ぱすてるランページ

シャオえる

文字の大きさ
32 / 109

32. 力は光に包まれて

しおりを挟む
「うわぁ、めっちゃ集まってる……ミク大丈夫かな……」
 朝ごはんの後、本部のすぐ隣にある魔術練習場に来たリコ達。広い魔術練習場には、たくさんの本部の上層部達が集まっている中、部屋の真ん中で一人立たされているミクを、リコ達と大勢の隊員達が、魔術練習場の隣の部屋で、ガラス越しから様子を見ている
「本当……一体何するのかしら?」
 スピーカーから聞こえる魔術練習場の話し声に、クルミとモモカも不安そうにミクの様子を見ている
「ねぇ、今から何するか知ってる?」
 リコが側にいた隊員に声をかけると、リコ達が知らなかったことに驚いた表情で答えた
「えっ?ええ……ミクさんの……」
「それでは、開始します」
 大意の話を遮るように、スピーカーから開始の合図が聞こえ、リコ達のいる部屋の人たちが、一斉に魔術練習場に目を向けると、レイがミクの方に向かい歩いていた


「機嫌はどう?どこか具合悪いかい?」
「いえ……元気です」
 ミクとレイの会話が、リコたちのいる部屋にもスピーカーから聞こえて、リコたちの表情にも緊張感が現れている
「それはよかった。今からちょっと苦しい思いをするかもしれないけれど、頑張って……」
 優しくミクに声をかけるレイ。すると、リーンと一つ鈴の音が、練習場に響いた。その音色を聞いてレイが目を閉じ一つため息つくと、練習場を埋め尽くすほどの巨大な魔方陣が現れた。足元に浮かぶ見知らぬ文字にうろたえるミク。練習場の隅にいる上層部の老人達も、緊張した面持ちで二人の様子を見ている


「あれ、何の魔方陣?」
「さあ?見たことないね……」
 隣の部屋にいるリコ達も、見慣れぬ魔方陣を見て不思議そうにしていると、スピーカーからミクに話しかけるレイの声が聞こえてきた
「君はうたを知っているよね。今から少し唄ってほしいんだ」
「えっと……うたですか?」
「そう。昔から知っている、ご両親のうただよ」
 と、レイに言われて何のうたの事かと思い出したミク。でも、すぐに困った顔になった
「でも、あのうたは、途中までしか分からなくて……」
「それは、君の魔力が足りないからだ」
「私の……?」
 と、ミクがレイに聞き返すと、魔方陣が光を放つ。その光の眩しさで目を閉じるミク。その間に、レイがミクから少し離れ呟きはじめた。魔方陣の光が強くなるにつれ、ゆっくり倒れていくミク。その光のせいでガラス越しから見ていたリコ達は、少しずつミク達の姿が見えなくなっていた

「えっ……ちょっと……」
 倒れたミクと見てなっていく視界に戸惑うクルミ。レイも練習場にいる隊員達も誰一人助ける気配はなく、二人の様子をただ見ている姿に、リコとモモカも慌てはじめる
「ミク!」
「ねえ、何をすると聞いたの?」
 あっという間にリコ達の部屋からは、魔方陣の影響で真っ白な視界になり、ミクの様子が見えなくなってしまった。バンバンとガラスを叩いて叫ぶリコの隣で、モモカが側にいた隊員に問いかける
「えっ……ミクさんの魔力を無理矢理上げるとしか……」
 隊員達も戸惑っていると、スピーカーからまた声が聞こえてきた。微かに聞こえるほどの小さな声で聞こえてくる唄声に、全員耳を傾ける

「ミクのうた……」
 クルミがミクの唄声の主に気づいて、そう呟くと、リコが急いでミクの所に行こうと、ガチャガチャと大きく音をたて部屋の扉を開けようとする。だが、鍵はかけていないはずの出入り口の扉は開かず、リコが扉を押したり引いたりと開けようとするが、全く開く様子はない

「何で?開かない!」
「レイさんが、リコさん達が魔術の邪魔をしないように、始まる前に術を……」
 と、隊員が話した言葉に呆然とするリコ達。その間にもスピーカーからはミクの唄声が聞こえている
「モモカ!クルミ!手伝って!」
「えっ……何する気?」
 扉に向かって、術を唱えはじめたリコ。怒った形相で唱えるその姿に、隊員達がうろたえ怯えている。リコの魔術の意図に気づいて、クルミとモモカもリコの隣で、魔術を唱えはじめた。三人の魔術が重なり、少しずつ扉にヒビが入ってきた
「レイさんの一人の魔術なんて、三人なら壊せる。早くミクを助けにいかないと!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...