俺はかみ締めた。
夜の街の上空で、平泳ぎをしながらコズハはユーに問いかけた。
「だって、普通異星人が居るだなんて常識的には考えないし……話してみた感じ様子がおかしいだけでリアリストって感じだったからそんなことは考えないだろうなと思ったんだゆー」
「なるほど、確かにそれは私の落ち度ですね。
生まれながらのクールビューティが裏目に出てしまうとは、西上コズハ一生の不覚です」
「クールビューティは死んでもネグリジェで平泳ぎしねえよ」
「いますよ、ここに。多様性の時代ですし目の前にいるじゃないですか見えないのですかナナイ君。魅惑の西上コズハですよ」
「やめろ、ここぞとばかりに足を見せつけてくるんじゃねぇ!」
さて、どうして俺らが宙に浮かんでいるかと言うと、話は数分前に遡る。
ユーとコズハが和解してしばらく談笑していた俺ら3人。途中、ユーの口から反重力装置の話がチラリと出ると、コズハはピラニアの如き食い付きを見せたのである。
「体験させてください。この通りです」
「なんですか、お金が必要なんですか。いくらですか払いますよ」
「人体の仕組みとか興味があるならお教えしましょう。なんなら脱ぎましょうか。ちなみにこの服3秒で脱ぐことが可能ですよ。はい、3」
こんな調子のコズハに頼み込まれ、あわや破廉恥の寸前で俺らは重力の外に放り投げられたのである。
俺らの腕を掴んだ一瞬で窓から投げ捨て、反重力装置を作動させたユーの体さばきは、語り継がねばならぬほど誠に鮮やかであった。
かくしてユーの聡明な反応速度によって平和は守られ、俺ら3人は宙を漂っていたのである。
話を現在に戻そう。
平泳ぎのまま、コズハはユーの周りをぐるぐる回った。
「今後のユースティンさんの生活のために怪しかった点をざっと上げますと、勧められたご飯を一口も口に入れないこと、アニメの影響と影響を鑑みても母国語の音韻的にへんちくりんな語尾、色素異常らしいのにも関わらず日差しを気にしない様子etc……」
「そ、そんなにかゆー」
「はい。何より、ナナイ君と一緒にいたことが怪しかったですね。状況証拠的にどう足掻いても異星人だとは思いましたが……あまりにもそれっぽすぎて逆に疑わしくなかったんですよね」
「逆にとはなんだゆー逆にとは」
「雑木林で遭遇した場合、ユースティンさんと茶髪で普通っぽい顔かつ人間らしい言葉遣いの方がいらっしゃれば後者の方が遥かに怪しいですからね。TPOが総崩れあれば逆に怪しくないのですよ」
「一昨日のお前みたいなやつか。すごく分かりやすかったぞ今の例え」
「心底不服ですがそういうことです。しかし、クラスの子達の様子を見るにさほど気にしなくて良いとも同時に思いますがね」
そう言いつつ平泳ぎからクロールに切り替えたコズハは、俺の目の前まで泳いで来たかと思えば静止して漂い始めた。さながら魚のように優雅な姿勢転換。ドーム型の水槽の中で展示される魚を見ている気分だ。なんでこいつはこの短時間で俺よりこの空間に順応しているんだ。
些細な疑問を考える隙など与えないと言わんばかりに、コズハは俺の周りを旋回しつつ話しかけてきた。
「しかし、ナナイ君が私に隠し事なんてらしくない手段を取りましたね。いずれバレるというのに隠す意味なんてありましたか?」
「……悪かったな。だが意味はあっただろ。あのままお前らが再会ところで派手に衝突してただろうからな」
「であれば、ナナイ君は私たちの間を取り持ったと仰りたいのですか?」
「そんな大仰なことはしてねえよ。俺はお前のビンタを受けてユーの話を聞いただけだ。最後和解したのはお前とユーだろ?」
その場でくるくると天地を返しながら、コズハは少しだけ眉に皺を寄せた。一体何が不服だと言うのか。
しばらく見つめあった後、コズハはやれやれとため息をついた。
「それは謙遜ですか?仮にそうでないとするならば、ナナイ君は生粋の人たらしですよ」
「悪かったな、どうやら俺は人たらしらしい」
「開き直らないでください、私の気も知らないで。ユースティンさんが異星人だと気がついた時、私がどんなに心配したことかナナイ君は一度でも想像しましたか?ビンタをした側の人間の手のひらの痛みを考えましたか?いえ、後者に関しては少しくらい考えていそうですね相変わらずの優男なのですから」
「待て、一人で盛り上がってんじゃねえよ。お前は何が言いてぇんだ」
コズハはしばらく硬直したかと思えば、逆さまなまま俺の頬をつまんできた。それも強く、横一文字に。
「引っ張んじゃねぇよ」
「話をきちんと聞いていただくためです。今度こそ、私の思いも知ってもらいたいのです。私の方を見てください」
そうまっすぐに言ってくるのだ。俺はコズハの得も言われぬ迫力に、深く考えず頷いた。
「言質は取りましたよ、じゃあ私からお願いです」
コズハは押し切る際の勢いに反して、優しい口調で俺に語り掛けてきた。
「たまには私に甘えてください。常に気負いすぎで、考えているのは他人のことばかり。みんなに気を使っているのに肝心のナナイ君は人を頼りにしなさすぎです」
「……」
「……私は頼られたいのです。信用に足らない人間なのも、わかっているつもりです。ですから、気が向いたらでいいです。時には頼ってください、ナナイ君」
「……コズハ」
「分かったら返事」
「ひゃい」
「ふふ、よろしい」
満足気に言い残したコズハは、俺の方を背に飛び上がった。黒い星空に浮かび上がり、ネグリジェの裾が夜風に揺れている。
その進行方向には、ユーが佇んでいた。ぼんやりと星を見上げている。
「ユースティンさん……いえ……ユーちゃん。そろそろお開きにしませんか。あとちょっとで、また学校ですよ」
「……!そうだゆー!それじゃあ、2人は早く寝なきゃだゆー!」
ユーは笑顔でコズハの手を取ると、凄まじい勢いで俺の方目掛けて落ちてきた。
「わっ!? やめろ危ないだろ!」
「ちゃんと浮いてるから、山から転がり落ちるよりは安全だゆー!さあさあ四の五の言わずに、学校に行く準備だゆー!」
「確かにそうでしょうね。ユーちゃんがいれば百人力でしょう。……もしや、あんなことも?」
意味深に呟くコズハほど恐ろしいものは無いが、安全性が担保されたのも事実。雑木林に行った時に、新たな友人ができるだなんて想像だにしなかったことだ。
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