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Ⅴ:神々とは如何に - ユキトの考証 -
アリス is 複数形
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目の前にいる〝アリス〟は、果たして、本当に〝アリス〟なのだろうか?
その言葉だけを取れば、異常な問いかけである、言うまでもなくアリスはアリスなのだから。
ただ。
前述通り、アリスは単数ではなく、複数形である。
世界中から集めた情報を、まとめ、点と点を線で繋げる。
結果として見えてくる全体像。
――〝アリスたち〟。
正しく言葉にすれば、アリスとはこの世界に幾人も存在する執行者の一人であり、そのすべてを含めて〝神の遣い〟と形容すべきだろう。
例えば、西方の地で殺して回っている〝西方のアリス〟がいるように、東方の地で殺して回るアリス、言うなれば〝東方のアリス〟が存在する。
事実、東方には東方の伝承があり、ソレを彼らは物の怪と呼んでいるようだ。
古今東西、のみならず、ありとあらゆる地方に、超常的な殺しの伝承や事件が事実として残っている。
その多くが、未解決、未確認であるのだ。
もちろん、すべてがアリスの仕業であるとは思えないが、その内のどれかが確実にアリスの仕業であるとは思える。
『私たちアリスには。元々から。アリス同士が争いを起こさないようにプログラムがされているの』
『まぁ。直感的な理解というモノかしら。アリスはアリス同士で互いの存在を知覚するコトができる。近くにいればすぐに分かる。そういうものなのよね』
先日にも、アリスが言っていたように、他のアリスは確実に存在している。
そして、その事実は、アリス自身も理解をしている。
その上で。
互いが接触しないように、アリス同士が干渉し合わないように、そういう本能がアリスの中には備わっている。
理由までは分からない、が、コレだけはハッキリと断言できる。
ユキトが知る〝アリス〟は、神々の代行者として下ろされた、〝神の遣い〟の中の一人に過ぎない。
そんな事実が判然と存在している。
世界中で。殺戮少女が。人を殺して回っている――。
殺戮少女。
誰が言い出したのかまでは、ユキトにも分からないが、現在、世界中で起こっている大量殺人鬼の犯人とされる、まさに、正体不明の存在である。
罪人ばかりを狙うコトで有名であり。
一説に寄れば、彼の大罪人は、少女の皮を被った魔女のようであるだとか。
そこに、一つ、真実を付け加えるのだとすれば。
少女は、一人に在らず、複数人である。
厳密に言えば、答えは、〝殺戮少女たち〟だ。
考える。
そして。
反吐が出る。
やはり、神々にはいつか、この刃を立ててやるべきだろう。
思考の度にユキトはそう思うのだ。
残酷な宿命をなんとも思わず、そう、平然と押しつけるコトができる存在。
〝傲慢〟であり〝独善的〟な存在。
〝アリス〟とは、生まれながらにして幸福の概念を奪われた、籠の中の鳥なのだ。
神々の人形遊びに翻弄される。
残酷な運命。
そう、ユキトは、救いたいのだ。
ただ、想いはあれど、行動の選択が難しい。
なぜなら、彼女たち自身が、己の宿命に疑問を持っていないから。
初めから、知らなければ、疑問の持ちようもないだろう。
言うまでもない、ソレは、洗脳と同義。
長年、ユキトが向き合い続けてきた、現実である。
洗脳を解く、それは、どうすれば良いのか。
分からない。
未だに、彼は、その答えを知り得てない。
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