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二章R:その道は魔女の導き
七話:旅立ちの前に
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「た、食べた……美味しかったぁ……」
串に刺して焼いていた魚十数匹の大半はステラの胃の中へと消えた。ステラは口の周りをぺろぺろと舐めまわしながら、塩味の余韻を堪能している。あの塩漬けの魚をよっぽど気に入ったらしい。
食べ物が合うかと心配していたが、杞憂に終わってよかった! それどころか私よりよく食べるのだ。他にも色々貰ってきたけど食料足りるかな?
食べる前とは別の心配をしながら後片付けを始める。川の水を手ですくい、焚き火に回しかける。
本当はなにか大きなもので覆って、空気を遮断して消すといいらしい。次の街ではバケツとかが手に入ればいいんだけど……。
そんなことを考えながら続けていると、ステラが私のすぐ側に立っていた。少しギョッとして身を引いた。
「わわっ!?いつからそこに!?」
「ひぇっ!す、すみません!!え、えーと……リンさんが水をすくいに向かっていた辺りから……」
とても静かにそこに立っていたので、全然気が付かなかったようだ。 ステラは私の方をまっすぐ見て、口をまごつかせる。そして、
「お、お手伝いさせてくださいっ!」
力強くそう言った。
「ありがとう。 それじゃあ水を川からすくって来てくれる?」
「わかりましたっ!」
ステラはその大きな手で、水をすくって来た。
「いいね! 今度は丸を描くように、端っこから少しずつ回しかけてみて」
「は、はい!」
ステラは焚き火に水をふりかける。私より1.5倍くらい大きい手は、その分多く水を貯められるようだ。あっと言う間に焚き火は消えた。バケツはやっぱり要らないかもしれない。
「ステラすごい! あっと言う間に消えちゃった!」
「そ、そうですかねぇ……えへへ……」
ステラは照れくさそうに顔を覆った。火も消えたところだし、まだ赤い顔のステラに私は切り出した。
「じゃあステラ。これから出かけるけど、準備とかは大丈夫?」
「えーと……あ! 私まだ荷物をまとめてませんでした! 」
ステラは昨日持ってきた本棚の前であたふたし始めた。本を引っこ抜いては抱え、そこら中に山積させた。
そういえばあの本をどうやって持っていこう?私が持つにしても限界があるしなぁ……。
──そうだ!
「ステラ、ちょっと待っててね!」
「は、はぃぃ……」
私は村の方へと走り出した。
「ふ、ふんぬぅぅぅぅ……!! ぬ、抜けないぃ!」
再び河原に戻ってくると、ステラがすごく力んでいた。横倒しした本棚の二段目辺りから上体と足が生えていた。……どうなってるの?
私の姿を見かけたステラはこちらに向かって手を振った。そして涙ながらに叫ぶ。
「助けてくださぁーい!! 本を取ろうとしたらお尻がハマっちゃいましたぁー!!」
私は持ってきた物を置いて、ステラの元に駆け寄る。
「だ、大丈夫!? 」
「あんまり大丈夫じゃないですぅ……」
「うーん……この本棚って壊して大丈夫?」
「え、いいですけど……私が乗っても大丈夫なくらい頑丈ですし……壊れるでしょうか?」
私は本とステラのおしりがつっかえている段の板を持ち……。
「──ふんっ」
両側に引っ張った。すると本棚の枠は簡単に割れ、ステラは尻もちをついた。
「ぎゃっ! あ、でもこれで動ける! 助かりましたぁ!」
「よかった……簡単に壊れてくれて」
これであれほどまでに取れなかった本が手に入った。本棚の木の枠が、この本に合わせて凹んでいる。かなり頑丈な本らしい。
どれどれタイトルは……。その本はタイトルのあるべきところに、よく分からない図形が描かれているのみ。中身も読んでみたけど分からなかった。
私は本をステラに手渡す。
「はいこれ。……これってなんの本なの?」
「あ、ありがとうございます! これはですね……」
ステラは立ち上がり、答えた。
「私の魔術の本です!」
「ま、魔術!?」
串に刺して焼いていた魚十数匹の大半はステラの胃の中へと消えた。ステラは口の周りをぺろぺろと舐めまわしながら、塩味の余韻を堪能している。あの塩漬けの魚をよっぽど気に入ったらしい。
食べ物が合うかと心配していたが、杞憂に終わってよかった! それどころか私よりよく食べるのだ。他にも色々貰ってきたけど食料足りるかな?
