19 / 90
二章L:その道は聖女との取り引き
二話:聖女との取り引き
しおりを挟む
「金が……無い……」
そこらじゅうの財布という財布をひっくり返し、かき集めたのは金貨十枚、銀貨二枚。
ざっくりと計算すると金貨一枚で三食飯が食える。寝泊まりもすると考えると一・五枚。銀貨は金貨の半分ほどの価値しかない。
つまり……生活の質を下げないようにするには、行き帰りも含めて三日以内に捕まえて帰るしかない。
どう足掻いても野宿は確定した。あとこの金でなけなしの保存食を買うしかない。
あと残りの金で馬を用意しなくてはな。
こんな限界な状況で体力の化け物みたいなあいつを捕まえられるだろうか?……無理じゃねえか?
頭をひねり続けていたその時だ。
[コンコン……]
ノックが聞こえる。ここは便所じゃねえぞという声を飲み込んでドアへと向かう。
ドア近くに置かれた鏡で笑顔確認……。少し乱れていた黒の短髪をまとめる。
よし、仕事モード入った色男が参ります。
「はい、どうかされましたか?」
ドアを開けた目の前には、誰も居なかった。こりゃイタズラされたな。忙しい時だと言うのに。少し苛立ちながら戸を閉めようとすると、すごい力で押し返される。
「アタシが見えないっての!? この薄情者~!!!」
「うわっ」
よく見たらゼラがいた。ゼラも多少軽装になっていて、ドアを押しのけて部屋に入ってきた。
「邪魔するわよー!」
入口付近にカバンを置いて、その上に座った。そして開口一番、
「ごめん! 金貸して!!」
両手を合わせてそう言ってきたのだ。
「……はい? どういう風の吹き回しですか!?」
髪を弄り、目を逸らしながらゼラは続ける。
「……冷静に考えればアタシ貯蓄無かったのよね。全部寄付してたのよ」
「あー……そういえばあなたシスターでしたね」
「そういえばって何よ!……まあそんなこと言ってられる状況じゃないわね。あんた騎士らしいし高給取りでしょ? ちょっと工面してくれないかしら?」
「希望を持ってきてくれたところ申し訳ないのですが……私も無いです」
「あんたもう贈賄容疑で引っ囚われればいいのに……っていうか金ないならもう黒じゃないの。今から黙って吐きなさい!!」
ゼラは俺をうつ伏せに押し倒し、足を抱え思いっきりそらし始めた。
「いだだだだだ!!! やめてください!私の関節をキメようと、金は湧いてでませんよ!」
「うっさいわね! アンタなんてリンさんの容疑も全部被って牢屋行けばよかったのよ!!」
「やっぱあなたリンと何か有りますよね!?あだだだだ!!!」
俺がそう言うと拘束の手が緩んだ。
「──なっ! そっ、そんなことないわよ! 知らない!知らないんだから!やましいことも何も無いわ!」
「大ありの反応じゃないです……かっ!」
「ひゃあ!」
俺は飛び起き、浮いたゼラの両脇を手に持って部屋に一個しかない椅子に乗せた。
「すごく……尊厳を踏みにじられたような、屈辱的な扱いを受けた気がするわ」
そんなことを言うゼラに向かって、どこまで聞いてくれるか分からないが話す。
「……いいですか? 多少現地調達にはなりますが、保存食を買えば食い繋げるぐらいの金にはなります。野宿は必至となりそうですが」
「うん」
「そして私はあなたと目的が同じ。 リンを捕らえ、その無実を証明することです」
「それで?」
「我々が争っても仕方ありません。 ここは一時、協力関係を結びましょう」
そう言って手を差し出した。
「……仕方ないわね。 リンさんのためだからね!アンタのことはいずれ訴えてやるから!」
そう言ってゼラは俺の手を握り返した。
「交渉成立ですね。それではまた明日の朝に」
「えぇ。わかってるわよ」
俺はゼラを見送ると、物資の調達をし始めた。
そこらじゅうの財布という財布をひっくり返し、かき集めたのは金貨十枚、銀貨二枚。
ざっくりと計算すると金貨一枚で三食飯が食える。寝泊まりもすると考えると一・五枚。銀貨は金貨の半分ほどの価値しかない。
つまり……生活の質を下げないようにするには、行き帰りも含めて三日以内に捕まえて帰るしかない。
どう足掻いても野宿は確定した。あとこの金でなけなしの保存食を買うしかない。
あと残りの金で馬を用意しなくてはな。
こんな限界な状況で体力の化け物みたいなあいつを捕まえられるだろうか?……無理じゃねえか?
