ぱすてるランページ

シャオえる

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42. 月明かりに映る人

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「ミク、やっと寝たね……」
「うん……」
 部屋に戻っても、ずっと絵本を読んでいたミク。読み疲れてやっと眠りについて、リコ達がホッとため息ついた
「私達、ちょっと仕事してくるから出るけど、リコ一人で大丈夫?」
「うん、たぶん……」
「終わり次第、すぐ戻るから」
「うん、分かった……」
 クルミとモモカに生返事で答えるリコ。クルミが頬っぺたを優しく叩いた
「ちょっとリコ、大丈夫?」
「ううん……。ミクが、レイさんにお父さんに似てるって言ったのが気になって……」
「お父さんに会いたいから、そう言ったんじゃない?」
「そうなのかなぁ?」
 と、またミクをボーっと見ているリコに、クルミとモモカが目を合わせ、またため息ついた
「本当、ボーッとして……。ミクと二人で大丈夫?」
「うん、大丈夫だから。早く行って、早く戻ってきて」



 クルミとモモカが部屋を出て数時間後の深夜遅くに、目が覚めたミク。隣で眠るリコを起こさないようにベッドから降りて、部屋の中にあるトイレに向かってく。暗い部屋をそーっと歩き、トイレから戻ってくると、ベッドの隣のテーブルに置いていた絵本を取りソファーに座った
「お父様とお母様は元気でしょうか……」
 と呟き、絵本をめくる。月明かりを便りに、絵本を読んでいると、ミクが隣にいないことに気づいたリコが目を覚ました
「ミク、起きたの?」
 急に聞こえたリコの声に驚くミク。思わずパタンと絵本を閉じた
「ごめんなさい。起こしちゃった……」
「ううん、大丈夫。一緒に読もう」
 パチッと電気をつけて、明るくなった部屋でソファーに座り一緒に絵本を読んでいると、扉がそーっと、音をたてないように開いた
「あれ?二人とも、まだ起きてたの?」
 寝ていると思っていたミクが起きていて驚くクルミ。モモカも部屋に入ると、静かだった部屋が急に賑やかになった
「クルミさん、モモカさん!」
 二人が部屋に来て喜ぶミク。二人のもとに駆け寄ろうとして、ソファーから降りた時、突然辺りをキョロキョロと見渡した

「あれ……?」
 と、ベッドの下やトイレを何かを探しているのか、あっちこっちと部屋中を見て回っていく
「ミク、どうしたの?」
「お母様の唄声が……」
 とリコと話ながら窓を開け外を見渡していると、何かを見つけたのか、外を見て笑顔でピョンピョンと飛び跳ねはじめた
「お母様だ!」
 と、突然叫んだミク。その叫んだ言葉に慌てて窓に駆け寄るリコ達。だが、暗い外には誰も見当たらない
「どこにいるの?」
「あれ!うたを唄ってます!」
 ミクが指差す先に、月明かりに木の上に動く人影。その人影に気づいたリコ達。逆光で見えない人影の顔を確認しようと、三人もその人影を見ていると、リコ達にも女性の唄声が聞こえてきた

「お母様!」
「ミク!危ないよ!」
 窓に乗り上げ、落ちそうになるミクをクルミが辛うじて支える。ジタバタと動くミクに、モモカも一緒に抱えていると、月明かりで一瞬木の上にいた人物の表情が見えた
「あの人、ミクの家にいた……」
 リコが、見えたその人の顔に驚いていると、少しずつ唄声が聞こえなくなっていく
「お母様!待って!」
 ミクの叫び声も空しく、唄声もその人影も消えてしまった
「行っちゃった……」
 リコがポツリと呟いていると、クルミに抱えられたいたリコが、胸を押さえて苦しみだした。慌ててクルミがゆっくりと抱えてベッドに寝かせると、モモカが医師を呼ぶため部屋を飛び出し、医務室へと走っていった

「あの人、ミクの家にいた人だよね……」
「うん、唄声も一緒だったような……」
 と見えた人影を確認しつつ、苦しむミクをただ見守ることしかできない二人。しばらくすると、夜中にも関わらずバタバタと音をたて、医師や看護師、隊員達と、大勢の人達が部屋に入ってきた。部屋の隅に追いやられ、検査の様子を見守っていると、突然、リコがクルミとモモカの腕をつかんだ
「ミクのこと、お願いします」
 と。近くにいた女性隊員に声をかけると、クルミとモモカの腕を無理矢理引っ張り部屋を出た
「ちょっとリコ、どこに行くの?」
 二人の腕を引っ張り続け、早歩きで進んでいくリコ。転びそうになる二人を気にせず、廊下を歩き続けていく
「レイさんに報告しなきゃ……一緒に行こう」
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