食べる前とは別の心配をしながら後片付けを始める。川の水を手ですくい、焚き火に回しかける。
本当はなにか大きなもので覆って、空気を遮断して消すといいらしい。次の街ではバケツとかが手に入ればいいんだけど……。
そんなことを考えながら続けていると、ステラが私のすぐ側に立っていた。少しギョッとして身を引いた。
「わわっ!?いつからそこに!?」
「ひぇっ!す、すみません!!え、えーと……リンさんが水をすくいに向かっていた辺りから……」
とても静かにそこに立っていたので、全然気が付かなかったようだ。 ステラは私の方をまっすぐ見て、口をまごつかせる。そして、
「お、お手伝いさせてくださいっ!」
力強くそう言った。
「ありがとう。 それじゃあ水を川からすくって来てくれる?」
「わかりましたっ!」
ステラはその大きな手で、水をすくって来た。
「いいね! 今度は丸を描くように、端っこから少しずつ回しかけてみて」
「は、はい!」
ステラは焚き火に水をふりかける。私より1.5倍くらい大きい手は、その分多く水を貯められるようだ。あっと言う間に焚き火は消えた。バケツはやっぱり要らないかもしれない。
「ステラすごい! あっと言う間に消えちゃった!」
「そ、そうですかねぇ……えへへ……」
ステラは照れくさそうに顔を覆った。火も消えたところだし、まだ赤い顔のステラに私は切り出した。
「じゃあステラ。これから出かけるけど、準備とかは大丈夫?」
「えーと……あ! 私まだ荷物をまとめてませんでした! 」
ステラは昨日持ってきた本棚の前であたふたし始めた。本を引っこ抜いては抱え、そこら中に山積させた。
そういえばあの本をどうやって持っていこう?私が持つにしても限界があるしなぁ……。
──そうだ!
「ステラ、ちょっと待っててね!」
「は、はぃぃ……」
私は村の方へと走り出した。
「ふ、ふんぬぅぅぅぅ……!! ぬ、抜けないぃ!」
再び河原に戻ってくると、ステラがすごく力んでいた。横倒しした本棚の二段目辺りから上体と足が生えていた。……どうなってるの?
私の姿を見かけたステラはこちらに向かって手を振った。そして涙ながらに叫ぶ。
「助けてくださぁーい!! 本を取ろうとしたらお尻がハマっちゃいましたぁー!!」
私は持ってきた物を置いて、ステラの元に駆け寄る。
「だ、大丈夫!? 」
「あんまり大丈夫じゃないですぅ……」
「うーん……この本棚って壊して大丈夫?」
「え、いいですけど……私が乗っても大丈夫なくらい頑丈ですし……壊れるでしょうか?」
私は本とステラのおしりがつっかえている段の板を持ち……。
「──ふんっ」
両側に引っ張った。すると本棚の枠は簡単に割れ、ステラは尻もちをついた。
「ぎゃっ! あ、でもこれで動ける! 助かりましたぁ!」
「よかった……簡単に壊れてくれて」
これであれほどまでに取れなかった本が手に入った。本棚の木の枠が、この本に合わせて凹んでいる。かなり頑丈な本らしい。
どれどれタイトルは……。その本はタイトルのあるべきところに、よく分からない図形が描かれているのみ。中身も読んでみたけど分からなかった。
私は本をステラに手渡す。
「はいこれ。……これってなんの本なの?」
「あ、ありがとうございます! これはですね……」
ステラは立ち上がり、答えた。
「私の魔術の本です!」
「ま、魔術!?」
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