ぱすてるランページ

シャオえる

文字の大きさ
34 / 109

34. 気づけば面倒なことばかり

しおりを挟む
「リコ、レイさんが呼んでるよ」
「……行きたくない」
 瓦礫の片付けは数時間で終わり、終了後すぐ部屋にこもってしまったリコに呼びかけるクルミ。その呼びかけに、不機嫌そうな雰囲気で返事をするリコ。背を向けたまま返事をしたリコをみたクルミとモモカがため息つくと、無理矢理リコの腕を引っ張って、部屋から出そうとする
「一緒に行くから。ほら、頑張って」
 二人に身を任せ引っ張られていくリコ。すれ違う人達の不思議そうな顔も気にせず、三人はレイの部屋へと向かっていく


「どうぞ」
 コンコンと鳴った扉にレイが返事をすると、部屋の扉が開いてすぐ目に入ったのは、レイから目をそらしているリコの姿。クルミとモモカに引っ張られながら、リコも部屋の中へと入っていく
「機嫌の悪そうな顔だな」
 三人の様子を見て、苦笑いで話しかけるレイ。その言葉にリコが更にムッと不機嫌そうに顔を背けた
「それで、本は持ってきたかね?」
 リコを無視してクルミとモモカに話しかけると、クルミが持っていた鞄からミクの絵本を取り出した
「これは、預かっておく」
 と言うと、本を開いてページに触れるレイ。ミクが触れて始まる物語よりも、人物や建物、木々も多く滑らかに人物が動き物語が進んでいく
「あれ?」
 リコがページに現れている少女に目を向けた。女性に抱きついて笑っている少女を指差すと、クルミとモモカもその少女を凝視する
「この子、ミクにそっくり……」
「本当だ……」
 三人が少女を確認しようと見入っていると、レイが本をパタンと閉じた

「この本は、記憶を描いている」
「記憶を?」
「嫌なことも、良いことも書き続けることがこの本の役目だよ」
 と、レイが話すと会話が止まり静かになった部屋。リコが
絵本に目を向けたまま、ポツリと呟き話はじめた
「ミクは、これからどうなるんですか?」
「わからない。それは、あの子次第かな」
 リコの質問に、そっけなく答えるレイ。その返事を聞いたリコが、レイの前にある机をバンッと叩いた
「レイさんが……!」
「不本意だが仕方ないことだ。あの子の運命だよ」
「ミクの運命って……まだ小さいのに……」
 と言いながら段々と小さくなっていく声。そのまま、リコはうつ向いてしまった。モモカがリコの背中をさすり、クルミは頭を撫でリコを慰めている姿を見て、レイが、はぁ。とため息ついた

「もう少し三人とも休め。聞きたいことは、またゆっくり話そう」
 と話したレイを、三人とも不審そうな表情で見ている。レイは苦笑いをした
「そんな顔をしなくても、散歩にいくときは呼ぶよ」
 笑って話すレイに、ちょっと怒ったのかリコが少しムッと怒った表情になった。頭を撫でて落ち着かせようとするモモカ。クルミがそんな二人を見て、リコに話しかける
「行こうリコ。お菓子でも食べて落ち着こう。ねっ」
「でも……」
「あの子が起きたら、さらに忙しくなる。精神的な休息もしておくように」
 レイに言われて、渋々部屋を後にするリコ。三人が部屋を出てパタンと扉が閉まると、一つ深いため息をついたレイ。預かったミクの絵本を机の引き出しにしまうと、キィッと椅子に背もたれながら入り口の扉に背を向けると、レイの右手に本が一冊現れた。ミクの体に隠していたと言っていた本と同じその本を開いて、また一つ深いため息をついた
「面倒なことばかり押しつけて……本のためには仕方ないのか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...