頭をひねり続けていたその時だ。
[コンコン……]
ノックが聞こえる。ここは便所じゃねえぞという声を飲み込んでドアへと向かう。
ドア近くに置かれた鏡で笑顔確認……。少し乱れていた黒の短髪をまとめる。
よし、仕事モード入った色男が参ります。
「はい、どうかされましたか?」
ドアを開けた目の前には、誰も居なかった。こりゃイタズラされたな。忙しい時だと言うのに。少し苛立ちながら戸を閉めようとすると、すごい力で押し返される。
「アタシが見えないっての!? この薄情者~!!!」
「うわっ」
よく見たらゼラがいた。ゼラも多少軽装になっていて、ドアを押しのけて部屋に入ってきた。
「邪魔するわよー!」
入口付近にカバンを置いて、その上に座った。そして開口一番、
「ごめん! 金貸して!!」
両手を合わせてそう言ってきたのだ。
「……はい? どういう風の吹き回しですか!?」
髪を弄り、目を逸らしながらゼラは続ける。
「……冷静に考えればアタシ貯蓄無かったのよね。全部寄付してたのよ」
「あー……そういえばあなたシスターでしたね」
「そういえばって何よ!……まあそんなこと言ってられる状況じゃないわね。あんた騎士らしいし高給取りでしょ? ちょっと工面してくれないかしら?」
「希望を持ってきてくれたところ申し訳ないのですが……私も無いです」
「あんたもう贈賄容疑で引っ囚われればいいのに……っていうか金ないならもう黒じゃないの。今から黙って吐きなさい!!」
ゼラは俺をうつ伏せに押し倒し、足を抱え思いっきりそらし始めた。
「いだだだだだ!!! やめてください!私の関節をキメようと、金は湧いてでませんよ!」
「うっさいわね! アンタなんてリンさんの容疑も全部被って牢屋行けばよかったのよ!!」
「やっぱあなたリンと何か有りますよね!?あだだだだ!!!」
俺がそう言うと拘束の手が緩んだ。
「──なっ! そっ、そんなことないわよ! 知らない!知らないんだから!やましいことも何も無いわ!」
「大ありの反応じゃないです……かっ!」
「ひゃあ!」
俺は飛び起き、浮いたゼラの両脇を手に持って部屋に一個しかない椅子に乗せた。
「すごく……尊厳を踏みにじられたような、屈辱的な扱いを受けた気がするわ」
そんなことを言うゼラに向かって、どこまで聞いてくれるか分からないが話す。
「……いいですか? 多少現地調達にはなりますが、保存食を買えば食い繋げるぐらいの金にはなります。野宿は必至となりそうですが」
「うん」
「そして私はあなたと目的が同じ。 リンを捕らえ、その無実を証明することです」
「それで?」
「我々が争っても仕方ありません。 ここは一時、協力関係を結びましょう」
そう言って手を差し出した。
「……仕方ないわね。 リンさんのためだからね!アンタのことはいずれ訴えてやるから!」
そう言ってゼラは俺の手を握り返した。
「交渉成立ですね。それではまた明日の朝に」
「えぇ。わかってるわよ」
俺はゼラを見送ると、物資の調達をし始めた。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる