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シャオえる

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33. 本の眠る場所

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「ミクのうたが……」
 クルミやモモカの力だけでなく隊員達の力も合わせ、どうにか扉を壊し、隣の部屋の魔術練習場に向かうリコ達。スピーカーから聞こえていたミクの唄が途切れ、レイの声も聞こえなくなり、魔術練習場の様子が分からなくなってしまった

「うたの続きは思い出せたかい?」
 リコ達が扉を壊している頃、ミクは苦しそうに胸を押さえていた。その姿を向かいで見ているレイは、助けることなくミクに問いかける
「はい、少しずつ……でも……」
「ゆっくりでもいい、唄ってごらん」


「ミク!」
 バンッと勢いよく魔術練習場の扉を開けるリコ。魔方陣から出ていた光は無くなり、部屋の真ん中にミクとレイがいる姿を見つけて、駆け寄ろうとした時、微かにまた唄声が聞こえてきた
「うたが……」
「このうた……ミクちゃんの家で聞いた……」
 少しずつミクの唄声が大きくなって聞こえてくる。唄声が魔術練習場に響き渡る。魔術練習場にいる人達が聞き入っていると、突然、バキッと何かが壊れる音がした

「地面にヒビが……」
「レイさん!中止して!ミクが危ない!」
 ミクの足元に、ヒビが出てきたのに気づいたクルミの呟きにリコが叫び、その声に気づいたレイが一瞬、リコたちの方に目を向ける
「……遅かれ早かれ、こうなる運命だったんだ」
 魔術練習場の天井の欠片が少しずつ落ちてきた。魔術練習場がユラユラと揺れ始め、大きな欠片も落ち始めていた
「天井が崩壊します!みなさん、避難を!」
 魔術練習場にいた隊員が叫び、逃げ惑い、リコ達のいる出入り口に隊員達が集まってきた

「ミク!」
「リコ、危ない!入っちゃダメ!」
 流れに逆らい魔術練習場に入ろうとするリコを、腕をつかんで慌てて止めたクルミ。
「でも、ミクが!」
 と、リコが叫んでいると、魔術練習場の天井が轟音をたて落ちてしまった。出入り口にいたリコ達にも瓦礫や風圧が押し寄せてきた。間一髪、モモカが防御魔術を使いリコやクルミ、後ろにいた隊員達に怪我は無いが、魔術練習場があったはずの場所は一瞬にして瓦礫の山。その姿に呆然とするリコ達。だがすぐに、魔術練習場のある場所の外へと走り出した


「全員無事かね?」
「と、思いますが……」
 瓦礫から現れた上層部の老人達。こちらも間一髪、側にいた隊員達総出の魔術により無傷で瓦礫の山から出てきた。ミクのそばにいたレイも怪我一つなく瓦礫の山から出てきた
「ミク!ミク!」
 リコ達も外に出て、瓦礫の山に向かって叫びだした。埋もれた瓦礫の多さに呆然とする隊員達を横目に、瓦礫を一つ一つ取り除いて、リコ達がミクを助け出そうと探していると、リコが手を止め、辺りを見渡した

「うたがきこえる……」
「本当……どこから?」
 クルミとモモカにも聞こえたうた。キョロキョロと辺りを見渡し、うたのする場所を探していると、隊員が空を向いて指を指した。その指差す先には、瓦礫の山の真上で唄うミクがいた。ミクが忘れてしまったという、うたの所になると、ミクの唄声が止まり、苦しそうに胸を押さえはじめた。慌ててリコ達が駆け寄ろうとした時、ミクの胸を押さえている両手から小さく光が現れ、少しずつ大きくなる光。ミクを照らす光が消えて、両手には、無くなっていたはずの本が現れていた

「あの本……!」
「見つけた!」
「やっぱり、体の中に隠していたか。無理矢理が過ぎる……」
 無くしていたといっていた本を見て、歓喜の沸く老人達の声と、驚く隊員達の声がレイの声を消した

「ミク!大丈夫?」
 リコの声に気づいたミクが、ゆっくりとリコの方に振り向く
「強い力……でも、もう要らない……」
 パラッと本をめくり、唱えはじめたミク。足元には、リコ達が見たことのない魔方陣が浮かんでいる
「これは、少し魔力を上げすぎたな……」
 ミクの様子を見て苦笑いするレイ。ミクは本をパラパラとめくり、足元の瓦礫が吹き飛ばされていく

「これは、少し良くないかな……」
 と、呟いたレイがミクの元に近寄っていく。ミクが両手に持つ本をパタンと閉じると、本が少しずつ消えていく。本が完全に消えると、力が抜けたようにフラッと倒れそうになったミクをつかまえた
「何をしている!本を奪い取れ!」
 消えた本に焦り、地上で叫ぶ老人達。その言葉を無視し、ミクを抱えて、ゆっくり降りてきたレイ。モモカにミクを託して、本部から駆けつけてきた隊員達に瓦礫の撤去の指示をはじめると、瓦礫から少し離れた安全な場所で、文句を言い続ける上層部の老人達の元へ、ため息をつきながら歩き老人達に話をする
「今は良くありません。本の在り処は分かったので、あの子の体力的にも、一旦中止にします」
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